犯行に結び付く直接的証拠のない『異例の長期裁判』 「執念の捜査」か「無実」か 状況証拠重ねる検察と「前提崩れる」とする弁護側

大阪府羽曳野市で起きた殺人事件の裁判員裁判。

検察はカメラ映像などから「犯人は住宅街の住民」と断定していたが、裁判では、ある「死角」が明らかになった。25日の中間論告で、検察は「これまでの立証に影響を与えるものではない」と主張した。

■容疑者逮捕まで4年、裁判まで6年かかった事件

6年前、羽曳野市の路上で刃物で一突きされて死亡した会社員の平山喬司さん(当時64歳)。

平山さんを殺害した罪に問われている山本孝被告(48)が逮捕されたのは事件から4年後。裁判までには6年がかかった。

平山さんの長男は、被害者参加制度を使って裁判に参加している。

-Q.被害者参加制度で裁判に参加した理由
平山さんの長男:真実を見届けないとだめだからです。これだけ長い間待たされて、父親の無念を晴らすじゃないけれど、僕がちゃんと守ってあげないとあかんと思うから。

■犯行に結び付く直接的な証拠がない中、状況証拠を積み重ねる検察

山本被告と殺害された平山さんとの間にはある接点があった。

山本被告は、事件の1年ほど前から隣に住んでいた女性と植木鉢の置き方などを巡るトラブルがあり、女性と親しかった平山さんが仲介に入ったこともあったのだ。

凶器など犯行に結び付く直接的な証拠がない中、検察は犯行時間帯のドライブレコーダーに映った人物の身体的特徴や平山さんの知人とのトラブルなど、状況証拠を積み重ねて山本被告の犯行と断定。

一方、山本被告は一貫して無罪を主張していて、初公判でも「私は犯人ではありません」と起訴内容を否認した。

難解な裁判は16人の証人が出廷するなど長期にわたり、犯人の行動や動機などに分けて検察・弁護側双方が意見を述べる中間的な「論告・弁論」が4回行われる異例の展開となっている。

そして25日、論告・弁論が行われたのは、“密室的”な住宅街で起きた住人による犯行かどうか。

検察:犯人は現場住宅街の住人である。

弁護側:外部からの進入を否定できず、検察立証の前提が崩れる。

平山さんは事件当日、山本被告の隣に住む知人女性を家の前で降ろした後、近くの駐車場に車を停め、その後、路上で犯人に襲われた。

検察は、用水路やフェンスに囲まれた犯行現場に行くには3つの侵入口があり、付近のカメラ映像には、侵入者も犯行後に出て行った犯人らしき人物も映っていなかったことから「犯人は住宅街の住人」と判断している。

これに対し、弁護側は検察が主張する3つの侵入口以外に、当時カメラに写らない、人が通ることのできるあぜ道などが2本あったと反論。 さらに、カメラに映るとされる道でも端を歩くと「死角」になることが明らかになったのだ。

25日の論告で、検察は「カメラに映らない通路は夜間は真っ暗で歩くのは不自然」と弁護側の主張を否定。 さらに、犯人は平山さんが車から下りた直後に犯行に及んでいて、犯行現場周辺のカメラに犯人とみられる人物が映り込む際の方向や時間から、このような監視と犯行が可能だったのは被告のみと指摘した。

弁護側は「外部犯人の可能性について捜査が不十分」とし、改めて無罪を主張した。

山本被告は、事件が起きた時間帯近くに外出していて、当初、妻や警察に対し「散歩をしていた」と話していたが、その後、「本当は平山さんがタバコのポイ捨てをしないよう自宅の駐車場から見張っていた」と供述を一転させている。

山本被告は24日の被告人質問で、妻に対して嘘をついた理由について「妻は隣とのトラブルなんか気にしきゃいいんじゃないかという考えで、私は小さなことにイライラして、カッコ悪いと思った」と説明。

警察の任意の取り調べの際は、「本当のこと(見張りをしていたこと)を言ったほうが、犯人にされると思いうそをついた」と話した。

次回の中間論告では、犯人の身体的特徴などが審理される。判決は9月27日に言い渡される予定だ。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月25日放送)

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