ジャンボタニシ食害拡大 コメ農家「対策に限界」 茨城・鹿行地域の水田

水田を動き回るジャンボタニシ=鹿嶋市谷原

茨城県鹿行地域の水田で、稲の苗を食べるスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害が続いている。今年は昨年より被害が多いとみられ、田植えをやり直した農家も。専用薬剤による対処が主流だが、成体にしか効果がなく、農家からは「次々と生まれてきりがない」「個人の対策では限界」と悲鳴が上がる。

ジャンボタニシは南米原産の淡水巻き貝で、1980年代に食用目的で輸入された。繁殖力が高く、農林水産省によると、2022年は関東以西の35府県で生息が確認されている。この時季、格好の餌となるのが植えたばかりの稲の苗やレンコンだ。

鹿行地域で被害が目立つのは同県神栖市。同市高浜のコメ農家、阿部一也さん(65)は5月初めごろ、約1週間前に植えたばかりの稲の苗がジャンボタニシに食べ尽くされたという。駆除後に「10日間ぐらいかけて泣く泣く植え直した」ものの、生き残ったジャンボタニシは今も水田内を動き回り、稲の苗や周辺の水路には、ピンク色の卵が多数。阿部さんは「まだこんなにいる。がっかり」と肩を落とす。

ジャンボタニシによる被害は年々拡大しているとみられ、JAなめがたしおさいによると、ジャンボタニシ駆除剤の注文は昨年より増加。昨年まで被害がなかった人からも問い合わせがあるという。

同様の被害は、近隣の同県鹿嶋市や同県行方市でも確認されている。

鹿嶋市谷原の小堀国彦さん(78)は、約10年前からジャンボタニシの食害に苦しむ。水深の深い場所が被害に遭いやすく「植え直しても再び食べられる」。薬剤を散布しても卵に効果はなく、成体や幼体は用水路などから侵入。「卵を駆除しても1週間後に同じ場所に生み付けられている。個人の対策では限界があり、行政と土地改良区、農家が一丸となって取り組まないと」と訴えた。

県農業総合センター(同県笠間市)によると、ジャンボタニシの被害は県南地域などにも広がっているとみられるが、市町村単位の調査は実施しておらず生息域の実態は不明という。

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