受託臨床検査市場に関する調査を実施(2024年)~2023年度の国内受託臨床検査市場は前年度比10.6%減の6,230億円、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、PCR検査需要が剥落~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2023年度の国内受託臨床検査市場を調査し、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

主要臨床検査センター各社の決算状況や中小センターの経営状況などから、2023年度の国内受託臨床検査市場規模(受託事業者売上高ベース)を前年度比10.6%減の6,230億円と推計した。

新型コロナウイルス感染症が流行し、2020年度から同ウイルスPCR(核酸検出)検査を受託する臨床検査市場が急速に拡大することとなった。しかし、2022年度にはPCR検査の保険点数引き下げに伴い受託単価が大幅に下落した。2023年度は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことを背景に同受託検査数が減少しており、受託臨床検査の市場規模全体を押し下げる形となっている。
※市場規模は、基本的には新型コロナウイルスのPCR自費検査(自由診療)分は含まない。

2.注目トピック~事業環境的には収益悪化の方向にあり、業務効率化などを模索

2024年現在、新型コロナウイルスの検査法としては迅速抗原検出検査(定性)が主流になっており、同ウイルスのPCR法による受託臨床検査の需要はほぼ収束したと見られる。
また、ここ数年間で検査における各種資材費や人件費などが上がっており、受託臨床検査の事業環境としては収益悪化の方向に向かっている。すでに業務効率化を意識した同業者間でのアライアンス事例などが散見される状況にあり、今後、さらなる業界再編などが進展する可能性なども考えられる。

3.将来展望

新型コロナウイルス関連の受託臨床検査市場はすでに剥がれ落ちており、今後の受託臨床検査市場は2019年度以前のような従来型臨床検査項目を主体とした微増推移トレンドに戻ってくるものと予測する。
受託臨床検査市場は基本的には診療報酬点数の下落の影響を直接受けるため、全体市場が大きく伸びる要素は少ない。がん分野の遺伝子検査など一部の高付加価値型臨床検査市場の上乗せにより、若干押しあげられるような市場環境であると考えられる。

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