夏休みはムシムシランドで遊ぼう!昆虫の聖地で「虫って面白い!」と思えるきっかけをつくり続ける地域おこし協力隊『大口宗将さん』【福島県田村市で暮らす人々】

三重県▶️田村市常葉町

地域おこし協力隊 大口宗将さん


いよいよ6月になり、待ちに待った夏休みもすぐそこです。豊かな自然を満喫しながら、夏ならではの体験や思い出作りを楽しみたいという方におすすめしたいのが、昆虫を軸とする観光振興を進める福島県田村市の「ムシムシランド」。昆虫好きな方がさらに興味を深め、虫は苦手という方が虫の面白さに気づくことができる、大人気体験施設です。今回は地域おこし協力隊として活動するムネリンこと大口宗将さんにお話を伺い、昆虫を知る入口としてのムシムシランドの魅力や楽しみ方、夏の田村市のおすすめ観光情報について、教えていただきました!

__大口宗将さん
__愛知県出身。身近な昆虫の採集を通じて「昆虫は、何を食べ、どこに住み、どのように生活しているのだろう」という生態に興味を持ち、昆虫の採集や観察に明け暮れる。大学卒業後はパソコン部品製造を行う会社に勤務するも、「昆虫に関連した仕事がしたい」と考えていた。昆虫の聖地化を目指す田村市の取り組みを知り、「昆虫が好きな人」を要件とした地域おこし協力隊の募集に応募。2023年5月に着任し、現在はムシムシランドのスタッフとして活動している。

虫の面白さって何だろう?「昆虫館」で出会いながら体感しよう

ムシムシランドの「昆虫館」では、昆虫や虫を飼育しながら展示する生体展示と、標本展示をしています。入口からすぐの場所にあるカブトムシとクワガタムシの生体展示コーナーでは、外国産と国産、どちらも展示しています。外国産のカブトムシの寿命は半年から1年ほどですが、主に中南米や東南アジアの熱帯に分布する種なので、⽇本の冬の寒さが合わず、通常よりも早く寿命を終えるのです。日本のカブトムシの寿命は、3週間から1〜2ヶ月ほど。やはり寒さが苦手なのですが、暖かい環境さえ整えてやれば、6〜7月に成虫になった後、5ヶ月ほど生きられます。

「僕にとってタランドゥスオオツヤクワガタは、お気に入りだけど大嫌いな種。すぐはさんできますが、漆を塗ったかのようなツヤのある体表が特徴で、乗っている木を持つとブルブルとバイブレーションするかのように震えるのが面白いです」と大口さん

一見するとカブトムシやクワガタムシと関係が無いような虫も、昆虫についてより深く理解できることから、同じエリアで展示しています。例えばカナブンとカブトムシは、同じコウチュウ目コガネムシ科という分類に属しており、実はどちらもコガネムシの仲間です。ゴキブリは何かに体がぶつかっていると安心するという性質があり、これは種にもよりますが、身を守るためにエサでもある朽⽊の隙間に⼊り込み、同じ目的の別個体と集団⽣活をしていたからだと考えられます。これとよく似た⽣態をしているのがシロアリです。実はシロアリはゴキブリから進化しており、現在では同じ分類にしようかという議論もあります。モザンビークの熱帯雨林などに生息するトーゴオオヤスデは、日本で見るヤスデとは体の大きさがまるで違います。つまり同じ種類の虫でも、生息地などの環境の違いが生態に大きく影響するんだと、知ることができるのです。

モルガンサスマタカナブンの生体展示。ツノがあり、カブトムシと同じ仲間であることを理解しやすい

田村市で出会える昆虫や生き物についても展示しています。ゲンゴロウやアカハライモリは、市内の薪の里ながとろで採集しました。ゲンゴロウもカブトムシと同じコウチュウ目ですが、カブトムシが森の中で樹液をエサにして生きているのに対し、ゲンゴロウは水中で小さな昆虫などを食べて生きています。人の場合、活動場所や気候が変わると装備で対応しますが、昆虫の場合は姿形や食べるものが変わります。これだけの適応をしている分、昆虫は環境の変化をダイレクトにうけ、生きる場所が無くなるとすぐ絶滅してしまいます。

市内に生息する昆虫標本は今後も増やす予定。標本はラベルと肢体(手足や体)がセットであり、ラベルには虫の名前、誰が・どこで・いつ採集したか、といった情報が記録されている

「標本にするなんてかわいそう」という意見もありますが、標本作成の意義は、羽や足の細かさや体内のつくりの観察のほか、「この地域にこの昆虫がいる、その環境がある」という証明ができること。毎回標本を作成するかは別として、環境が維持されているかという調査は、定期的に行う必要があります。昆虫を知ることは、その地域や環境の状態を知ることでもあります。ムシムシランドとして、芦沢地区の農家さん裏のくぬぎ林などで、生態調査を行っています。個人的には薪の里ながとろにも行かせていただいています。

