アビガン、ダニ感染症治療薬に世界初承認 富士フイルム富山化学製造

富士フイルム富山化学がSFTS治療薬としての承認を取得したアビガン

 富士フイルム富山化学(東京、佐藤充宏社長)は24日、新型インフルエンザ薬「アビガン」を、マダニが媒介する致死率の高い感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の治療にも使えるようにするための承認を取得したと発表した。SFTS治療薬としての承認は世界初。8月に予定する薬価収載を経て販売する。

 SFTSは感染すると発熱や下痢の症状が出る。致死率は21~25%程度と高く、国立感染症研究所によると、国内で初めて確認された2013年から今年4月までに963人の感染が報告された。有効な薬やワクチンがなく、対症療法しかなかった。

 同社は富山第1工場(富山市下奥井)でアビガンを製造している。臨床試験では投与した患者の致死率が15.8%だった。23年にSFTS治療薬としての製造販売に向けた承認を申請。5月の厚生労働省の専門部会で承認が了承された。

 厳格な流通管理を行うため、専門の卸業者を通じて医療機関に納入する。適正使用のための研修を受け、十分な知識を持つ医師の下で処方する。一定数の症例データが集まるまでは、全症例を対象に使用成績調査を行い、安全性や有効性を検証する。

 アビガンは新型インフルエンザの流行に備えて国が備蓄しており、これまでは値段が付いていなかった。動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠している可能性がある人には使えない。

© 株式会社北日本新聞社