「目標なくなり悲しい」水泳など9競技が全国中学校体育大会「全中」から除外 生徒は落胆…部員減少の懸念も

全国中学校体育大会、いわゆる「全中」の規模縮小が発表された。2027年度から水泳やハンドボールなど9競技が行われなくなる。全国大会を目指す機会が減るため、中学生からは落胆の声が上がっている。

除外の対象は9競技

中学生スポーツ最大規模の全国大会として1979年から毎年開催されている全国中学校体育大会「全中」。2023年度は陸上やサッカー、柔道、剣道など20競技が実施された。

この「全中」をめぐり全国に動揺が広がっている。

日本中学校体育連盟が2027年度から水泳やハンドボール、体操や新体操など8競技を全中の実施競技から外すことを発表したためだ。2030年度からはスキーも外され、除外の対象となるのは合計9競技に上る。

理由は教員の負担軽減、少子化

「全中」から競技を外す基準は「2022年度に部活動の設置率が20%未満だった競技」としている。理由については「大会運営にかかわる教員の負担を減らす」ことや「少子化への対応」などをあげている。

佐賀市の鍋島中学校水泳部。現在の部員は男子のみの11人(2024年6月時点)。部員は減少傾向だが、以前は全中に出場したこともある。

水泳が競技から除外されることを知った3年生の岩下健琉副キャプテンは、「寂しいというか悲しい。全中には出場したかった。(全中は)中学生の一番の憧れ、目標」と語り、無念の表情を浮かべた。

佐賀県内の水泳部の部活動設置率は20%未満だが、2023年に全中佐賀県予選の水泳競技に出場した生徒は約230人。学校の水泳部には所属せず、クラブチームから出場する生徒も多く、競技人口は決して少なくはない。

中学生の時に全中に出場し、飛込競技で4位の成績を収めた鍋島中学校水泳部の顧問を務める野口基勝さんは、「自分も中学生のころはあの舞台で戦ってきたこともあったので、やはり寂しいという気持ちが大きい。誰もが目指したい場所でもあるので」と語る。競技から除外されて落胆しているのは生徒だけではない。

子供たちはもちろん、指導者にとっても大きな目標となっていた「全中」からの除外。野口さんは、その代わりとなる大会が必要と指摘する。

鍋島中 水泳部顧問・野口基勝さん:
水泳連盟が動いて、中体連(全中)に代わるようなスポーツ大会を開いていただけたら、自分たちのモチベーション、部活動を担当している先生も、生徒たちもそこを目指して頑張ろうとなりますので、今後そういう大会ができることに期待したい

「目標なくなる」…生徒は落胆

「全中」への出場経験がなく、「目指す場所」として日々練習に励んでいた生徒たちの落胆は大きい。

佐賀清和中学校ハンドボール部の3年生、関清斗キャプテンは、「母から帰宅した時に教えてもらって驚きました。全国大会に行くことを目標としていたので、その機会が減ってしまうのは寂しいなと思いました」と落胆の色を隠せない。

「部員が減ってしまうのが心配」

佐賀県内で活動しているハンドボール部は3校のみ。「全中」からの除外が競技人口や部員の減少につながらないか、不安を感じている生徒もいる。

佐賀清和中学校3年・関清斗キャプテン:
自分たちの代では勝ったら全中に行けるけど、自分たちの下の人たちは行けないので、ハンドボール部に入ってくる人が減ってしまうのではないか心配です

教員の負担減るが…思いは複雑

一方、「全中」の運営にかかわる教員の負担軽減に期待する声もある。大会は関東や九州、中国など全国9つのブロックが持ち回りで開催していて、教員は担当する部活動の指導に加えて大会も運営しなければならないからだ。

教員の負担軽減も目的とした競技の縮小。その一方で、長年指導を続けてきた教員の思いは複雑だ。

「夢の舞台」奪わない改革を

部活動を指導する教員の中には、「全中がなくなっても部活動の練習量を減らす訳にはいかないので、これからも指導者の負担はほとんど変わらないのではないか」という声もある。

文部科学省は、部活動による指導を地域クラブの指導に移す「地域移行」を進めている。
教員の負担軽減も重要な課題だが、子供たちの「夢の舞台」を奪わない改革を求める声は多い。

(サガテレビ)

© FNNプライムオンライン