「すごい話だった…みんな読んで…」異色のWebマンガに反響続出。「余命10万年」と宣告された少女を待つ数奇な運命とは?

「検査の結果が出ました」と、医師からの余命宣告を受ける少女。「信じがたいことですが……」と口ごもる医師が告げた余命は「10万年」でした。
常識を越える設定を描いた、こうが( @Kouga_ss )さんの48ページのウェブ漫画『 余命10⁵年 』。
5月下旬にSNSで発表されて以降、「すごい話だった…みんな読んで…」と反響を呼んでいます。

こうがさん(@Kouga_ss)がXに投稿した漫画『余命10⁵年』1P目 より / Via x.com

特異な設定を描いたSFマンガ『余命10⁵年』序盤のあらすじ

主人公はルナという少女。世界に8000人しか患者がいないという珍しい病気「振り子病」にかかってしまいました。
命がつきるまでの余命が分かることが特徴で、平均寿命は58歳のはずが、ルナの場合は何度調べても余命が10万年という計算になってしまうのだそうです。
「気にすることはないわよ!」「生活に支障はないし…」となぐさめる両親。「良いなーお姉ちゃんは長生きできて」と妹のユカはうらやましがりますが、ルナは「限度があるでしょ」と困惑を隠せません。
犬型ロボットのペロと遊びながら「10万年…ペロより長生きしちゃうよ」とつぶやくのでした。

こうがさん(@Kouga_ss)がXに投稿した漫画『余命10⁵年』5P目 より / Via x.com

ある日、福祉施設に入居していた父親が亡くなり、ルナは葬儀に出席します。「…急よね。ついこの間まで…みんなで楽しくご飯食べていたのに」と意気消沈するルナ。
隣りにいた妹のユカに話しかけていたつもりでしたが、彼女はユカではなく、ユカの孫。本物のユカはとっくに老人になっていました。ルナは周囲の時間が、どんどん過ぎていってることに、ここで気がつきました。
「振り子病」の特性である「時間感覚のマヒ」の影響です。「私って今いくつだっけ?」。自分の年齢も分からないことに愕然とするのが序盤の展開です。
成長が止まったルナ。家族がいなくなり、時間感覚が薄れる中、残りの人生である10万年をどう生きるのかというのがテーマになっています。

こうがさん(@Kouga_ss)がXに投稿した漫画『余命10⁵年』9P目 より / Via x.com

「主人公が悠久の時を生きるSFには名作が多い」SNSで続々と反響

この作品が公開されたのは5月27日。X(旧Twitter)のほか、画像SNSのPixivにも投稿 。以下のような反響が寄せられていました。
💬「面白かった。主人公が悠久の時を生きるSFには名作が多い」
💬「すごい話だった…みんな読んで…」
💬「一コマ一コマのスピード感が、あぁ実際こんな体感速度なんだなってしんみりする」
💬「着想といい構成といい恐れ入った」
この『余命10⁵年』は、小学館が運営する漫画投稿サイト「 #マンガイチ 」の2024年5月期の選考で「準入選」に選ばれました。同サイトでも 全ページ読むことが可能です

こうがさん(@Kouga_ss)がXに投稿した漫画『余命10⁵年』のタイトル部分 / Via x.com

発想のきっかけは『ドラゴンボール』と終末時計。作者の「こうが」さんへのインタビュー

非日常的な設定をうまくまとめた今回の作品。どのようなところから着想を得たのでしょうか。BuzzFeed編集部は、作者の「こうが」さんに取材しました。
――余命宣告を受けて「どう行動する?」というパターンの創作作品は珍しくないですが「余命が異常に長い」というパターンはあまり見た記憶がありません。今回のプロットを発案した経緯を教えていただければ。

「きっかけは『 ドラゴンボール 』に出てくる『 精神と時の部屋 』です。外部と365倍の時間差のあるあの部屋に窓があったら…という空想に、余命わずかの主人公を扱う作品群の逆パターンがあったら、登場人物はどんな行動をするのだろうかという妄想が合わさって今回のお話が生まれました」
――関連して「振り子病」という架空の病気は、何がきっかけで思いついたのでしょう?
「物語の都合上、余命が正確に分かる病気?を作る必要がありました、その中でまず思い浮かべたのがアメリカの科学誌が毎年発表している『 終末時計 』でした」
「次に時計つながりなんですが、親戚の家に大きい振り子時計がありましてそれが夜中のある時間に出す鈍い音が凄く怖かったんです。そんな当時の記憶からで終末を告げる病「振り子病」は生まれました」
――主人公とロボットの精神的な絆がストーリーの軸になっていますが、人間とロボットのこうした関係を描こうと思った理由は?
「特に人とロボットを意識してはいませんでした、当初はもっと長寿の動植物にする案もあったので。今回の取材で、言われてみればなぜロボットそれも猫でもなく犬にしたのか考えてみました」
「昔、サポートの終了したペットロボの寿命をテーマにした夕方のニュースを見て、ああロボにも寿命があるんだなぁと驚いた思い出がありました。当時実家では黒い大型犬を飼っていましが、家族で一番先に旅立ってしまいましたので、もしかしたらもっと一緒にいたかったという思いがあったのかもしれません」
――これまでに発表された作品は『 死亡取消調停 』や『 塩気のない終末 』など非日常的な世界を描く物が多いように感じました。漫画を描く際には設定からプロットを考えていくのでしょうか?
「どのお話もきっかけはコメディから始まります。最初にギャグマンガの1シーンのような展開を思いついたときにメモを取り、そこから話を膨らませていきます。なので最終的にはどのお話も思いついた当初とは全くの別物に仕上ります」
――こうがさんの簡単なプロフィールを教えてください

「動植物が好きな漫画家志望です、学生時代は生物系の大学にいました」

話題のウェブ漫画『余命10⁵年』全編がこちら

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