トヨタ、ANAなど政策株9銘柄売却 豊田会長の報酬16億円で歴代最高

Maki Shiraki

[東京 25日 ロイター] - トヨタ自動車は、2024年3月期(前期)にANAホールディングスや日本航空など上場企業の政策保有株9銘柄を売却した。豊田章男会長の前期の役員報酬は16億2200万円で、前の期の9億9900万円から6割増えた。同会長の報酬額は同社歴代取締役として最高額となった。

トヨタが25日に提出した有価証券報告書で判明した。トヨタが保有する上場企業の政策株は、20年3月期の65銘柄から40銘柄に減少した。一方、時価総額の残高は株価上昇で1兆7810億円から3兆5087億円に増加した。

前期は東日本旅客鉄道、ハーモニック・ドライブ・システムズ、NOK、日本精工、ニチアス、東邦ガス、太平洋工業も売却した。すべて売った9社を含めた上場企業株の売却額は3259億円(23年3月期は385億円)だった。

<役員報酬、グループ不正で一部減額も>

豊田会長の前期の報酬は、固定部分が2億8900万円、業績に連動する賞与と株式報酬がそれぞれ3億2400万円と10億0900万円だった。昨年4月に就任した佐藤恒治社長の報酬は6億2300万円だった。

前期の報酬の水準設定について、トヨタは日本企業のほか、欧州6カ国の大手企業をベンチマークした。豊田会長は欧州市場の時価総額で上位10%の企業、佐藤社長は上位50%の企業の水準を指標とした。

海外企業との報酬差を小さくすることで国籍を問わず多様な人材を獲得する狙いのほか、トヨタの水準引き上げにより、グループ企業や日本の産業全体にも波及させたい考え。

総務・人事本部本部長の東崇徳氏は、報酬水準を決める際にトヨタの水準を参考にする会社の話を聞くとして、「いろいろな会社の天井になっている部分がある」と指摘した。前期からは役員の経営責任を明確化し、中長期での取り組みを評価する報酬構成・制度にも見直した。従来からの財務的な指標に加え、「安全・品質」「ガバナンス」などの観点による非財務的な面も総合評価した。

東氏は、グループ認証不正の責任として会長と副会長、社長は一律10%減を個人査定に反映したと説明。社長はトヨタの中を守る役として、会長はトヨタだけでなくグループの責任者として、クルマの乗り味を最終決定する「マスタードライバー」、海外要人とのコミュニケーションも含めた対外的な顔という新たな役割も織り込んだ。

トヨタの前期業績は、連結営業利益(国際会計基準)が5兆3529億円となり、日本企業として初めて5兆円台に乗せた。

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