高温で急激に完熟が進んだサクランボを買い取りクラフトビール造り 山辺町の生産者が挑戦

去年の高温などの影響で山形県内の今シーズンはサクランボの収量が減少すると見込まれています。こうした中、従来は廃棄されていた、サクランボをビール造りに活用しようと新たな挑戦を始めた山辺町の生産者を取材しました。

「温かくて水分がギュッとなった状態。これはもう完全に出荷できないし、売り物にもならない」

こう話すのは、山辺町で13代続くサクランボ園地を営む沼尻淳さんです。

沼尻農園沼尻淳さん「5月からの暑さで、色づきが早く、実も大きくならず。去年は1トンくらいの収穫量があったが、ことしは3分の1以下くらいの300キロぐらいですね。お客さんの方からも『味はおいしかったけど、小さくない?』と実際に問い合わせがあった。ある意味忌憚のないご意見を非常に頂いている」

今シーズンは周りの園地でも収穫が間に合わずに熟してしまった実が多くみられたといいます。

沼尻農園沼尻淳さん「この現象は続くのかなと思っていて、農家さんの収益自体もかなり落ち込むんじゃないかと思う。その中の一端でもいいから、少しは売上に貢献出来たらなと」

こうした状況を受け、沼尻さんは5年前からサクランボの買い取りを始めました。買い取りの中心は近くの生産者から持ち込まれた、完熟して味は最高なのに廃棄するしかなかった実です。ことしは佐藤錦を1キロ当たり500円で合わせて120キロ分を買い取りました。

沼尻農園沼尻淳さん「山辺町の知り合いの生産者だけでこの量なので、山形県全体で言ったらものすごい量になると思う」

買い取った実は特殊な冷凍庫で保存し、活用方法を試行錯誤してきました。

沼尻農園沼尻淳さん「山辺町の生産者から買い取らせてもらった佐藤錦のみを使って作ったピューレ」

しかし、収益化が見込める商品はこれまで、作ることができませんでした。

沼尻農園沼尻淳さん「ピューレなどはコストが見合わなかった。今回はまるごと使えてクラフトビールにできるということで、チャレンジの第一歩という形で」

ビールの製造はワインなどの果実酒と比べ、製造にかかる期間が短いことがメリットです、実も、軸も、種も全て活用したビールを作る予定です。買い取った佐藤錦の実と、これまで試作していた佐藤錦100%のピューレを活用し、9月上旬の商品化を目指しています。製造は米沢市のクラフトビールメーカーに依頼しました。

沼尻農園沼尻淳さん「農家さんの支援にもなり、食品ロスにもつながる。なおかつ商品化ができていく形の1つの提案ができればいいと思う」

現在、沼尻農園ではクラウドファンディングを実施していて、ビールの仕込み作業は7月下旬から始める予定です。温暖化の影響なのか、廃棄されるサクランボが増えつつあります。課題解決の起爆剤となるのかー。沼尻さんの挑戦は続きます。

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