転職中ですが、ハローワークで探しても「月給15万円以下」「年間休日100日以下」の求人しか見当たりません。これって“ブラック”でしょうか? 最低賃金以下になる気がします…

ブラック企業の見分け方は法令に違反しているか・いないか

ハローワークでは主に転職者向けの求人を掲載しており、給与や年間休日などの待遇が求人票に記載されています。どの業界や職種をチェックしたかにもよりますが、「これってブラックでは?」と思える求人が見つかることもあるでしょう。

実はブラック企業の定義はあいまいで、厚生労働省も明確に定義していません。一般的には、(1)労働者に対し極端な長時間労働や低賃金での労働を課す、(2)賃金不払いのサービス残業やパワーハラスメントが横行する、といった特徴をもった企業がブラック企業と判断されることが多いです。

ブラック企業の定義に関しては、個人の考え方によって異なります。ただ、絶対的にブラック企業だといえるのは「法令違反をしている企業」でしょう。法律を守らない企業は従業員を守る・育てる意識が薄いと考えられます。ハローワークで見かけても応募しない方が賢明でしょう。

ここからは、待遇の中でもメインになる「年間休日」「給与」について、ブラック企業と判断できるラインについて見ていきましょう。

年間休日は105日が36協定を除く最低ライン

労働基準法によると、会社は労働者に対して毎週1日以上、もしくは4週間に1回の休みを与える必要があります。一方で「1日8時間、1週間に40時間」という法定労働時間を定めています。

年間休日100日なら、毎週1日の休みと仮定した場合の年間休日(52~53日)を上回ることから、一見すると合法です。

ただし、法定労働時間の観点で考えると違法となる可能性もあります。そもそも、1日8時間、週40時間労働を上限に働くと仮定すると、1年(52週と仮定)当たりでは2080時間、8時間で割ると260日の出勤が限界ということです。

1年は365日ですから、最低でも105日は休むべきということになるでしょう。年間休日が100日で募集をかけている企業が、働く時間を1日当たり8時間未満にしている可能性もありますが、法定労働時間を超えた労働を強いている可能性も考えられます。この場合はブラック企業と呼んでも差し支えないでしょう。

ただし、労使間で「36協定」を結び、週40時間を超える労働について割増賃金を支給するなら違法ではありません。

月給が最低賃金以下になるのは違法のブラック企業である可能性が高い

賃金については、都道府県が定める「最低賃金」を上回っているかが、ブラック企業を見分ける1つのポイントになります。

各都道府県では「最低賃金法」に基づいて最低賃金を決定しており、会社がこの最低賃金を下回る給与設定をしている場合は違法です。使用者と労働者が最低賃金以下で契約していたとしても契約は無効で、労働者は最低賃金との差額を請求することができます。

2023年度の地域別最低賃金額は東京都で1113円、神奈川県で1112円、埼玉県では1028円です。地方では安くなる傾向があり、北海道は960円、沖縄県は896円となっています。

最低賃金の算出に必要なものは「基本給」「職務手当」の2つです。

例えば、基本給が15万円で職務手当が1万円のケースでは、合計した16万円を12倍すると、1年当たりの額は192万円となります。そして、192万円を年間の労働時間数で割れば時給を算定できます。1年間の労働日数が250日で1日当たりの労働時間が8時間なら年間の労働時間は2000時間になり、192万円÷2000時間=960円と計算できます。

この場合、沖縄や北海道で働くなら合法ですが、東京都や神奈川県、埼玉県では最低賃金を下回っているので違法です。

まとめ

ブラック企業に明確な定義はありませんが、最低賃金や労働時間が法律で定められた基準に達していない企業はブラック企業に該当する可能性があります。

ハローワークには年間休日が100日以下の求人や給与が低めの求人もありますが、応募するかは労働基準や最低賃金法を守っているかを調べたうえで慎重に判断しましょう。

出典

厚生労働省 確かめよう労働条件 Q&A 「ブラック企業」ってどんな会社なの?
e-Gov法令検索 労働基準法
東京労働局 Q9.最低賃金に満たない契約の効力は
厚生労働省 2023年度の最低賃金決定額について

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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