<レスリング>2025.11東京デフリンピック・レスリング競技(府中市開催)へ向けてトライアウトを実施

(文・撮影=保高幸子)

2025年東京デフリンピックに向けたトライアウト(適性を判断するための実技試験)の第1回が6月22日、東京・新宿コズミックセンターで行われ、湯元健一(日体大コーチ)が3人の参加者を審査した。

▲東京デフリンピックへ向けて実施されたトライアウト。湯元健一日体大コーチが参加選手の力量を審査

「デフリンピック」とは、デフアスリート(耳の聞こえないアスリート)を対象とした国際総合スポーツ競技大会。1924年に第1回大会がフランスで行われ、以後4年に一度行われてきた。2025年に初めて日本で開催されることになり、期間は11月15日(土)〜26日(水)。

レスリングは府中市総合体育館で実施される。これまで、日本からデフリンピックのレスリング競技に出場した選手はいない。(関連記事1関連記事2

東京都生活文化スポーツ局スポーツ総合推進部競技担当の大熊課長によると、東京都は東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった2013年からパラスポーツ振興のためのタレント発掘イベントも行っており、そこから東京パラリンピック出場選手も輩出された。

デフリンピックが東京で開催されると発表された2022年9月以降は、デフスポーツの振興にも力が注がれ、今回のトライアウトは東京都が企画。本協会を含めた4つのスポーツの国内統括団体が協力し開催された。

▲湯元コーチの説明を手話通訳が選手へ伝える

国体&社会人王者だった曽我部健(日亜化学工業)が挑戦

パラスポーツのタレント発掘イベントは、これまで都内在住者や在学者などに限定され、アスリートと競技団体をつなげて長期目線での強化を、という趣旨で行っていた。今回は1年半後に迫った大会のため、即戦力となる人材を求めて全国から参加者を募集したという。

今回のトライアウトが実施されたのは、ハンドボール、射撃、テコンドー、レスリングの4競技。大熊課長は「夏季デフリンピックは21競技あり、デフ陸上やデフ柔道など、すでに国内中央団体がある競技もあります。デフレスリングは国内統括団体が存在しないため、このままでは日本で開催される大会に日本から選手が出場しないということにもなりかねなかった」と説明。

「そのため、トライアウトやデフリンピックへ向けた強化について昨年から日本レスリング協会に相談し、前向きにご協力いただくことでトライアウトが実現しました」。

▲技の説明・指導会とも言えたトライアウト。湯元コーチがアンクルホールドを説明

この日は4選手がエントリーし、3選手が実際に参加。昨年の国体で6年ぶりに試合に出場して成年グレコローマン130kg級で3位に入賞した曽我部健(日亜化学工業)の姿もあった。世界ジュニア(現U20)選手権出場のほか、国体や全日本社会人選手権で何度も優勝の経験のある選手。

「こんなチャンスが訪れると思わず、会社にはきっぱり競技をやめると(数年前に)言ってしまいましたが、挑戦したい。去年の国体で本格的に復帰しました。来年までに身体を作っていって、両スタイルに出られるように頑張りたい」と新しい目標に向かっている。

▲国体や全日本社会人選手権での優勝経験がある曽我部健。デフリンピックへの出場へ向けて動き出した

29日にもトライアウトを実施、本番へ向けての強化を開始する

指導にあたった湯元コーチは「この機会をいただいたので、自分なりに調べ、過去のデフリンピックで行われたデフレスリングの試合映像を見ました。かなりレベルが高く、トライアウトをどうやるか悩みましたが、非常に高い技術の内容で行うことにしました。メダルを目指せる選手を選出し、強化につなげたい」と初めての試みに全力で臨んだ。

この日の参加者の曽我部以外の2人は、ともに社会人になってからだが、レスリングを経験していて心得があった。ウォーミングアップの後、両足タックル、片足タックル、俵返しなどの技を次々実践。息を切らし、汗をかいた。

トライアウトは29日にも府中市で行われ、5人がエントリーしている。トライアウトの審査ののち、日本代表になる資質を認められると、日本協会として東京都のサポートのもとデフリンピックに向けての強化をする予定。

▲トライアウトへの参加者。29日は5人がエントリーしている

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