新人警察官たちが訓練に励む警察学校ですが、入校式や卒業式の様子をニュースでお伝えすることはありますが、普段どんな訓練が行われているかはあまり知られていません。
そこで今回、実際に警察学校の訓練を体験し、その厳しさや初任科生の志を取材してきました。
教官「返事をせんか」
初任科生「はい」
厳しい指導に・・厳しい訓練。
新人の警察官が日々、鍛錬を重ねる宮崎市の宮崎県警察学校。普段、どのような訓練や授業が行われているのでしょうか。
午前6時半すぎ
初任科生「おはようございます」
「長友幸生と申します。皆さまの日々一生懸命訓練されている姿を伝えられたらなと思っております。よろしくお願いいたします」
今年4月に県警察学校に入校した初任科生、48人。
短期生は6か月、長期生は10か月、寮生活を送りながら警察官としての基本を身に着けます。
今回、私も制服と装備品を貸してもらいました。
長友「腰回りが手錠と警棒がついている分、ずっしりと重いですね」
1限目の授業は「点検」。
姿勢や服装、それに装備品に乱れがないかチェックします。
私も指導を受けます。
教官「まわれ右」
長友「はい」
教官「声が小さい」
長友「はい」
次に、手錠や警棒などを取り出す訓練。
なかなかスピードについていけません。
長友「この場の雰囲気ももすごい張りつめているので、非常に体、全身に力が入って。ただこれをやることで、非常に一体感が生まれていくような気がします」
宮崎県警察学校・河野友尋担任教官「みんなで動きを揃えるということも重点にいれておりますので、その中で、集団行動というのが生まれて仲間意識もどんどん強くなっていきますので、これは学校生活においてとても重要な位置づけであります」
続いては「教練」と言われる号令に合わせての行進。
この「点検」と「教練」を繰り返し行います。
なぜ警察官を志望?
午前の授業を終え昼食の時間。
みんなで「いただきます」
ここで、初任科生たちになぜ警察官を志望したのか聞いてみました。
長野大和巡査(18)「小学生の時に、母の車に乗っていた際に、当て逃げにあって、その時に対応してくださった警察官の方がとても優しく親切に対応してくれて、それがきっかけでこんなかっこいい優しい警察官になりたいなっていうものがあって」
また、この女性は、警察学校に入校する前は5年間、病院で医療事務をしていたそうです。
上田沙織巡査(26)「(高校生のとき)もともとなりたいという気持ちがあったのですが、その時は挑戦せずに諦めてしまいまして、働いて行く中で一度も挑戦しないでというのがやはり心残りになってしまうっていうのがあったので」
35歳、最年長の男性は、理学療法士からの転職です。
萱原慎也巡査(35)「今5歳の息子が1人いるんですけども、結婚して家庭を持ってから、ニュースでDVだったりとか虐待の悲しい事件がたくさんあって、そういうのが気になるようになって、自分にも何かできることがないかなって考え始めて」
昼食後も「巡回」や「交通取締り」の訓練を行い、この日の授業は終了。
そして、翌日、初任科生が恐れる厳しい訓練が待っていました。
それが「警備実施訓練」
暴動などが起きた際に現場で対応するための訓練です。
長友「ベストなんですが、鉄のプレートが入っています。ちょっと重さがありますね」
出動服はヘルメットや盾などを合わせておよそ10キロ。
まずは、盾をさまざまな位置で構える訓練です。
教官「長友遅い。すぐ動け、すぐ、いいか」
長友「了解」
教官「声が小さい、わかったか」
長友「了解」
長友「重いです。盾を持って立ってるだけでもつらいです」
続いては、盾を持ったままのランニング。
教官「走れ~!落とすな~!」
15分ほど走ってようやく休憩です。
初任科 長期総代・山下統世巡査「きついですね。きついです。(現場では)これを着て作業していかないといけないので、この環境に慣れるように訓練頑張っていきたいと思います」
理学療法士から転職・萱原慎也巡査(35)「とてもつらいです。同期生のみんなも頑張っているので、体力をつけて県民の皆さまに貢献できるように体力づくりを精一杯頑張っていきたいと思います」
私はもう走れません
初任科生「がんばるぞ!」「よーし!」
さらに、休憩後は坂道でのランニングが待っていました。
私は体力に自信がありましたが、ついに限界を迎えました。
長友「私はもう走れません。皆さんすごいです。日々、訓練している方たちなので、体力がやっぱり違いますね。すごいです」
訓練は、この後、1時間ほど続きました。
河野友尋 担当教官「やはり信頼されるには強い力ですね、犯人に負けない強い力、そして何か困っている方がいれば、すぐに手を差し伸べる優しい心っていうのも成長させてあげたいなと思っています」
それぞれの志を胸に警察学校に入校した初任科生たち。
一人前の警察官を目指して、厳しい訓練の日々が続きます。
初任科 長期総代・山下統世巡査「今、大変、濃い毎日が充実した生活を送れております。犯罪を犯した人には厳しく。困ってる人には手を差し伸べられる優しい警察官になっていきたいと考えております」
上田沙織巡査(26)「地域の住民の方から信頼されて、自分がやらないとという気持ちを持って、誇りと使命感を持った警察官になりたいと思います」
取材を振り返って
大きな声を出すというのは徹底して言われたことでした。
現場では人を誘導させたり、犯人を制圧する際には必ず大きな声を出すことが必要だということで、そこは徹底しろと言われました。
この警察官を志願する人は年々減っていて、宮崎県警の受験倍率は、去年は、3.8倍と2018年の8.3倍から年々減少しています。
7月17日から受験の申し込みの受け付けが始まるんですが、宮崎県警察本部では、近年、勤務時間や勤務場所など、ワークライフバランスに配慮した様々な取り組みも進め、受験者数の増加を図りたいとしています。
もちろん私が経験したような厳しい訓練もあるんですが、今回の体験を通して
新人警察官たちの志の高さというものを感じた取材となりました。