田舎の自然の中で親子で思いっきり遊ぼう!都会ではできない自然体験や人を育てる環境づくりを通し地域の持続性も高める『もりのび』【福島県田村市おすすめスポット】

「『周りの迷惑になるから静かにしなさい』『ここでボール遊びはだめ』…そんなことを言わずに、子どもの心のままに思いっきり遊ばせてやりたい!」お子さんを持つ親御さんや子どもにのびのび育ってほしいと願う方は、こんな風に思ったことがあるのではないでしょうか。

阿武隈高原に位置する福島県田村市は、市内の約7割が森林に覆われ、里山や裏山が生活の身近にある地域。豊かな田村の自然の中で、さまざまな体験を通して親子で遊び学べる場が「もりのび」です。運営事務局である一般社団法人Switchの担当者から、もりのびの活動内容や目指すところについてご紹介します!

「うんと学び、森っと遊ぶ。」もりのびの活動について

もりのびは、親子参加型の自然体験・遊び場づくりのプロジェクトです。都市部ではできない里山・裏山体験や自然体験を通し、人を育てる環境づくりや場所づくりを行い、この活動を地域に根付かせることを趣旨に行っています。田村市で活動される農家さんやアーティストの方々にもご協力いただきながら、2022年に実験的にスタート、2023年から本格始動しました。会場は田村市の殿上山で、こちらで営業されているスカイパレスときわ様のご厚意で使わせていただいています。

これまでに、竹を切って長くつなげた竹すべり台遊びをはじめ、竹はんごうでの炊飯やカレー作り、竹水鉄砲合戦、竹スキー場作り、草木染め体験、木の枝や松ぼっくりなどを使ったツリー作りなど、殿上山というフィールドや、森にあるものを活用した体験イベントを行ってきました。また、田村市内の小学校の放課後児童クラブに出張し、地域の自然素材を用いた工作体験なども開催しました。

竹すべり台遊び

竹はんごうを作って炊飯。カレーを食べる食器も、竹を使い自分で作る

活動において大事にしていること

・失敗も経験
とりあえずやってみよう。失敗したっていいんだよ、そこから学べる!

・子どもの自主性
子どもに決めさせて、子どもにやらせたい。のこぎりだってトンカチだって木登りだって虫取りだって、自分でやったらいい経験!

・学校や塾ではできないことを
勉強は大切。だからこそ、勉強以前にもっと大切なことは、小さいうちに体験して吸収してほしい。勉強は知識習得であり、あくまで目的達成のための道具や方法。知識を使いこなせるようにするために、幼少期から色々な体験を!

・地域の方と一緒に
地域には素敵で面白い大人がたくさんいる。キミたちが生まれた場所って、実は面白いところ。それをぜひ知ってほしい!

・人材育成
少子化や進学、就職などで子どもがいなくなってしまうと、地域が続かなくなってしまう。環境の持続可能性が叫ばれているけれど、過疎・中山間地域にとっては、地域の持続可能性も同じくらい死活問題のはず。だから子どもには、地域に愛着・興味・関心をもってほしい!

地域のアーティストの方や大学生ボランティアスタッフと一緒に、身の周りにある植物で草木染め体験。「この色、この匂い、何の植物?」全員釘付け

かつての子どもの遊び場だった殿上山。

自分たちの手で、またにぎわいを生み出したい!

ほどよく整備された自然がある殿上山は、親子と一緒に遊び場づくりを始めるにはちょうどよい環境であると共に、今の子育て世代の田村市民にとっては思い出の場所でもあります。かつてここには殿上山観光牧場があり、ローラーすべり台やポニー牧場といったさまざまな施設が整備され、家族連れや観光客などたくさんの人でにぎわっていました。しかし老朽化や震災の影響で廃業、施設は撤去されてしまいました。

自分たちが親しんだ遊び場を、今の子どもや家族が楽しめる場として、みんなの手で復活させること。当時の子どもたちが親になり、自分の子どもを連れてここに戻ってきて、そこにまたにぎわいが生まれること。こうした点に象徴的な意味合いを感じたこともあり、殿上山をメインの活動場所としています。

ビー玉や洗濯バサミを使い草木染めTシャツの模様をつくる。「どうやるの?」「このビー玉きれい!」など、自由に楽しみながら手を動かす子どもたち

市内外からたくさんの親子が参加!

