無失点記録のオリックス古田島成龍はなぜ点を取られないのか?データから解明

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NPBタイ記録の初登板から22試合連続無失点

オリックスのドラフト6位ルーキー・古田島成龍投手(24)が23日の西武戦(京セラドーム大阪)で3番手として登板し、打者1人を打ち取った。これで初登板から22試合連続無失点。広島・栗林良吏(2021年)、楽天・宮森智志(2022年)の持つNPB記録に並んだ。

古田島は茨城県出身で取手松陽高から進学した中央学院大で明治神宮大会優勝。日本通運では日本選手権や都市対抗で活躍した、6月29日で25歳になる右のオーバースローだ。6月24日現在で1勝9ホールドをマークしている。

単なる連続試合無失点記録なら39試合の平良海馬(西武=2021年)、38試合の藤川球児(阪神=2006年)らまだまだ上がいるが、「初登板から」に限定すれば堂々の日本タイ記録。ここまで来れば新記録が期待される。

走者がいると打たれない

大卒社会人出身の即戦力とはいえ、ドラフト6位の古田島がなぜここまで抑えられるのだろうか。主なデータを見る限り、20.1イニングで15奪三振、11四球と特筆するほどの数字は見当たらない。

パ・リーグで20イニング以上を投げている投手62人中、奪三振率6.64は35位、与四球率4.87は下から3番目の60位だ。中継ぎとしてピンチで登板することも多く、仕方なく歩かせる場面もあるとはいえ、コントロールが良いとは言えないだろう。

三振を奪う能力が高いわけでもなく、コントロールが良いとも言えない古田島が抑える理由は「ピンチに強い」点にありそうだ。下の表を見てほしい。

今季20イニング以上投げているオリックスの投手で、得点圏に走者がいる場面で最も被打率が低いのが古田島なのだ。2位の宮城大弥(.143)や3位の山田修義(.150)を大きく上回る被打率.105をマークしている。

「得点圏」のくくりを外して「走者あり」の場面に広げても、古田島は被打率.114でトップ。2位・齋藤響介(.148)、3位・山田修義(.179)も優秀だが、古田島のピンチでの強さは相当だ。

ストレートで詰まらせてフライアウト量産

古田島はシンカーやカットボールなども投げるが、半分以上の58.7%はストレート。かと言って、ストレートは平均147.0キロ、最速152キロとプロが打てないほど速いわけではなく、実際にストレートの空振率は10.1%でシンカー(10.8%)やカットボール(13.2%)より低い。

実は古田島が最も多くアウトを取っているのはフライ(47.4%)なのだ。三振(26.3%)、ゴロ(15.8%)と比べても格段に多い。そこで三振を除き、バットに当てられた打球性質のフライ割合を集計したのが下の表だ。

20イニング以上の投手で1位はやはり古田島。56.9%だから半分以上はフライを打たせている。

3塁に走者がいる場面で外野フライを打たれると失点するリスクもあるが、内野フライの割合も1位の9.8%と高い。重い球質のストレートで詰まらせていることが推定できる。

実際、6月15日のヤクルト戦では6回に登板して無死一、二塁のピンチを招いたが、山田哲人を詰まり気味の右飛、松本直樹を中飛で走者を釘付けにし、2死満塁となった後も西川遥輝を右飛と、3アウトを全てフライで取ってピンチを脱出した。

ピンチに強いのは豊富な経験に裏打ちされるメンタルももちろんだが、オーバースローから投げ込む重いストレートにあるのではないか。打者からすれば捉えたつもりの打球がポップフライになったり、失速したり、差し込まれているのかもしれない。

ただ、古田島は得点圏に走者がいる場面の被打率.105に対し、いない場面では.191と数字が悪化する。さらにイニング先頭打者には被打率.357と打たれている。

この数字だと長いイニングを投げる先発では厳しいが、逆に中継ぎ、リリーフでこそ持ち味が活きる。連続無失点記録はどこまで続くか。ピンチに強い生粋のリリーバー・古田島の投球に注目だ。



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