東通牛、環境配慮でブランド力向上へ ゲップのメタン抑える?餌を導入 青森・東通村

ルミナップが入った餌を東通牛に与える公社スタッフ

 東通村産業振興公社は昨年夏から、村特産の東通牛に、牛のゲップに含まれるメタンガスを抑制する効果が期待される餌を与えている。メタンガスは地球温暖化の一因とされており、同公社は、環境への配慮という付加価値をつけることで東通牛のブランド力向上を目指す。

 黒毛和種の東通牛は、村内の畜産農家が育てた子牛を生後10カ月で出荷。県家畜市場で同公社が競り落として19~20カ月間育てた後、村農産物加工センターで処理・加工して流通する。

 村によると、1990年代に約240戸あった村内の畜産農家は高齢化と後継者不足で年々減少し、今年2月1日現在で32戸。食肉用として加工・出荷される東通牛は年間36頭前後で、松阪牛や神戸牛といったブランド牛は年間千頭以上が出荷されるため、「ブランドの認知度でも、数量でも勝てない」(村担当者)のが現状だ。

 そこで、付加価値をつけることで東通牛のブランド力を高めようと、昨年夏、出光興産(本社・東京)が開発した餌「ルミナップ」を取り入れた。同社の子会社で、ルミナップを販売する「エス・ディー・エス バイオテック」によると、ルミナップに配合されているカシューナッツの殻から抽出した液状の成分が、牛のゲップに含まれるメタンガスを抑える効果があることが、北海道大学の研究論文などで報告されている。

 公社では、ルミナップを乾燥トウモロコシなどと混ぜた餌を牛に与えている。現在約130頭飼育しており、1頭当たり1日6~8キロの餌を食べるが、餌の費用は、ルミナップを混ぜる前とさほど変わらないという。

 また、餌との関係性は定かではないものの、ルミナップを与えて以降、東通牛を仕入れている県内外の飲食店から「牛特有の臭いが減り、肉の質も良くなった」という思いがけない評価もあった。

 公社の坂本明専務理事は「環境に配慮して育てているということを多くの人に知ってもらい、消費拡大を図っていきたい。さらには畜産に興味を持つきっかけとなり、移住、就農につながってくれたら」と期待を込めた。

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