ムシムシランドを博物館施設として見るなら、展⽰のほか、研究や啓蒙活動、調査収集といった仕事があります。しかしムシムシランドは観光施設なので、研究や資料保管は⾏っていません。今の活動をしながら研究を深めたいと思っても資料が無いため、今後の活動の⼀貫という意味でも、⽣態調査や収集を⾏っています。先日は個人的な興味もあり、清掃前の小学校プールの水生生物調査をさせていただきました。このほか、市政だよりや新聞での執筆、県の広報誌への掲載といった広報関連や、市内小学校での昆虫に関する授業やたむら市民大学の教員といった活動もしています。

昆虫を知り理解することは、選択肢を広めるということ

虫が嫌いという人もいるでしょう。それは仕方がないです、僕も機械が嫌いですから。しかし単に「気持ち悪い」という理由で拒絶するのではなく、相手を理解してほしいなと思います。理解しないと、自分が選択肢を持てなくなるからです。

田村にはコナラやクヌギといった広葉樹やスギなどの針葉樹があり、田畑や沼地があり、準絶滅危惧種のゲンゴロウが生息しています。環境自体は非常に豊かで、このことは⽥村にとって当たり前のものかもしれません。しかし当たり前のものに対しては、興味を持ち、深く知りたいという気持ちを抱きにくく、知らなければ、選択肢からはずれてしまいます。自然を切り拓くような開発を行う案が浮上した際、自然環境にどう影響するのかが全く考慮されずに、採用されてしまうことが起こり得ます。

自然界でも昆虫は大きな役割があります。例えばカブトムシの幼⾍は腐った葉や⽊を⾷べ、分解して⼟に還します。⼟は⽊が根付く⼟台となり、成⻑して落葉したらそれがまた⼟になります。昆⾍は別の⽣物に⾷べられることを繰り返し、その頂点に⽴つ⽣き物も、死ねばまた⼟に還っていきます。こうした⾃然のサイクルを担っています。またカブトムシの幼⾍は医療面でも注目されています。菌から身を守るためのタンパク質「カブトムシディフェンシン」は、今がん細胞を抑制する働きを持つのではないかということで研究が進んでいます。しかしこれらの事実を知っている⼈はそう多くないように思います。⼈の健康に役⽴つかもしれないのに、興味を持てていなければ、情報があっても⾃分の中に取り⼊れられません。人もそうですが、相手を知ることで、より深く理解することができます。昆虫を育てるためには育て方を知る必要があります。その積み重ねが、昆⾍という相⼿を理解することであると考えています。

昆虫館の中から、日本の国蝶オオムラサキの屋外展示が見られる。エノキに隠れる10匹以上の幼虫を自然に近い状態で観察できる

昆⾍といえば理科ですが、実はさまざまな教科分野にアクセスすることができます。例えば、ゲンゴロウがどのような環境に住むかを知っていれば、⾒知らぬ⼟地でゲンゴロウを⾒つけた時に「このあたりは溜池や⽔⽥がある地域なんだ」となり、ここから社会科の視点につながります。日本史において、奈良県法隆寺にある⽟⾍厨⼦の装飾には、何千匹ものヤマトタマムシの⽻が使われたと⾔われています。このことから、それだけのヤマトタマムシが住める⾃然環境が、約1200年前の⽇本にあったのではないかと想像することもできます。平安時代の随筆「枕草⼦」には⾍にまつわる歌が詠まれ、「蓼(たで)食う虫も好き好き」などの昆虫のことわざや慣用句から、⽇本⼈は昔から昆⾍に興味を持っていたことも分かります。「虫の居所が悪い」のように、病気や心の変化を表す意味の虫も一定数ありますが。

時には数学も、昆虫と関わったりします。セミは2〜5年周期で⽻化する種が多いですが、13年や17年という⻑い周期で、⼀度に⼤量に⽻化することを⽣存戦略とする「周期ゼミ」と呼ばれる種がいます。13や17といった素数の周期は、他の種と⽻化のタイミングが重なりにくいため、雑種が⽣まれる可能性が減り、そのおかげで⼦孫を残すことができています。周期ゼミは⽇本にいないので、詳しく知りたいなら英語論⽂を読むことになりますから、英語を学ぶ意味も出てきます。

虫を嫌いになる理由は、生活の中でハエやゴキブリといった嫌悪感を抱く昆虫に出会う確率が高いからで、昆虫との出会い方が良くないように思います。昆虫館でカブトムシやクワガタを中心に展示している理由は、虫嫌いな人たちが「虫は面白い」と思う入口に、昆虫を知らない子たちが「この世界にはいろいろな昆虫がいる」と知る入口になるからでもあります。

この夏はムシムシランドで遊ぼう!

