廃棄予定の『二宮金次郎の像』55万円超で落札 金次郎の「誠実」の教え「次世代に残したい」と願う 全国の学校の校庭から姿を消す金次郎たち

全国各地の小学校に当たり前のように設置されていた「二宮金次郎の像」。小学校の統廃合や教育方針の変化からその姿は減り続け、存亡の機に瀕している。

■小学校で63年間立っていた「二宮金次郎の像」廃棄免れ55万円超で男性が落札

兵庫県三木市で、閉校した小学校に設置されていた「金次郎の像」も、元々は処分される予定だったのだが、21日、県内の80歳の男性がおよそ55万円で落札した。 金次郎の教えを次の世代に受け継いでいきたいと願う男性に話を聞いた。

6月21日、兵庫県三木市で落札されたのは、高さ1メートル、重さ23キロの「二宮金次郎の像」。 この像は、おととし3月に閉校した旧・東吉川小学校の校庭に63年間、設置されていた。

校舎の解体とともに像も処分される予定だったが、市は様々な備品を有効に活用してもらおうと、今回、一般競争入札で売却することを決めた。 最低売却価格は1万円だったが、落札額は、なんと55万1380円。

■落札したのは会社会長の男性

落札したのは、全国2000以上の学校の同窓会のデータ管理などを行う「株式会社サラト」の会長・福田勊さん(80歳)。 福田さんは、会社のエントランスにも、机上にも、二宮金次郎像を置くほどの大ファンだ。

■『実は青年時代以降がすごい金次郎』12年研究続ける男性

きっかけは12年前、参加した講演で偶然見た金次郎像の見た目に惚れたことだったが、調べていくと金次郎の考え方にも感銘を受け、以来、研究に熱中したという。

株式会社サラト 会長 福田勊さん:金次郎は一般的に、少年が貧しくて薪を背負って勉強しているまじめな子どもだという印象があると思うんですけど、調べていくと、青年時代以降にやったことがすごいと。戦時中、GHQがアメリカのリンカーンに匹敵する民主主義者だと評価したことが記事でも残っています。

■自宅ではなく会社に設置する理由 「信頼を得るためには誠実しかない」という教え

12年間研究を続ける福田さんは今回、大きな金次郎像をなんとしても落札したいと思い、当日まで金額を悩んだ末、55万円超えで入札した。 「思い切った額」を出して手に入れた二宮金次郎像だが、自宅ではなく、会社に置くのだとか。 その理由は『金次郎の教え』にあるという。

株式会社サラト 会長 福田勊さん:金次郎の4つの教えの中に、『誠実』という言葉があって、まず『誠実でありたい』と。うちの仕事はモノを売るのではなく、仕事の中身を契約していくので、営業マンが『この人なら契約してもいい』と、信頼を得るためには誠実しかないと思っています。金次郎の教えに従って、信頼関係でつながっています。

膨大な個人情報を管理する会社の流儀に活かされているのは、二宮金次郎が唱えた「至誠」(真心を持って事に当たる)という教え。 福田さんは、社員にも金次郎像の落札を通して、この考え方を伝えたいという。

■会社の外からも見えやすい『駐車場』に像を設置 通りがかった人にも伝えたい『金次郎の教え』

さらに、通りがかった人にも金次郎の教えに興味を持ってもらうために、福田さんは外からも見やすい会社の駐車場に像を設置する予定だ。 処分される予定だった二宮金次郎の像は、新しい場所に移され、教えが受け継がれていく。

(関西テレビ記者 原田笑加)

【二宮金次郎とは】

二宮金次郎は江戸時代後期に生まれ、農民出身ながら、治水など農村の改革で活躍した。 終戦まで、修身という道徳教育の教科書に掲載され、苦労しながらも勉学に励む「勤勉」の象徴となった。

昭和の前期には、「薪を背負って、本を読む」二宮金次郎の像を有志たちが地元の小学校に「寄贈」するのがブームとなり、二宮金次郎像が全国的に広がった。 しかし、現在は、学校の統廃合や教育方針の変化から、その姿は減り続けている。

(関西テレビ 2024年6月24日)

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