夏の快眠に就寝前の「氷水出し茎茶」ストレス解消&認知症予防にも

6月に入り、暑さがぐっと増してきた今日このごろ。いつにも増して、夜なかなか寝つけない、という悩みを抱える人も増えているのではないだろうか。そんな悩みに、グルタミン酸とエチルアミンという物質が結合してできる、アミノ酸の一種の「テアニン」という成分が有効なのだという。

「テアニンは、煎茶や緑茶といったお茶の中に多く含まれる、アミノ酸です。リラックス効果のある成分としても注目されています。テアニンを摂取すると、気持ちを穏やかにしてくれるα波が増加するという研究結果があります。そのため、就寝前にテアニンを摂取すると、眠りを誘う効果が期待できます」

そう話すのは、睡眠障害・研究のエキスパートでもある、杏林大学名誉教授で医学博士の古賀良彦さん。

お茶の中にはさまざまなアミノ酸が含まれており、そのなかの半分以上は、テアニンが占めている。

「一般的に、高価な茶葉であるほどテアニンを多く含んでおり、なかでも、特に多く含んでいるとされるのが、高級な茶葉として知られている玉露です」(古賀さん)

しかしながら、玉露などはその価格の高さから手が出しにくく、日常的に気軽に飲むお茶として、適しているとは言えない。そこで、日常的に気軽に飲めるお茶としてオススメしたいのが、茎茶だ。相場価格を玉露・煎茶・ほうじ茶などと比べてみても、安価なのが一目瞭然。手が届きやすい価格帯だ。

■安価なだけでない茎茶の魅力は「豊富なテアニン量」

ほかのお茶と比較しても、お手ごろ価格で買える茎茶。別名「棒茶」「白折」「雁ヶ音」とも呼ばれている。世間一般にはあまりなじみがなく、よく知られていない茶種かもしれない。茎茶とは果たして、いったいどのようなお茶なのだろうか。京都府宇治田原町にある老舗お茶屋「木谷製茶場」の六代目当主、木谷喜六さんに話を伺った。

「製茶のとき、見た目にも白っぽく見えてしまう、茶葉の茎に当たる部分は除かれます。その除かれる茎の部分をお茶として加工したものが茎茶です。煎茶や玉露として販売される茶葉を『本茶』と呼ぶのに対し、茎茶は『出物』と呼ばれており、価格が手ごろなはねものとして通な人が日常使いするようなお茶です」

お茶のなかでも、本来使用しない部分でつくられたはねものを活用するため、手ごろな価格なのだ。しかし、この茎茶のよさは安価な点だけではない。なんと、茎部分のテアニンの含有率は、葉の部分よりも圧倒的に多いのだ。お茶に含まれるアミノ酸は、新芽が成長するにしたがって減少していくため、一番茶に最も多く含まれている。さらに、アミノ酸であるテアニンは、一番茶の芽や葉、茎といった部位のなかで茎の部分に最も多いとのこと。

「茎茶は低い水温でも溶けだすアミノ酸を豊富に含んでいるので、時間をかけて抽出すれば水出しでもしっかりと味が出ます。また、茎茶は渋味成分であるタンニンの含有量が少なく、アミノ酸のうま味と特有のすっきりとした風味を楽しめます」(木谷さん)

テアニンをはじめとするアミノ酸はうま味成分でもあるため、多く含む茎茶の味わいは格別なのだ。

■氷水出し茎茶でストレスを軽減して認知症予防に

安価でおいしく、リラックス効果もある茎茶は、日常的にぜひ取り入れたいところ。けれども、いくら安眠を誘ってくれるテアニンが豊富とはいえ、気になるのはテアニンの効果と相反する、安眠を妨げる作用を持つカフェインの存在。お茶にもカフェインが含まれていることはよく知られているが、茎茶を就寝前に飲むことに問題はないのか。

「カフェインは、テアニンと反して覚醒作用のある成分で、睡眠を妨げるため、寝る前に取ることはよくありません。しかし、カフェインは特に玉露といった高価なお茶に多いのですが、茎部分にはほとんど含まれません。夜、食後に飲むには、カフェインをほとんど含まない茎茶が最適なんです」(古賀さん、以下同)

その茎茶のテアニンをより多く摂取するために効果的なのが「氷水出し」で抽出する方法だ。茶葉を入れた中にお湯を注ぐのではなく、氷を入れてその上から水を注ぎ、なるべく低い水温で抽出する方法だ。冷蔵庫に入れておけば、約1時間でできあがる手軽さもうれしい。

「熱を加えると、テアニンだけでなく、お茶に含まれるさまざまな成分が失われやすくなることがわかっています。そのため、テアニンをはじめ、お茶のすぐれた成分の効果をより発揮させやすいのが、熱を加えるお湯出しではない、水出しや氷水出しです」

また、カフェインは温度が上がると、その分抽出量が増えることがわかっている。氷水を使用してお茶の抽出温度を下げることで、テアニンの含有量が増えるだけでなく、カフェインの量も抑えることができて一石二鳥なのだ。氷水出しでつくったテアニンを豊富に含む茎茶は、お湯出しをしたものよりも、味や香りのよさが増すだけでなく、より大きなリラックス効果を得られる。

「テアニンを摂取してリラックスすることは、ストレスの軽減に効果があります。また、継続的に茎茶を飲むことで、ストレスが要因のひとつでもある、認知症の予防につながる期待が持てると言えます。じっくりと氷水出しで抽出したお茶を、日々の生活のなかに積極的に取り入れてもらいたいですね」

リラックスして就寝することでも、認知症の要因となるストレスが軽減。だから、氷水出しをした茎茶を就寝前に飲むことは、認知症予防の一助としても効果的だ。テアニンを豊富に含んだ茎茶をおいしく飲む習慣をつけて、日々の快眠と認知症予防に役立てよう。

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