「普段できない経験ができた」「親子で夢中」といった感想も

参加者の半数は田村市の方、もう半数が田村市以外の郡山市などから来られる方です。Instagramやチラシを見て来られる方もいらっしゃいますが、口コミでの参加が多い印象です。参加理由としては「子どもの遊びや体験の場」「保護者同士の団らん」「学校以外の友だち・交友関係の広がり」「アウトドアが好きだから親子で楽しみたい」「ちょうど良いゆるさが好き」などが多いです。もりのびが好き!と、応援してくれるリピーターさんも少しずつ増えてくれています。地方移住体験ツアーの一貫で、県外から参加してくれた親子の方々もいらっしゃいますよ。

参加した方からは、「普段できない経験ができた」「親も刺激になった」「ゲストやスタッフにまた会いたい」「子どもが学校や家で力を持て余しているので試しに体験させてみた、子どもが満足していた」「わが子とたくさん話ができた」「工作や染め物といった当日の体験に子どもが興味を持つようになり、親子で夢中になっている」といった感想をいただいています。

大きな歓声をあげながら白熱の「だるまさんころんだ」開催。自然の中だから近所への迷惑を気にせず思いっきり熱中できる

印象的なできごともありました。あるお母さんが「引っ込み思案な娘にいろいろな体験をさせたい」と、娘さんと2人で参加してくれました。のこぎりで竹を切るという活動をしていましたが、その子に「やってみる?」と聞いたところ、首を横に振りました。きっと怖かったでしょうし、周囲に見られている状況ではなおのことだったでしょう。お母さんとスタッフに背中を押され、渋々やってくれました。一緒に、丁寧に、ゆっくりやってみたら、竹を切ることができました。その子はお母さんや周りに褒められ、笑顔になったんです。それ以降は毎度のように、もりのびに参加してくれています。「誰か試しにやってみる人!」という問いかけにも手を挙げ、自分から進んで一歩踏み出す子になりました。

活動を始めた背景と、プロジェクト担当者の思い

もりのびの活動は、「田村市、ゆくゆくは田村地域や福島県の地域振興をしたい」という思いを大前提に、さまざまな課題意識から始まりました。まず、日本全体で加速する少子化や人口減少の問題です。子どもや親子の体験機会を含めた子育て環境の充実が必要となる中で、田村の自然を活かした田舎ならではの価値提供をしたいと考えました。活動は現在、Switchが旗振り役をしていますが、今後活動の自走化・自立化がすすめば、旗振り役がいなくとも、地域の大人が地域の子どもたちを育てるという意識や環境が根付きます。そうなれば子育て環境が整った地域として、持続可能性が高まると考えています。

次に、都市部と過疎地の体験格差です。首都圏や地方中枢都市圏に比べ、過疎地は体験機会がそもそも少ないと言われることがあります。実際にそうではないとしても、田舎に移住を考える子育て世帯の方は、その心配を口にされることも多いです。せっかく田村に大自然があるのだから、それを活かした体験機会をつくりたいと考えました。

協力して竹をつなげてボールを転がす遊び。自然の中にあるものから遊びを生み出し、自分たちで発展させる

そして、自然に触れる機会の減少です。今の子どもは昔に比べ外で遊ばなくなったと言われていますが、震災やコロナ禍で外出そのものができない時期もあり、外遊びの機会はなおも減っている状況です。さらに田村市では、学校の統廃合でバス通学をする子どもも増えており、家庭から学校までほとんどドアツードアで通う毎日の中では、道端の花や昆虫に気づく機会を得にくいです。せっかく自然豊かな地域の出身なのに、ともすれば都市部の子どもより、自然に触れていない可能性があるかもしれません。自然のありがたみを感じ大切にしようとする心を育てるためにも、幼少期から自然の魅力に触れられる場所や機会をつくりたいと考えました。

企画運営を担当している自分自身の後悔や経験も、この活動を行う原動力になっています。子ども時代は引っ込み思案で、他の人の利益を優先し、周囲に流されがちでした。夢や進路について早いうちから考え取り組んでおけばよかった、そしたらもっと最短距離でワクワクすることの実現に向かっていけたのに…という後悔があります。子どもたちには同じ思いをしてほしくないので、大人になった今、自分が伝えられることを伝えていっています。また、苦しい時に自然の中に身を置くことで少し楽になった経験から、自然が好きになりました。今の子どもたちにも、自然を好きになってほしいです。

これまで塾の先生として、たくさんの子どもや保護者と進路相談の面談をしてきました。多くの子どもは中学3年生になったら、受験という初めての人生の選択・勝負に、強制的に臨まなければなりません。その時期が来ると分かっているのなら、周囲の大人の責任として、もっと早い時期から子ども達をサポートしなければいけないと感じました。多くの子どもと保護者は、塾に来てくれた時にはとっくに困った状況になっています。塾の仕事は好きでしたが、塾で待っているだけでは変わらないかもしれないと思ったんです。教科書の一文を誠心誠意教えることも大切ですが、もっと大切なことは、幼少期に身につけておかないといけない。それが身についている子どもは、大人のちょっとしたサポートで、自主的にぐんぐん伸びます。そういう子を増やすには塾だけでは足りないかもな、と考えました。

