「夜が青く染まった」 後半AT8分での劇的ゴラッソ&ベスト16入り決定にイタリア歓喜! 一方でその“歩み”には批判が集中…「真の王者はドンナルンマだけ」との指摘も

現地時間6月24日に行なわれたEURO2024グループステージ最終節で、イタリア代表はクロアチア代表相手に後半アディショナルタイム(AT)での同点ゴールで1-1の引き分けに持ち込み、グループBの2位で決勝トーナメント進出を決めている。

55分にルカ・モドリッチの大会最年長得点記録(38歳289日)となるゴールでリードを許したイタリアは、世界3位チームの牙城を崩せないまま終盤を迎えて窮地に追い込まれたが、AT8分、攻撃参加したリッカルド・カラフィオーリがドリブルで敵陣を突き進んで左に流すと、フリーのマッティア・ザッカーニが見事にコントロールされたダイレクトシュートをゴール右隅に突き刺し、劇的な形で勝点1を奪取。スイスが待つ次ラウンドに駒を進めた。

81分からの交代出場で大仕事を果たしたラツィオのFWは試合後、「カラフィオーリが本当に良いパスを出してくれたので、何の迷いもなかった。(ゴールの後は)多くのことが頭に浮かんだ。言葉では表わせない感情だった」とスポーツ専門チャンネル『Sky Sports』に語っている。
そのシュートが、2006年ワールドカップ準決勝のドイツ戦で開催国の息の根を止めたアレッサンドロ・デル・ピエロのカウンターからのゴールと似ている、と指摘された彼は、「デル・ピエロは僕の子どもの頃のアイドルで、彼のポスターを部屋に貼っていた」と明かしたが、英国の日刊紙『The Guardian』も「涙するイタリアのファンも、この類似点に注目するだろう」と報じ、この2つのゴールが奇しくも同じドイツで生まれたこともあり、「歴史は繰り返す」と綴った。

一方で、シュートの形より、終了間際(終盤)の同点ゴールという状況面での類似点を挙げる現地メディアも多くある。ここでは1994年アメリカW杯ナイジェリア戦(2-1)のロベルト・バッジョ(88分)のゴール、1998年フランスW杯チリ戦(1-1)の同じくバッジョのゴール(84分)、2002年日韓W杯メキシコ戦(1-1)のデル・ピエロ(85分)のゴールが取り上げられており、イタリアのサッカー専門サイト『calciodangolo.com』は「ザッカーニも偉大な選手の仲間入りを果たした」と殊勲の29歳を称賛している。

この劇的な結末を、イタリアの大手スポーツ紙『Gazzetta dello Sport』は「全てを賭けた必死の攻撃でもゴールを奪えず、もう終わったと思われた矢先のAT8分、カラフィオーリの突進とザッカーニの圧巻のゴールが、イタリアをベスト16に導いた。期待を超える結果に、夜が青く染まった」と伝え、国外でも前出の『The Guardian』紙が以下のように振り返った。「イタリアは98分まで、敵陣ではほとんど何もできずにいた。しかし、それまで待った甲斐があった。ようやく上手くチームがまとまった時、ディフェンディングチャンピオンは、カラフィオーリの素晴らしいスラロームとザッカーニの圧巻のゴールによって次ラウンド進出を果たした」

ルチャーノ・スパレッティ監督は、「確かに今夜は、時々少し弱気になり、必ずしもベストなサッカーができたわけではなかったが、今夜の試合で見せたプレーからすれば、我々はグループ突破に値した」と自チームをポジティブに評するとともに、前節スペイン戦(0-1)での完敗劇などによって多くの批判が寄せられていることにも言及し、「誰もが我々を大会から脱落させようとしている」と不満を露にしている。

それでも、まさに薄氷を踏むような展開で、辛うじて最初のハードルをクリアしたアッズーリに対するネガティブな見方が消えることはなく、イタリアの放送局のスポーツ部門『SPORT MEDIASET』は、「グループステージのアッズーリで評価できるのは、アルバニア戦で開始直後に失点した後の反撃と、クロアチア戦での最後の10分間の攻撃。個人では怪物のようなGKジャンルイジ・ドンナルンマ、そしてますます成長を遂げているカラフィオーリぐらいだ」と指摘する。
イタリアのスポーツ専門サイト『ViSPORT』も、モドリッチのPKを止めたり、失点の際にも一度は素晴らしい反応を見せたりと、鉄壁の守護神ぶりを発揮したドンナルンマを「唯一の真の王者」と呼んで、チームとしての不甲斐なさを糾弾。「ザッカーニのゴールで批判は一旦収まったが、スパレッティのアッズーリには依然として疑念と不安が残る。彼らは、ゲームを創造するのに多くの困難を抱えている」と指摘し、SNSでの自国ファンの批判を紹介し、「土壇場でのベスト16進出も、喜びは控えめだ」と記した。

3年前の大会では、ロベルト・マンチーニ監督の下でグループステージを3戦全勝・無失点と難なくクリアし、そのプレースタイルがライバル国のメディアからも絶賛されながら頂点に立ったアッズーリだが、苦しみながらノックアウトステージに辿り着いた今回のチームは、「ノーマークの大会でのイタリアは好成績を残す」というジンクスの最新例を生み出すことができるのか。ここからの戦いぶりが興味深い。

構成●THE DIGEST編集部

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