高1自殺訴訟 遺族と鹿児島県が和解 学校対応を問題視、鹿児島地裁が異例の和解勧告書「再発防止策の継続と不断の検証が県の責務」

 鹿児島県立高校1年だった拓海さん=当時(15)=が2014年8月に自殺した問題で、学校が適切な対応を怠ったとして遺族が県に損害賠償を求めた鹿児島地裁の訴訟は25日、和解が成立した。県が自殺を防げなかったことを遺族に謝罪し、遺族は請求を放棄することで合意。同地裁は3月、和解勧告書を示し、自殺直前に拓海さんが欠席した際などの学校の対応を問題視し、県に再発防止を求めていた。

 和解勧告書は条項を除き10ページで、勧告理由などが記されている。遺族側の弁護人によると、裁判所から同様の文書が示されるのは極めて珍しい。

 訴状などによると、拓海さんが14年7月末~8月に計6日間欠席したことが母親に知らされず、拓海さんがスリッパを隠されたと考え担任らと捜したことも、他の教職員と情報共有されなかった。遺族側は「欠席の連絡があれば、自死を食い止められた」「スリッパ隠しの件で組織的に適切な対応をしていれば、学校生活を継続できた」と主張していた。

 勧告書で地裁は、遺族の主張に触れ「対応がなされていれば拓海さんの死を食い止めることができていたと考えられる」と指摘。「大切にすべきなのは、今回のような筆舌に尽くしがたい事態を二度と発生させないこと」とし、実効的な再発防止策の継続と不断の検証が県の責務とした。

 県教育委員会の地頭所恵教育長は「今後もいじめ防止対策をより一層推進し、再発防止に全力で取り組んでいく」とコメントした。

 拓海さんの自殺を巡っては、県教委の第三者委員会が17年、「いじめがあったとは断定できない」と報告。遺族の要望を受け、県知事部局が設置した再調査委は一転、19年にいじめの影響を認めた。遺族は21年、県に対し約4500万円の損害賠償を求めて提訴した。

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