東京ディズニー「シンデレラ城」モデルとなった“ドイツの城”をつくった、ルードヴィヒ2世「最悪の王」「狂王」悪名高くも功績がすごかった

(※写真はイメージです/PIXTA)

文化と投資。一見関連性が薄いように思いますが、日本初の独立系投資信託会社「さわかみ投信」を設立した澤上篤人氏は、「文化は最大の長期投資」と語ります。文化に投資することで長期的にどのようなリターンが得られるのでしょうか。澤上篤人氏と複眼経済塾の代表を務める渡部清二氏の著書『本物の長期投資でいこう! 40年に一度の大チャンスがやってくる』(かや書房)から、対話形式で解説します。

「文化は最大の長期投資」その心は…

渡部 「さわかみ投信」では、現在、平城京跡や姫路城、清水寺、二条城でのオペラ公演など、新しい文化イベントをつくられています。それはどうしてですか?

澤上 だって、文化というのは最大の長期投資なのよ。これは本当にそうなの。

たとえばオリエンタルランドにディズニーのお城があるじゃない。きれいな夢みたいなお城。あのお城のモデルになったのが、ドイツ・バイエルンにあるノイシュヴァンシュタイン城なの。

これをつくったのはルードヴィヒ2世。「狂王」と言われていた。国民にとって最悪の王様だった。結局、彼は2メートル近い大男だったのに、1メートル20センチの湖で溺死したわけよ。あり得ない。理由はわからないんだけど、40歳で死んじゃったわけ。

だけど、彼はノイシュヴァンシュタイン城をつくり、有名な音楽家ワーグナーを育てたわけ。ドイツでは、ノイシュヴァンシュタイン城やロマンティック街道、ミュンヘンは、毎年兆単位の観光収入を稼ぐわけ。

渡部 結果、大きな功績を残したわけですね。

澤上 多い年は5兆円。百何十年経っても、毎年よ。

これはもう、すごい長期投資だよね。もっとすごいのはフィレンツェ。フィレンツェではよく知られているように、メディチ家。コジモ・デ・メディチ。彼がすごいのは、メディチ家は当時世界最大の商人で、たっぷりと金を稼いで、それでもって、ミケランジェロラファエロ、ボッティチェッリ、ダ・ヴィンチ、みんな育てたわけね。

彼が金をうんとつかってフィレンツェは栄えたんだけれども、そのために画材商などの商工業者もお陰様で儲かった。だから、彼らは「俺たちも何かしないといけない」とみんなでお金を出し合って、つくったのがドゥオーモ。みんなでつくり、それを皮切りに、フィレンツェのあちこちで立派な建造物を次々と建てていった。

それでもって、華の都、フィレンツェが生まれたわけ。そして600年以上経った今でも、ものすごい観光客を呼んでいるわけ。600年続く長期投資なんよ。すごいよね。

渡部 本物の長期投資には夢とロマンがあるということですね。

澤上 文化はすごい産業、長期投資。

徳島における長期投資による地域活性化の事例

渡部 徳島の企業の社長から、澤上さんが徳島に来られる話をよく聞きます。

澤上 徳島も最初は地域活性化で、いろいろ手伝っていた。一番本気で情熱の固まりが、先ほども紹介した地元の証券会社の社長。

「地元を元気にさせるには、地元の人々に儲けてもらう証券会社にならないといけんね」と言って、それまでの商売を180度転換させてしまった。

つまり、手数料稼ぎの商品取り扱いは全面ストップさせ、長期の株式投資オンリーの証券会社に一変させた。結果、6年間ずっと赤字だが、意気軒高で頑張っている。

たった1回のオペラ公演で、徳島県民の意識が飛躍的に向上

(※写真はイメージです/PIXTA)

澤上 ある時、彼が「澤上さんのところ、オペラをやっていますね。徳島でもできますか?」と言ってきた。「できるよ。やるんか?」と訊いたら、「やってみたいで」と。それで2017年の12月に結婚式場を借りて、210人に来てもらってやった。「みんな、ビシッとで来いよ。せっかくだから」と。みんな会費を払って来るんだけど、どうせなら目一杯お金をつかえと。そしたらみんなね、タキシードとか着物とかで来た。俺だけ背広でちょっとカッコ悪かった。

渡部 あはは。

澤上 みんな、レベルの高い方向でお金をつかう面白みを知ってね、それで「また来年もやりましょう」「やるやる」となった。それで2年もやったら、オペラコンサートを観客席で楽しんでいた人たちが、「私たちも、合唱とかで舞台に上がりたくなりました」と言う。

「おお、いいじゃないか。やれよ」と答えた。けれども、俺のところは音楽レベルは絶対に妥協しない。したがって、舞台に上がるのは大歓迎だけれども、一年間、特訓するぞと。

特訓して舞台に上がれと。「年の前半は月に1回、後半は月に2回、うちから専門家を送り込むから、彼について特訓だ!」と。彼ら彼女らは「やります!」と答え、本気でやり始めた。それまで素人だったのに、一年間の特訓で、レベルがすごく上がったのよ。「お! 私たちできちゃった!」と言って、充実感が湧いていく。達成感があり、またやりたくなる。

渡部 すごいですね。

澤上 3年目、4年目もますます盛り上がって特訓に励んだ。それもあって、レベルはどんどん上がっていった。合唱団に参加する人たちはどんどん増え、100人近くになってきた。

そしたら、「バレエもやりたい」と言うから、「やれ! やれ!」だ。そして特訓。こんな盛り上がりで、みんな毎月なんだかんだと、お金をつかうからね。一つのイベントのために、一年間、つくり込みをしていくわけよ。こんなふうに、みんながお金をつかうことにより、地域は活性化して元気になっていくわけよ。

長期投資の醍醐味とは

そういう流れが、徳島では「もう止まらない」といった勢いとなってきているわけ。昨年の12月の本舞台でも、100人ちょっとが、プロのオペラ歌手に混じって素晴らしい舞台をつくってくれた。これが、主催している自分が驚くぐらい、立派にできているわけ。びっくりするぐらいうまくできていた。

渡部 これも長期投資なんですね。

澤上 やっている人たちも楽しくなってくるし、見る人たちも楽しくなる。知り合いがいっぱい出ているからね。みんなが楽しみながら、お金をつかう。遊びじゃなく、本気でやる。そうすると、地域が活性化する。これが文化であり、長期投資の醍醐味なんよ。

澤上 篤人

公益財団法人 お金をまわそう基金

代表理事

渡部 清二

複眼経済塾

代表取締役塾長

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