ハースF1とロシア企業『ウラルカリ』のスポンサー契約をめぐる裁判が終了も、双方が勝利を主張。チームには一部返金命令

 ハースF1チームと元スポンサーの『ウラルカリ』社との間で起きている紛争について、スイスの仲裁裁判所が裁定を下した。

 両者間の法的紛争は、2022年にロシアがウクライナに侵攻した後、ハースがウラルカリ社とのスポンサー契約を終了する決定をしたことに端を発している。この裁定により、1300万ドル(約20億7600万円)のF1スポンサー契約をめぐる論争と、ニキータ・マゼピンがハースF1チームを去った後にウラルカリ社が行った補償請求に終止符が打たれる。

 この対立は2022年3月のプレシーズンテスト中に、ハースがマゼピンの解雇を発表したときに始まった。マゼピンはその前のシーズンから、ミック・シューマッハーとともにハースからF1に参戦していたが、マゼピンがハースから参戦できたのは、彼の父親であるドミトリー・マゼピンが所有する化学肥料の大手企業ウラルカリ社を通じて、惜しみないスポンサーシップが与えられていたおかげだ。

2021年F1第7戦フランスGP ニキータ・マゼピン(ハース)&ドミトリー・マゼピン

 ハースがマゼピン家との関係を断ち切った後、ウラルカリ社は2022年のF1シーズンに先立ってチームに支払ったスポンサー料1300万ドル(約20億7600万円)の全額返金を求めた。同社は、法的措置を取ったことについて次のように述べて正当化した。

「適用される法的手続きに沿って自社の利益を守るために行動している。我々は司法手続きを開始し、損害賠償を請求し、ウラルカリ社が2022年のF1シーズンに向けて行った多額の支払いについて返済を求める権利を有する」

 当時、ウラルカリ社は「2022年シーズンのスポンサーシップ資金のほとんど」をハースに提供したと主張し、「ハースが2022年シーズンの開幕戦前にスポンサー契約を終了したことを考えると、チームは同年のシーズンにおいてウラルカリに対する義務を果たせていない」と考えていた。

 ハースは反訴し、ウラルカリ社の主張を強く否定してこの問題を法廷に持ち込んだ。裁定が下された現在、両陣営が勝利を主張しているように見える。マゼピン陣営は声明で、「法廷はハースが契約に違反したと認定し、チームにウラルカリ社への補償金を支払う義務を負わせた。法廷はまた、当社に対するチームの反訴をすべて却下した」と述べている。

ニキータ・マゼピン(ハース)

 しかし、日曜日にハースは裁定について独自の解釈を発表した。

「仲裁委員会は、ハースにはウラルカリ社とのスポンサー契約を終了する『正当な理由』があったと裁定し、ウラルカリの契約違反の主張を否定した」

「ハースは、ロシア軍がウクライナに侵攻した直後の2022年3月4日に、ウラルカリ社との契約を終了した。仲裁委員会は、ウラルカリ社とロシアとの関係を含め、当事者の関係性におけるすべての事実を鑑み、ハースは『そのような状況下でスポンサーシップ契約を継続することは期待できなかった』と裁定を下した。仲裁裁判所は、ハースにはスポンサーシップ契約を終了する正当な理由があったと認定した」

「委員会は、ウクライナ侵攻直後に他の複数のスポーツ団体がロシア企業との関係を断ち切ったため、『すぐにもハースが、ロシアのネームスポンサーとの関係を継続する最後の非ロシア系スポーツチームになる』というリスクがあったことを強調した」

「したがって委員会は、ハースが契約解除を通知した日にスポンサーシップが事実上終了したと裁定し、ハースが契約解除前の期間のスポンサーシップ料金の一部を保持し、残額をウラルカリ社に返金するよう命じた」

 仲裁裁判所の判決により、ハースは2022年3月4日までの期間をカバーするスポンサー料の一部を保持することができる。ただし、チームは総額1300万ドル(約20億7600万円)のうち残りのスポンサー料をウラルカリ社に返金する必要がある。なお、ハースにはウラルカリ社に補償金を支払う義務はない。

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