「攻めのリハビリ」を実践するために“いい医者連携”が必要なのはなぜか【正解のリハビリ、最善の介護】

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

【正解のリハビリ、最善の介護】#34

「攻めのリハビリ医療」を進めるには、リハビリ医が患者さんの全身を管理することが欠かせません。それぞれの患者さんに対し、現在の症状を生じさせている病態を把握したうえ、回復期病院に入院する理由となった原疾患はもちろん、全身のどこかにほかの症状が現れた場合でも、的確な判断と対処ができなければ、適切なリハビリを行えないからです。

とりわけ、高齢者は“病気のデパート”ですから、どんな症状に対しても、まずはリハビリ主治医が診察して治療対応することが必要です。しかし、回復期リハビリ病院では集中治療や外科手術は行えません。となると、そうした治療対応ができないような病態が起こった時はどうすればいいでしょうか。

大学病院や総合病院のリハビリ科であれば、他科での受診を依頼することになるでしょう。しかし、日本全国にたくさんある回復期リハビリ単科の病院では、他科受診ができません。

当施設の常勤医師の専門医資格は、脳神経外科、脳卒中科、認知症科、リハビリテーション科、救命救急科、外科、呼吸器内科、総合内科です。非常勤医師は整形外科、循環器内科、呼吸器外科、脳卒中科と外科ですので、困ることはあまりありません。しかし、一般的にリハビリ単科の病院では集中治療と外科手術はできません。そのため、そうした治療体制が整っているほかの医療機関で診てもらうことが必要で、日頃から“いい医者連携”が必須になるのです。

■術後2週間以内に再入院させる努力をしてもらっている

内科系の治療は大学病院や総合病院にお任せすることで、大きく困ることはありません。しかし外科手術に関しては、術後の改善度や廃用症候群の発生率を考え、あうんの呼吸で迅速に洗練された手術と術後管理を行って、できれば1週間、長くても2週間以内で再入院させる努力をしてもらえる外科医や病院と連携させていただいています。これは治療の後で攻めのリハビリにつなぐために不可欠な判断だと考えています。

手術を受けるために転院をお願いするケースには、脳疾患、心臓疾患、脊椎疾患、肺疾患、消化器疾患、褥瘡、胃瘻造設、がん治療などがあります。参考までに、当施設の“いい医者連携”の一部を紹介します。

脳疾患は、時間を争う急性期脳卒中治療では「TMGあさか医療センター・脳神経外科」の中本英俊先生と久保田有一先生(現東京女子医科大学足立医療センター・脳神経外科)、「東京都健康長寿医療センター・脳神経外科」の高梨成彦先生と「順天堂大学練馬病院・脳神経外科」の徳川城治先生にお願いしています。

時間に余裕がある脳腫瘍や脳血管の手術では、「東京医科大学病院・脳神経外科」の河野道宏先生や「東京女子医科大学・脳神経外科」の川俣貴一先生、脳腫瘍のガンマナイフ治療が必要な時は「東京女子医科大学・脳神経外科」の林基弘先生、機能的脳外科手術や水頭症シャント術は「TMGあさか医療センター・脳神経外科」の中本英俊先生と久保田有一先生、脳血管内治療は「聖マリアンナ医科大学・脳血管内治療科」の植田敏浩先生にお任せしています。

心臓疾患では、「川崎幸病院・心臓外科」の高梨秀一郎先生と「千葉西総合病院・心臓血管外科」の中村喜次先生、脊椎疾患は、「品川志匠会病院」と「練馬志匠会病院」の脊椎外科を運営する大田快児先生に依頼しています。

肺疾患は「順天堂大学練馬病院・呼吸器外科」の阪野孝充先生、消化器疾患は「東京都立豊島病院・消化器外科」の今井健一郎先生、胃瘻造設は「練馬総合病院・消化器外科」の栗原直人先生、褥瘡外科は「東京女子医科大学・形成外科」の櫻井裕之先生にお願いしています。また、がん治療関係は、「帝京大学病院・臨床腫瘍学」の渡邊清高先生に相談させていただいています。

すべての術者と病院にとてもスムーズな治療連携をしていただき、大変感謝しています。

迅速な急性期治療の後、在宅生活と社会復帰をイメージした回復期医療連携を行い、新しい人生を歩んでもらう人間回復医療や、アドバンスケアプランニングを念頭に置いた緩和ケアを実施するためには、日頃からの多角的なチーム医療が重要と考えています。

(酒向正春/ねりま健育会病院院長)

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