木村拓哉『Believe』は中途半端 錦戸亮・山下智久ら旧ジャニーズ系俳優出演の春ドラマ3本のリアル評価

木村拓哉・山下智久・錦戸亮(C)ピンズバNEWS

あらかた最終回を迎えている春ドラマ。ここ数年演じてきたヒーロー的な役柄とは異なる人物像に挑んだ木村拓哉(51)に加え、山下智久(39)の5年ぶりの民放ドラマ主演や、錦戸亮(39)の『不適切にもほどがある!』(TBS系)に続く地上波ドラマ本格復帰など、旧ジャニーズ系の俳優の出演が話題になった。彼らの評価をあらためて確認してみたい。

まずは木村拓哉。主演した連続ドラマ『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)は、橋づくりに情熱を燃やす大手ゼネコン「帝和建設」の土木設計部長・狩山陸(木村)が、「龍神大橋」建設現場の崩落事件の罪をかぶって服役するも、事件の真相を明らかにするために脱獄を決意するヒューマンエンタメだった。

陸の妻・玲子に天海祐希(56)、下請け業者の社長・坂東に北大路欣也(81)、弁護士・秋澤に斎藤工(42)、刑事・黒木に竹内涼真(31)など、とにかく豪華なキャスト陣が目を引いた本作。しかも、それぞれ俳優が演じるキャラの個性が強く、主役の木村がかすむ場面もたびたびあった。

それもあってか、今回の木村はいつものキムタク劇場は控えめで、それぞれを引き立てる立場になっていた。自分が前に出るだけでなく、あえて引いて物語全体を引き立てていて、新しい木村の主人公像を目指していたようだ。

だが、それでは物足りなかったのか、刑務所での巨漢の囚人との乱闘や、体をクルッと回転させて華麗にフェンスを越えた“狩山式フェンス越え”など、キムタク劇場をちょこちょこ挟んでいて、ドラマ全体のバランスから見ると違和感が。ベテラン俳優としての渋みを身につけるには、まだ時間がかかりそうだ。

■急成長を見せた山下智久

続いて、山下智久。連続ドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)は、気象災害によって脅かされる人命を守るべく、命がけで救助に立ち向かうSDM(特別災害対策本部)メンバーの奮闘物語。山下は、SDM気象班チーフを兼任する気象研究官・晴原柑九朗(はるはら・かんくろう)を演じた。

民放は久しぶりだが、山下は2022年、24年に放送された、NHKの連続ドラマ『正直不動産』シリーズの主人公・永瀬財地役が好評で、以前より演技に幅が出てきた。以前はボソボソしゃべりの寡黙なイケメン役ばかりだったが、柔らかさ、ユーモアも感じられるように。海外での活動も含め、経験を積んだことで役者として急成長しているようだ。

また、6月15日放送の冠番組『山下智久の超人限界』(TBS系)では、小手伸也(50)とともにバラエティの初MCを担当するなど、役者以外の仕事もこなしてみせた。さらなる成長が見込める山下には、今後も期待できそうだ。

最後は、赤楚衛二(30)主演の『Re:リベンジ-欲望の果てに-』(フジテレビ系)に、メインで出演した錦戸亮。本作は日本屈指の巨大病院「天堂記念病院」を舞台に、“野心”と“復讐心”が入り乱れるリベンジサスペンス。錦戸は、高度なオペスキルを買われて赴任し、主人公・天堂海斗(赤楚)の悪事を暴こうとする、心臓血管外科医・大友郁弥を演じた。

■錦戸亮は唯一無二の存在に

錦戸にとって大友医師は、久しぶりのメイン級の配役。赤楚とは真逆の抑えた演技が多かったが、それでも感情がしっかり伝わってきて、作中の圧倒的な存在感はさすが。赤楚演じる闇落ちした身勝手な主人公よりも、大友医師が視聴者から支持されていたのは、皮肉な結果になってしまった。

もともと妖しい色気が錦戸の魅力で、宮藤官九郎・大石静脚本の配信ドラマ『離婚しようよ』(Netflix)では、主人公の妻(仲里依紗/34)を、だだ漏れの色気で不倫にハマらせる役。『リベンジ』では謎を秘めた大友がハマっていた。役柄は今のところ限られるが、錦戸ならではの個性的な演技で、役柄の幅をもっともっと広げてほしい。

故・ジャニー喜多川氏の問題を受け、各テレビ局のさまざまな忖度が取り払われ、旧ジャニーズ系俳優も実力だけで評価されるようになっている。そんな中、演技派3人の今後の活躍に注目したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

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