親の健康保険証、介護保険証、診察券のコピーを手元に置いておく【親を要介護にさせたくない】

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【親を要介護にさせたくない】#5

病気やケガで高齢の親に介護問題が浮上すると子供は病院や役所関連のさまざまな手続きに奔走することになる。それは遠く離れて暮らしているほど大変なのだが、事前に基本的情報を把握しておけば事を進めやすい。

まず推奨したいのは、親の健康保険証と介護保険証、通院している病院の診察券のコピーを手元に置いておくこと。これらを把握していれば、病院や役所などに電話やメールで問い合わせをする際、話がスムーズにいく。

特に役所に問い合わせをする時は、親の生年月日や住所、連絡先、保険証番号などの情報を確認され、答えられないと「当市では高齢者向けに健康教室を開いています」とか「包括支援センターの連絡先をお教えしましょうか」などの一般論的な回答しか得られない。逆に、それらのデータを答えることで家族からの相談と認識され、役所で持っているデータベースをもとにした個人的なアドバイスも受けやすい。

たとえば、筆者が電話相談した時は「お母さまなら1人暮らしの高齢者として、3カ月前に見守り訪問していますね。歩行がちょっと怪しいようですが、現在はどのような状況ですか」と、余計な説明をしなくても、速やかに本題へ入ることができた。

転倒による圧迫骨折で電話相談した時は「それでしたら要介護認定を申請した方がいいでしょう。必要なら自宅近くのショートステイの空きを調べますよ」と、すぐに対応。おかげで翌日にはショートステイに入り、ケアマネジャーの候補者もピックアップしてもらうことができた。

なお、すでに要介護認定されている親なら先に挙げた証書類のほか、介護保険負担割合証というものがあるはず。介護保険サービスを利用する際の負担額(1割.2割.3割)が記されたものなので、コピーしておくことを忘れずに。

もうひとつ、介護保険負担限度額認定証というものもあり、これがあれば介護保険施設を利用した時の住居費・食費の負担が減額される。持っていれば介護にかかる費用がかなり助かるのだが対象の世帯全員及び配偶者が住民税非課税、預貯金を証明する書類を添付したうえでの申請が必要など、ハードルは高い。

ちなみに介護保険負担限度額認定証について役所に問い合わせをすると、申請対象かどうか判断するため「親御さんは生活保護を受けていますか」から始まり、預貯金の額も確認されるはず。知っていないと前に進まないうえ、世帯年収が一般的なサラリーマン家庭の資産なら対象にならないことがほとんどだ。この件についての詳細はまた別の機会に紹介しよう。

(西内義雄/医療・保健ジャーナリスト)

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