テレビやゲーム、スマホという小さな箱庭の先には、インターネットという広大な世界が広がっていて、子どもには魅力的すぎます。それが悪いわけではないですし、情報活用がこの先の時代には必要です。でも大自然の中にも、気づかないだけで、五感で感じられるたくさんの情報が溢れていますよね。森を見て「何もない」と言う子もいますが、子どもたちには自然の情報をキャッチできるようになってほしいです。便利な箱庭の仮装世界だけでなく、生の体験ができる大自然に身を置き、不自由な環境の中でこそ体験できる最高の自由を、できれば子どもの価値観が形成される前の幼少期のうちに、味わってほしいです。

2024年1月、もりのびは福島県郡山市主催の「第5回こおりやまSDGsアワード」を受賞。地域の「経済」「社会」「環境」という三側面での持続的な発展に大きく寄与するものとして評価されました

これから目指すこと

子どもには、自分で自分の幸せを追える人になってほしいです。夢の実現に向かって突き進むことができる力の土壌を育てたく、以下のような体験ができるコンテンツとして、今後も作りあげていきたいです。

・子ども自身が認められる
親や大人、他の子どもに認められる、褒められる体験をする。自信を持ち、どんどん自己表現できる子になってほしいです。世界はキミに寛容なんだよ!と教えたいです。

・自尊心をもつ
「認められる」の先に獲得できる力だと思っていますが、自分で決めて行動できることで、自分に自信がつくと思います。生き生きと、堂々と人生を歩めるようになってくれたら、きっとその子の人生は幸せだと言えるのではないでしょうか。

・自分で行動できる
やる前に結果を判断するのではなく、まずやってみる、実行してみる、失敗したっていいじゃないか、という気持ちで自ら行動できることが、大切だと考えています。

・自分で決められる
何に興味を持つか、何をやるか、どういう順番でやるか、できないことをどうやったらできるか、どう工夫するか…。これらのことを、遊びを通してたくさん経験することが、将来子どもの自己実現のための力の種になると思っています。

色も模様も自分で決めた、世界に1着しかない草木染めTシャツが完成。はじめは緊張していた子も、たくさん遊ぶうちに自由に場を動き回るように

答えの無い現代社会だからこそ、自分で決められる自由な場をつくっていきたいです。今の子どもたちが大人になる10年後には、世界はもっと変わっています。AIに判断をゆだねる、AIに聞かないと分からない、調べた情報を鵜呑みにする…のではなく、自分で決められる人になってほしいです。

こうした力を持った子どもたちを世に送り出した上で、欲を言えば、その子たちがこのまちに戻ってきて、地域や次の世代の子どもたちを育ててくれたらいいなと思っています。将来の田村市で、今の大人よりもっとすごいことをやってくれたら、地域が生き生きしますよね。地域の持続可能性は、環境だけではなく、人材育成が大切だと考えています。

「自然の中でのびのび子育てをしたい」「自然豊かな地域に移住したい」とお考えの方へのメッセージ

少子化や過疎化は、悪い側面ばかりではないと思うのです。人が少なくなってしまうのは困りますが、一方で、一人ひとりがもっと大切にされるようになるのではないかと思います。人口が減っている田舎では、過密な都会に比べて、一人あたりが使える空間も広いです。「公園」という場所だけを切り出して考えても、田舎の公園では、順番待ちがあったり、子どもが大声で遊べなかったり、ボール遊びができないといったことはありません。グローバル化により、世界中で画一化・スピード化が進んでいますが、田舎はまだまだ時間の流れが穏やかな気がします。

田村市は自然や里山文化、地域のつながりがほどよく残っており、それでいていざという時に便利な施設も近いです。地域のためにいろいろなことをやっている、始めている大人がたくさんいます。のびのびした環境を求めている方にとって、ちょうどいい田舎だと思います!

もりのび

主な開催場所:福島県田村市常葉町山根字殿上160 多目的交流施設「時の輪」
駐車場:あり
開催日:Instagramをご確認ください。
e-mail:morinobi.tamura@gmail.com
※イベントによって会場が変更となる場合があります。
※スカイパレスときわへの直接のお問い合わせはお控えください。


この記事を読んで田村市での生活に興味を持った方、移住を検討している方は、お気軽にたむら移住相談室へご相談ください。

たむら移住相談室

Web:https://tamura-ijyu.jp/
電話:050-5526-4583
メール:contact@tamura-ijyu.jp
※たむら移住相談室は株式会社ジェイアール東日本企画と(一社)Switchが共同で運営しております。

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