定額減税で「4万円」お得になるはずなのに、なぜ評判は良くないの? 制度とあわせて理由を解説

そもそも定額減税とは

定額減税とは、国民1人当たり4万円(所得税3万円、住民税1万円)を給与から天引きされる税金から控除する制度です。つまり、給与天引きの税金が4万円少なくなるので、手取りが4万円多くなるという仕組みです。

しかし、これでは専業主婦(夫)や学生など給与収入を得ていない人については、減税の恩恵を受けられないことになります。そこで、扶養家族分の定額減税についても、扶養している納税者がまとめて受けられる仕組みとなっています。

例えば、夫、妻、子ども2人の4人家族で、妻と子どもは夫の扶養となっている場合、夫が受けられる定額減税は、自身の4万円+家族3人分の12万円を合わせて16万円となります。なお、6月の給与または賞与で天引きしきれなかった減税額については、翌月の給与計算に繰り越されます。

定額減税が不評な理由

それでは、なぜ定額減税が酷評されているのかについて解説します。4万円減税するという方向性に対して言われているわけではないようですが……理由を見ていきましょう。

手続き負担を会社がすることになったから

定額減税は給与から天引きされる税金から4万円を控除することで行われます。つまり、定額減税は国が打ち出した政策ではありますが、実際の手続きを行うのは給与を支払う「会社」というわけです。

さらに言うなれば、その会社の給与計算を担当している部署の人たちに事務負担が押し寄せる形です。いつもの仕事に定額減税の手続きが上乗せされ、残業をせざるを得ない人も多いのではないでしょうか。

しかし国は、定額減税に協力する会社にお金を支払うわけではないので、会社は得のない経費を負担することになります。「国民一人ひとりに4万円振り込めば済んだ話だったのでは?」と声が上がるのは当然ですね。

給与明細に減税分表記を義務付けたから

政府は定額減税を行うにあたり、会社などに対して給与明細に減税額を明記するように義務付けます。その理由を林芳正官房長官は、「デフレマインドの脱却につなげるには、国民のみなさまが政策の効果を実感できるようにすることが重要だ」と述べています。

しかし、給与明細にいつも記載されている「源泉所得税」や「住民税」の金額に混ぜて記載してしまうと、政府が行った定額減税の恩恵が国民に伝わりにくいからという部分もあるのでしょう。これが「政権の人気取りのため」と声が上がる理由と考えられます。

まとめ

国民にとってお得である定額減税が不評な理由としては、回りくどい事務手続き方法をとったことで給与計算を行う人に負担をかけること、給与明細にあえて明記させることで政権の成果を見せつけたいと考えられることなどが挙げられます。また、毎月ではなく1月のみの対応というのも理由の一つかもしれません。

このように批判されるのは定額減税に限りませんが、今後はより国民にとって負担がなく、メリットの大きい政策を期待したいですね。

出典

国税庁 定額減税について

執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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