「勝利の女神は細部に宿る」ソフトバンクホークス小久保監督 交流戦本塁打ゼロの山川穂高選手は「よく我慢した」【福岡発】

プロ野球、交流戦の序盤わずか4試合目の対広島カープ戦でチームの主力、柳田悠岐選手(35)が右半腱様筋損傷のため戦線を離脱というアクシデントに見舞われた福岡ソフトバンクホークス。再開したリーグ戦へ、新たな「小久保の兵法」はあるのか?

「柳町はスタメンで使う選手」

クリンアップの一角を欠く緊急事態となったが、1軍に昇格した若手が大活躍。12勝6敗という好成績で交流戦を終えたことについて小久保監督は、柳町達選手(27)の名前を挙げた。「柳町は、(交流戦の)ちょっと前に1軍に上げていたんですけど、スタメンとして準備させようという当初の開幕からの考えが、そこで生きたかなと思いました」と話す。

かねてから「柳町はスタメンで使う選手」と語っていた小久保監督。柳町選手は6月の月間打率が3割9分1厘。結果的に柳田選手離脱の穴を埋めるかたちとなっている。

柳町選手を1軍に上げたタイミングについて、小久保監督は「ファーム(2軍)で打っているし、彼自身のモチベーションを考えたときにも、このぐらいのタイミングでちょっと声をかけないと」と思ったという。

また、柳田選手が大きなけがをした後、ライトの守備に入って、しっかり活躍してくれたことが、交流戦で貯金が6できた大きな要因だったと語った。

ほかの若手選手も負けない活躍を見せた。「慶応義塾幼稚舎からの慶應ボーイなのでデビューは『東京がいいだろう』とジャイアンツ戦にしたんですけれど、ちょっとプレッシャーかけすぎたかな」と小久保監督が嬉しそうに話すのは、交流戦初戦の読売ジャイアンツ戦で初昇格、即スタメン起用のルーキー、廣瀨隆太選手(23)だ。
交流戦後もプロ入り初ホームランを放つなど期待に応える活躍を見せている。

小久保監督は、「廣瀨の場合は松山2軍監督とも話したなかで、僕が一番、確認したかったのは守備。松山監督の『守備は大丈夫です』って言葉があったので、それを信頼して彼を1軍に呼んだ。そのときに『もう十分守れるな』と思ったし、僕は2年目、セカンドのポジションでしたけれど、僕よりもはるかに上手い。もう全然。我慢して使うどころか普通にセカンドを任せていいかな。初ホームランも出たしね。初ヒットまでがちょっと時間がかかり過ぎて、1軍のピッチャーに対して『どう対応できるのか』というところを、いまやっている途中だと思うんですけれども」とルーキーを分析している。

大きな活躍見せた笹川吉康選手

そして4年目で1軍デビューとなった笹川吉康選手(22)については「笹川を優先というよりも川村選手を『もうちょっと2軍で打席に立たしたいな(調整させたい)』というのがあって(※川村友斗選手(24)は6月10日に1軍登録抹消)、川村の替わりで守備固め、代走ができれば、それは(笹川)吉康でも十分。守備固めでも代走でも行けるだろうというので、そこの入れ替えだったんです」と小久保監督は話すが、笹川選手は守備だけではなく、打つ方でも期待に応えた。

交流戦の阪神タイガース戦、初スタメンで出場すると、プロ7打席目で早くもプロ初ホームラン。持ち味の長打を披露した。2軍監督時代から見守ってきた小久保監督も笑顔がこぼれる。

しかし笹川選手はいったん2軍へ。小久保監督は、その理由について「もう行きますと。きょう(6月19日)も鳴尾浜(対阪神タイガース2軍戦)で4安打3打点。しっかり結果を残しますけども…、でも2軍です。3試合スタメンで2試合を“お立ち台”(ヒーローインタビュー)で、『そんな選手を2軍に落とすのか』と言われそうなんですけど、(川村選手を1軍に上げるので)落とします(笑)」と話した。

「一番、恐ろしいのは隙」

交流戦で強さを見せたホークスだが、交流戦の期間中、2回のミーティングが行われている。1回目は柳田選手が離脱したとき。そして2回目は、6月8日の横浜ベイスターズ戦の後だ。

この試合の5回表、先頭の周東佑京選手(28)はピッチャーゴロ。アウトのタイミングだったが、一塁手が落球し一転、セーフに。しかしアウトだと思い込んでフェアゾーンからベンチに戻ろうとしていた周東選手は、タッチされてアウトとなった。

インプレー中にも関わらず、気を抜いたプレーに小久保監督は「佑京が、ああいう走塁でアウトになったのは、隙。一番、恐ろしいのは隙だという話をした。やはり『勝利の女神は細部に宿る』というなかで、あってはいけないプレーだという話を名指しでしましたね。そういうところは今後も大事にしていきます」と気を引き締める。

チームが好調のなか、打線で気になるのが4番を打つ山川穂高選手(32)の状態だ。交流戦の打率は2割3厘、3打点。ホームランはゼロだった。練習日のこの日も、全体練習開始前、バッターボックスに立ち、本来のスイングをイメージしながらの練習に打ち込む姿が見られた。

小久保監督は「きょう、初めて(山川選手と)話をしました。1カ月近くホームランが出ないと悪球に手を出して、強引さが目立つこともあるんですけど、(山川選手は)投げやりなスイングがなかったんですよ。で、それを話したら『過去、若いときには強引にホームランを打ちに行って、結局、そのときホームランが出たとしても、その後の方がもっと不調が長引いた』と。『調子を崩してしまう』と。だからその経験があるので『ホームランにできない球を無理に打ちにいかない。交流戦はそうやっていました』と(山川が)言うから、『あー、よく我慢したな』っていう話をして、ホームランの打ち損ないがヒットというのは、現役時代の自分と同じタイプなので、ヒットが出ても納得できないんですよね」と山川選手の判断をたたえた。

また、山川選手の後ろ(5番打者)にいる近藤健介選手(30)の存在も大きいと話す。「近藤につないだ時点で、チームが勝てる確率が上がるので(山川選手は)集中力もあったと思う。柳田が離脱した後、近藤が3番というのもありましたが、それは山川にとっては、後ろに近藤がいる並びを変えなかったことが、彼が復調するきっかけになるのではないかと感じました。きょう話して」とホームラン打者を冷静に分析した。

最後に監督自身の心身の疲労について聞くと「このぐらいチーム状態が良くて、スタートを切れている状態で中盤まで来て、『体がおかしいです』って…、『なにぜいたくなこと言っているんだ』と言われてしまいます、全然、健康ですよ」と力強く答えた。

プロ野球ペナントレースは、全試合の半分を消化した。まだまだ残り半分、過酷な戦いが続く。

(テレビ西日本)

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