ムネリンがおすすめするイベントや周辺観光情報

__カブトムシドームがオープン
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2024年の夏季営業期間である7/13(土)〜8/25(日)は、カブトムシドームがオープンします。1000匹以上のカブトムシを放し、エサを食べる様子を観察したり、相撲を取らせたりなど、自由にふれあうことができます。エノキを植樹した囲いのゾーンには、オオムラサキも放します。昆虫館ではヘラクレスとの記念撮影や、トーゴオオヤスデといった奇蟲とのふれあいタイムもあります。カブトムシドームと昆虫館が同時オープンするのは夏季営業期間のみですので、ぜひ遊びに来てください。(2023年の夏季営業の様子やカブトムシドームの詳細はこちら)

カブトムシドームの入口近くにあるインセクトホテル。幼虫の越冬や出会いの場としての役割があり、今年の春先に来館者と共に制作。なおハチは別の専用ホテルがある

インセクトツーリズム開催

7〜8月に、昆虫採集体験を中心としたツアー「インセクトツーリズム」を開催します。こちらは募集開始後、市外や県外の方からの応募が相次ぎ、すでに定員に達してしまいました。来年度も開催予定なので、チェックしてみてくださいね。

昆虫館のおみやげコーナー

大きな昆虫キットや昆虫飼育関連グッズ、カブトンクッキーをはじめとしたお菓子など、来館の思い出になるおみやげを多数取り揃えています。暑い夏に食べたいソフトクリームは、コオロギトッピングもおすすめです。五感をフルに使いながら、昆虫を知ってください。(※甲殻類アレルギーの方はご注意ください)

バニラソフトクリームに乾燥させた食用コオロギをトッピング。炒った豆の皮のような食感と香ばしさの後に、エビやカニのようなコクが感じられる

トレッキングコースで昆虫採集体験&限定オリジナルシールをゲット!

ムシムシランド周辺には10分〜25分ほどで回れるトレッキングコースがあり、気軽に自然散策や昆虫採集を楽しむことができます。コース内の6箇所に標識を設置しており、最低でも2箇所を撮影して受付に見せると、ここでしか手に入らないノベルティシールをゲットできます。(※様々な生き物がいますので、コース周遊時は長袖長ズボンを着用ください。つかまえた昆虫は逃してください)

こちらの標識を2箇所分撮影すれば、オリジナルシールをゲットできる。昆虫館の近くに2箇所あるので、ムシムシランドで遊びながら探してみよう

ムシムシランドは昆虫を知る入口ですが、田村市ではほかにも様々な自然科学の入口に出会うことができます。滝根町の入水鍾乳洞は、常時水の中を進む本格的なケイビング体験ができるだけに、鍾乳洞とは一体何か、興味を持つきっかけになると思います。あぶくま洞では鍾乳洞のほかにラベンダー園などの見どころも多く、景色を見ながらごはんを楽しむこともできます。田村の夜空は肉眼でも星が見えますが、星の村天文台に行けば大型望遠鏡があり、台長さんらの詳しい解説を聞きながら星空観察をすることができます。こうした豊かな自然を、宿泊して楽しむこともできます。ムシムシランドからすぐの場所にあるスカイパレスときわや、テント泊ならグリーンパーク都路があります。こちらではホップジャパンのクラフトビールも楽しめますね。

自然博物館のような田村市でこれからも調査や研究を

田村市は、それこそ調査しきれないくらいに、虫がいっぱいいる地域だと思います。場所によって出会える昆虫が違っており、そうした意味で、田村市自体が1つの大きな自然博物館のよう。この地域に、市としてもっと専門家を呼んだ方がいいと思っていますし、僕自身はこれからも昆虫の調査や研究をしたいです。今後は、いつ・どこで・どんな昆虫が採れるかが分かる、昆虫カレンダーを作りたいです。これには田村市の力や、生態調査できる場所や時間、人手が必要です。資料を保管する場所もほしいですね。授業ができる人も今は自分だけなので、なかなか出かける時間を確保しにくいのですが、カレンダーがあれば皆さんが昆虫採集に出かけやすくなるし、宣伝にも使えると思っています。

田村市に来てみたいと思う方や移住を考えられている方へのメッセージですが、ここはシンプルにいきましょう。
「虫好きあつまれ!さまざまな環境があるから、いろんな昆虫が採れるよ!」

ムシムシランド

住所:福島県田村市常葉町山根字殿上160
電話:0247-77-4097
営業日:
(夏季営業)2024年は、7/13(土)〜 8/25(日) 水曜定休
(夏季以外)2024年は、4/6(土)~7/7(日)、8/31(土)~11/30(土) 土・日・祝日に昆虫館のみ営業
開園時間:9:30~16:30
駐車場:あり
HP:https://mushimushiland.com/
※最新情報や入場料などの詳細は、HPよりご確認ください。


この記事を読んで田村市での生活に興味を持った方、移住を検討している方は、お気軽にたむら移住相談室へご相談ください。

たむら移住相談室

Web:https://tamura-ijyu.jp/
電話:050-5526-4583
メール:contact@tamura-ijyu.jp
※たむら移住相談室は株式会社ジェイアール東日本企画と(一社)Switchが共同で運営しております。

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