頭痛、肩こり、倦怠感…つらい「気象病」6割超が経験者 なぜ発症? 改善するには? 上手な付き合い方を専門家がアドバイス #こちら373

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 梅雨本番を迎えた。低気圧の接近時や寒暖差が激しい季節の変わり目に、頭痛やめまいなどさまざまな不調を感じる人は少なくない。「気象病」とも呼ばれ、関心が高まっている。南日本新聞「こちら373」では「気象病」に関するアンケートを実施、6割以上が経験があると答えた。

 経験の有無と症状の種類、対処法を聞いた。5月31日~6月2日に「こちミナ」登録者を対象に行い、鹿児島県内を中心に333件の回答があった。無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。

 気象病になったことがあるのは、220人で66.1%を占めた。複数回答で聞いた症状では、「頭痛」が181人で最も多く、82.3%に上った。「倦怠感(けんたい)」が45.5%、「肩・首こり」が43.2%、「めまい」23.6%と続いた。「耳鳴り」「ぜんそくの悪化」もあった。

 症状が出るタイミングは「雨が降る前日」「台風前」が目立った。「気圧の変化が大きい時」「湿度が高くなる時」との声も寄せられた。

 対処法(複数回答)は、「鎮痛剤を飲む」が60.9%と最多。次いで多かったのが「寝る」で37.3%。「何もせず我慢する」も26.4%いた。

 「ストレッチやマッサージをする」は35.5%。姶良市の40代男性は「耳を温めてマッサージする」という。「病院を受診する」は5.9%だった。

 天気や気圧から不調発症リスクを予測するアプリを活用している人も。霧島市の40代女性は「気圧アプリを見て、あらかじめ漢方薬を飲む」と答えた。

 薩摩川内市の20代女性は「頭痛は目に見えないため、体調が悪くても職場で言いづらい」と訴える。耳鼻科勤務の40代女性は「季節の変わり目や台風前はめまい感を訴える人が多い。他人には見えない症状でつらい思いをしているのでは。多くの人に知ってもらいたい」とした。

◇鎮痛剤の飲み過ぎ注意

 南日本新聞社が実施した「気象病」に関するアンケートでは、経験がある人の8割が頭痛の症状を訴えた。日本頭痛学会認定専門医・指導医で、鹿児島大学病院脳神経外科の花田朋子医師(44)に、頭痛との付き合い方を聞いた。

 天気と頭痛には関係があるのだろうか。花田医師は「気象病という医学用語はないが、国内外の研究によると、気圧の低下や変化、湿度の上昇、降雨量などで頭痛が引き起こされる報告は多い。ただ、具体的なメカニズムはまだ解明されていない」と話す。

 天気の変化と片頭痛の関係を調べた研究も少なくない。脈打つようにズキズキと痛む片頭痛は、天気以外でもストレスや睡眠不足、空腹、においなどさまざまな要因で発症する。花田医師は「頭痛の種類に関わらず、症状の記録をつけることが対処のスタートになる。どんな時にどんな痛みが起きるか、把握しておくことが大切」とアドバイスする。記録しておけば、診察の際にも医師に情報を伝えやすい。日本頭痛学会では、症状の出た日時や内容などを書き込む「頭痛ダイアリー」をホームページで配布している。

 アンケートでは、気圧の変化で頭痛の発生を予測するアプリなどを使う人もいた。花田医師によると、主体的に頭痛を管理しようという行動は「天気はコントロールできない」という無力感をなくし、「生活管理や薬の準備など、前向きな治療行動や頭痛の改善につながるといった報告がある」と語る。

 回答者からは、鎮痛剤の適切な飲み方を知りたいとの声が多く寄せられた。「市販薬は痛みが出始めてから、我慢できなくなる前に飲んで」と花田医師。通常の鎮痛薬は効果が出る時間が短く、痛くなる前に飲んでもほとんど予防効果は期待できないという。

 注意したいのが、飲む頻度だ。月10日以上の服薬や1日に複数回飲む状況であれば、薬物の使用過多による頭痛を併発している可能性がある。「薬の量を自力で調整するのは難しい。迷ったら病院を受診して。片頭痛は予防薬も大きく進歩している」と話す。

 花田医師は「頭痛を当たり前と思ったり、病院を受診しても『心配のない頭痛』と言われたりして、自己流の対応になっていることも多い」と指摘。「鹿大病院をはじめ、県内には頭痛診療を行っている病院がある。緊急性の高い痛みでの受診はもちろん重要だが、慢性的な症状も治療によってうまく付き合っていける可能性がある」と助言する。

気象病に対する回答をグラフで見る
頭痛記録のつけ方を説明する花田朋子医師=鹿児島市の鹿児島大学病院

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