【工場の無駄な仕事あるある】今まさに“熱中症の危機”だが…炎天下で朝礼を開き「熱中症の注意喚起」をする謎

(※写真はイメージです/PIXTA)

企業の工場や生産現場において生産ラインの設計や管理を行う仕事、「生産技術」。本稿では、生産技術職YouTuber“生産技術の馬”氏の著書『生産技術あるある』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、生産現場や工場勤務でありがちなことを紹介します。他業種の方でも思わず「あるある!」と共感してしまう内容です。

無駄なチェックリスト ~無駄な仕事あるある

■根本解決策にはならないのに…。ただただ増えていく「チェックリスト」

工場では少しでも誰かがミスするとチェックシートが増えがちです。

例えば現場が行う作業で、数字を入力する作業があったとします。普段同じ作業をしているので間違えることはほとんどありませんが、たまたま記載する数字を間違えてしまったとしましょう。このような場合に、解決方法としてチェックシートを作るということが挙げられます。このように誰かがミスするたびにチェックシートが増えていくのですが、これは無駄です。

このチェックシートは根本的な解決方法にはなり得ません。確かに最初の方はチェックすることによって注意するとは思いますが、1ヵ月も経たないうちにほぼ形骸化します。現場は上からチェックをつけろと言われているのでただつけるだけになります。いまだにチェックリストを作成させたり、二重チェックをさせておけばミスがなくなると思い込んでいる頭の固い人がいますからね。

あとは、こういったミスが発生した場合、人のミスをなくさせようとするのではなく、システム上ミスが発生しないようにすべきです。今回の例だと数字を入れる作業をミスしているので、自動的に数字が入るようにシステムを組めばいいのです。

ただ、ミスしない構造を考えるのは大変ですし、実際にそれを実行しようとするとさらに大変です。ただでさえ忙しいのにそこまで考えようとしたくないですよね。こうして安易なチェックシートという解決策に頼っていくことになるのです。

■もはやチェックリストをなくすだけで無駄な仕事が減る

チェックシートというのは、昔はなかったのに誰かのミスのせいで作られてしまったという場合が結構多いので、皆さんは現在工場にあるチェックリストが本当に必要なのか考えてみましょう。実際適当にチェックしているチェックリストはいくつかあると思います。チェックリストをなくすだけで無駄な仕事を減らせることでしょう。チェックリストをどうしても廃止できない場合は、中身を見てみることも重要です。「〜を確認する」などの曖昧なチェック項目があるのではないでしょうか。

「熱が37℃以下である」など具体的な数値が入っている項目ならまだチェックのしがいがありますが、「確認する」などのチェック項目はおそらく確認していなくてもチェックをつけるようになってしまいますからね。

「確認する」というのも具体的に深掘りしてみると、目で見るだけとか、目で見てそれを別のところに記入するとか、人によって何をすべきか変わっている場合があります。チェックシートを作ることになったときはこういった抽象的な項目は極力なくし、数字や行動内容を入れた具体的な項目にするよう心がけましょう。

猛暑の中朝礼で熱中症の注意喚起 ~無駄な仕事あるある

■今から仕事をやるぞと意気込むタイミングで行われる「苦行」

工場ではラジオ体操の後に朝礼を行う場合が多いです。ラジオ体操を屋外の広いスペースで行い、そのままそこで集まって全体朝礼というパターンです。

朝礼にも様々な種類がありますが、私が経験した2社についてお話をすると、まず1社は毎回交代で誰か一人が一言話してご安全に! というパターンです。

例えば7月の朝礼なら、「暑くなってきたので注意しましょう」などのわかりきったことを言います。当番制なのでみんな順番が回ってきたら嫌々適当なことを考えて話さないといけません。本当に誰のためにやっているのでしょうか。古い工場はこういった謎の習慣がありがちです。

もう1社に関しては、集まってラジオ体操後、なんと今時社歌が流れます。もちろん歌っている人なんて誰一人いませんが、社歌が終わるまでぼ~っと待った後、次は社訓を唱えます。現在もこんなことしている会社があるのです。もはやここまでは誰も聞いていません。ただただ時間が経過するのを待っている状態です。生産性もクソもありません。

この社訓を読み終わった後に、やっと朝礼が始まります。この朝礼は部長などの代表者が話します。夏場であれば1社目の先ほどの例と同じです。「熱中症に注意しましょう」という注意喚起がされますが、おかしなことがありますね。朝といえども夏場、外で朝礼です。暑いに決まっていますよね。なぜ熱中症の注意喚起を熱中症になりそうな場所でしているのでしょうか。本当に意味がわかりません。

さすがに日陰でやっていましたが、暑いことには変わりません。汗をかきやすい太った人や私などは毎回汗だくで朝礼に参加していました。今から仕事をやるぞと意気込むタイミングでこのような苦行が行われているのです。

■“ニッポンの伝統”から脱却する時が来ている

私はこの朝礼はやる意味がないと役職者に反抗したことがありますが、伝統的に続いていることを理由になくなることはありませんでした。誰の得にもならない伝統など本当に必要なのでしょうか。周りの別会社の話を聞く限りでは、一部の昔ながらの日本企業はこういった意味のわからない朝礼を行っているようです。

こんなことしているから生産性が低い企業や社員が大量発生すると私は思います。近年は人手不足の企業が多くなってきているため、より社員1人ひとりの生産性を高めなければならない状況になっています。したがっておそらくこういった生産性に直結するような無駄な習慣は今後淘汰されていくでしょうね。

生産技術の馬

生産技術職YouTuber

大阪出身。神戸大学の大学院を卒業後、生産技術者として工場で勤務。大手電機メーカーと大手食品メーカー2社の工場で設備管理・設備更新等を行い、さまざまな規模の工場で経験を積む。2021年よりYouTubeで生産技術者へ向けて情報発信を行っている。

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