この春「高3・高1・中1」になった子どもがいます。来年度からは子どもが3人だと「大学の学費が免除される」と聞いたのですが、わが家は学費の心配は不要でしょうか?「所得制限」も撤廃されるんですよね?

2025年度から始まる大学無償化制度とは?

2020年4月から「高等教育の修学支援新制度」として、給付奨学金・授業料等減免制度がスタートしています。2025年から始まる「大学無償化制度」とは、現行の制度から所得制限をなくして、さらに多子世帯を支援するものです。2025年度から始まる大学無償化制度の特徴は次の4つです。

__・所得制限なし

・3人以上の子どもを扶養している世帯

・入学金・授業料を無償化(上限:国公立大学54万円、私立大学70万円)

・支援は対象の学校に限る__

所得制限を撤廃したことで、大学無償化制度の対象になる世帯が増え期待が高まっています。また、文部科学省の発表では、2023年10月時点で制度の対象となる機関は3155校です。一方、同じく2023年度の文部科学省の調査では、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校を合わせた学校数は3864校のため、子どもが進学を希望するほとんどの機関が対象である可能性が高いでしょう。

なお、2023年時点での大学無償化の対象である3155校の内訳は、次のようになっています。

__・大学・短期大学…1062校

・高等専門学校…57校

・専門学校…2036校__

3人子どもがいれば全員が無料で進学できるわけではない

所得制限が撤廃され、ほとんどの学校で対象となる大学無償化ですが、「3人以上の子どもを扶養している世帯」という点について注意が必要です。中には子どもが3人以上いれば、全員が大学に無償で通えると思っている人もいるため、確認しておきましょう。

2025年度から始まる多子世帯を対象にした大学無償化は、あくまで多子であっても最大2人分の学費負担で収まることを目的としています。大学の学費をまったく用意しなくて良いわけではありません。

多子世帯へ向けた大学無償化制度では、「3人以上同時に扶養されている」ことが条件となります。そのため、たとえ子どもが3人いても、第1子が大学を卒業すると、第1子は扶養から外れることになり、第2子、第3子の学費は通常通り支払う必要があります。

高3・高1・中1の子どもがいる場合、どれくらいの学費がかかる?

それでは、実際に3人の子どもがいる場合、学費としてどれくらいの資金を用意しておく必要があるのでしょうか。実際のケースを見てみましょう。

ここでは、2024年4月時点で高校3年生・高校1年生・中学校1年生の3人の子どもがいるケースで考えてみます。また、第1子が国立大学、第2子が私立大学(文系)、第3子が専門学校(2年制)に進学すると仮定します。大学無償化の対象・非対象を図表1にまとめました。

図表1

内閣官房 こども未来戦略~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~より筆者作成

図表1より、第1子が大学を卒業するまでは第2子の大学入学金、授業料ともに上限額までは全額支援となります。なお、私立大学の場合は入学金26万円、授業料70万円を超える額は自己負担です。第1子が大学を卒業し、扶養ではなくなると「同時に3人を扶養する」という条件に当てはまらなくなり第2子、第3子とも支援の対象外となります。

文部科学省による私立大学の学生納付金等調査の結果と、公益社団法人東京都専修学校各種学校協会による学生・生徒納付金調査の結果によると、第2子、第3子のときに支払うべき学費は次のとおりです。

__・第2子の2年間分の学費…約250万円(2年間分の学費)

・第3子の2年間分の学費…約240万円(入学金と2年間分の学費)__

大学や専門学校の分野等により学費は変動しますが、今回のシミュレーションでは2人合わせて約500万円必要となりそうです。そのほか、下宿等すれば1人暮らしの準備資金や仕送りが必要となります。ただし、多子世帯への支援の対象外となった場合でも、世帯の所得によっては支援を受けられる可能性があります。

まとめ

2025年度から始まる多子世帯へ向けた大学無償化制度。3人以上子どもがいる家庭では、学費負担が軽減できるため期待が高まっています。

所得制限は撤廃され、ほとんどの大学・短大・専門学校などが対象機関となっています。ただし、「最大2名までの授業料負担に収める」との目標で考えられた制度のため、「3人同時に扶養されている」ことが支援を受ける条件です。子ども3人の世帯では、第1子が大学等を卒業して扶養ではなくなると支援も終了します。

それでも3人以上の多子世帯が、自由な意思で大学や専門学校など高等教育を受けやすくなるのは、職業選択においても有意義なことです。制度を理解して計画的な学費等の資金準備を進めたいですね。

出典

文部科学省 令和5年度 高等教育の修学支援新制度の対象機関数
文部科学省 令和5年度 学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値を公表します。
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
公益社団法人東京都専修学校各種学校協会 調査2 令和5年度 学生・生徒納付金調査

執筆者:古澤綾
FP2級

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