平均月収40万円「エリート官僚」の危機…「もう、無理。」と悲鳴!50人に1人が長期離脱の衝撃事実

(※写真はイメージです/PIXTA)

人事院は国家公務員の最新の動向についてまとめた、令和5年度『公務員白書』を公表しました。そこからは、なんとも悲惨なエリートたちの現状を読み解くことができます。みていきましょう。

民間準拠の国家公務員の給与…基本給月33万円、充実の手当てでトータル40万円超え

人事院が発表した『令和5年度公務員白書』では、「職員一人一人が躍動でき、Well-beingが実現される公務を目指して」として、昨年1年間の動きについて報告しています。

さらに国家公務員の置かれている現況について記されています。いくつかピックアップしてみていきましょう。

そのまえに、国家公務員とはどのような職業か、確認していきましょう。ひとくちに国家公務員といっても様々な職種がありますが、わたしたちが国家公務員と聞いて真っ先にイメージするのは行政事務。中央省庁や出先機関に勤務し、それぞれの行政分野の事業等が円滑に運営されるように事務処理を担当します。

そんな国家公務員になるには採用試験に合格する必要があります。採用試験は総合職、一般職、専門職、経験者採用があり、試験区分によって受験資格や試験内容などが異なります。試験合格後、勤務希望の省庁の選考を受け、その選考を通れば採用が決定します。

そんな採用試験の春の結果が先月発表されました。申込者数h2万4,240人で、前の年度より2,079人、率にして7.9%減。現行の試験制度になった2012年度以降、最少となりました。大学別にみていくと、トップは「東京大学」で189名。「京都大学」120名、「立命館大学」84名、「東北大学」73名、「早稲田大学」72名と続きます。

この結果でいわれているのが「東大合格者の減少」。そもそも志願者が減っているのが合格者減の要因で、東大生の官僚離れが鮮明になっています。一方で女性の採用者は増加傾向にあります。

話は白書に戻り、国家公務員の現状をみていきます。

国家公務員の最新給与事情

まずが給与について。国家公務員の給与は民間準拠が基本で、民間給与との比較は、人事院が実施する「国家公務員給与等実態調査」と「職種別民間給与実態調査」に基づいて行われています。

全職員(平均年齢42.3歳)の平均給与をみていくと、基本給にあたる俸給は平均33万4,218円。地域手当てや扶養手当、住居手当などを含めて平均月41万2,747円。また行政職俸給表(一)適用職員に限ると、平均俸給が32万2,487円。手当てなどを含めて40万4,015円。

これを民間企業と比べると「民間企業(大企業)>国家公務員>民間企業(中小)」。サラリーマンの7割を占めるといわれている中小企業勤務よりも平均給与が上回っていることから、「国家公務員は高給取り」というイメージがついていますが、それはほんのひと握り。大企業を下回る給与が平均です。

「心を壊す国家公務員」じわりじわりと増加も、労働環境改善は難しい現状

国家公務員の生涯設計

平均月収40万円ほどの国家公務員ですが、、現在65歳定年に向けて段階的に引き上げられている段階。そんななか、令和4年度の定年退職者は5,834人。そのうち給与法適用社員は5,610人でした。また勤務延長した職員は1,529人で、そのうち給与法適用社員は1,527人でした。

また定年の段階的な引き上げにより導入された再任用制度は、令和4年度をもって廃止。令和4年度に旧再任用制度で再任用された職員は1万8,487人(給与法適用職員17,805人、行政執行法人職員682人)でした。これまでの給与法適用職員の再任用の実施状況をみていくと、短時間勤務が中心。民間企業の再雇用ではフルタイム勤務者の割合が優勢で、時短勤務が多いのは国家公務員の特徴といえるでしょう。

国家公務員の労働環境

前出のとおり、昨今は官僚離れがいわれていますが、その要因のひとつとされているのが、国家公務員の労働環境。「ブラック職場」と揶揄され、深夜になっても電気が煌々とついている霞が関・官庁街の様子はたびたびニュースでも紹介され、「官僚はエリート職なのに割が合わない」というイメージが定着してしまいました。

白書によると、職員の勤務時間は、原則として1日7時間45分、週38時間45分を原則としながらも、「公務のため臨時又は緊急の必要がある場合には、超過勤務を命ずることができる」としています。

超過勤務の状況につ いて、令和4年の年間総超過勤務時間数は全府省平均で220時間。組織区分別に見ると、本府省では397時間、本府省以外では179時間でした。また、超過勤務時間が年360時間以下の職員の割合をみると80.3%でした。 また、国家公務員の超過勤務については、命ずることがで きる上限を設定してものの、大規模災害への対処等の重要な業務であって特に緊急に処 理することを要する業務に従事する職員に対しては、上限を超えて超過勤務を命ずることができるとしています。このいずれの上限も超えたのは、全体で7.7%。本府省で15.3%でした。

このような労働環境下、肉体的にはもちろんのこと、精神的にも疲労。精神疾患を患い、長期離脱の場合も。令和4年度に限ると、精神および行動の障害による長期病休者数は5,389人。全職員の1.92%。つまり50人に1人は精神・行動障害を抱え、長期入院が必要になっています。

さらに時間軸でみていくと、2018年度1.39%→2019年度1.51%→2020年度1.41%、2021年度1.70%と、じわりじわりと右肩上がりなのが分かります。また精神・行動障害を抱える職員の割合を年齢別にみていくと、19歳以下では2.45%、20代が2.61%、30代が2.01%、40代が1.76%、50代が1.765%、60代が0.74%。特に若年層で割合が多く、また増加率も高くなっています。

精神・行動障害の増加については、民間でもいわれていることではあります。要因は職場だけでなく、ライフスタイルの変化に伴う孤独感の増大や環境ストレスなども挙げられていますが、だからこそ働き方改革を推し進めることが重要といわれています。

しかし官僚の間では働き方改革は遅々として進まないという悲鳴が聞こえてきます。

――国会があると、深夜対応せざるを得ない

――国会が変わらないと、私たちの働き方も変わらない

国会の変革。なんとも大きな難問です。ただここを変えていかなければ、国家公務員50人に1人が精神・行動障害という現状を変えられそうもありません。

[参照]

人事院『2024年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表』

人事院『令和5年度公務員白書』

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