大谷が苦手克服、結果に表れた「劇的変化」…ナ・リーグ三冠王獲得なら1937年以来の快挙

大谷翔平(C)ロイター/USA TODAY Sports

ドジャース大谷翔平(29)は現在、三冠王の射程圏にいる。

不動の1番打者だったベッツの故障離脱は大谷にとってプラスに作用。次打者の大谷は何かと制約が多かったが、その枷が外れたことにより、18~23日の6試合で計24打数11安打の打率.458、4本塁打、11打点と大暴れしている。【前編】からつづく。

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ベッツに代わって打順が2番から1番に繰り上がったこともメリットがある。

大谷はベッツが離脱するまで1番は“苦手”だった。エンゼルス時代の6年間も含め、1番を打ったときは234打数62安打の打率.265。2番は1155打数330安打の同.286。3番は967打数262安打の同.271。打数が多い1~3番で、最も打率が低いのが1番だった。本塁打は1番が16.71打数に1本、2番が12.41打数に1本、3番が16.67打数に1本。一発を打つ確率も1番が最低だった。

大谷は少年時代から早打ちだった。追い込まれる前に、投手がカウントを取りにくる球を積極的に打ちにいくスタンスだった。

ところが、1番を打つようになったことで、後続の打者のためにも投手に球数を投げさせる必要が出てきた。ロバーツ監督からは再三、ボールを見極めろと言われていたものの、嫌でもボールを見極めざるを得なくなった。

実際、初球から打ちにいかないケースが増えている。大谷がこれまでメジャーで放った194本塁打のうち、最も多いのは初球をとらえた43本。79本までが2球目までに仕留めたものだが、1番を打つようになってからの6試合で放った4本塁打のうち3本は3球目、1本は4球目をとらえたもの。「ストライクゾーンを把握できている」と本人が言うように、ボールをきちんと見極め、確率の高い打撃ができているということだ。

もちろん、指名打者として打つことに専念している点は大きい。「二刀流」が看板の選手が、今季は右肘手術明けで打者に専念せざるを得ない。投手と打者、両方の調整をしながらシーズンを戦うのが常だが、投手としての調整はリハビリくらい。時間のほとんどを打者に費やせる。

大谷の月ごとの本塁打数をみると、9月が19本で最も少ない。次いで少ないのが8月の28本。例年8、9月にペースダウンするのは、投手もやっているがゆえの疲労が原因だ。

昨年7月28日、タイガースとのダブルヘッダーの1試合目に「2番・投手」として完封勝利。その45分後に始まった2試合目も、休養を勧める首脳陣を制してスタメン出場。本塁打を2本放ちながら、けいれんを起こした。今季は投打の二刀流としてフル回転せずに済むのは何より大きい。

今季はただでさえ打者に専念するうえ、ベッツ不在が大きくプラスに作用し、三冠王に向けて視界良好。仮に三冠王獲得なら2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来、ナ・リーグに限れば1937年のジョー・メドウィック(カージナルス)以来の快挙になる。

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