毎日残業は当たり前、役員に過剰に気を使う…外から見るとヤバい「我が社の常識」に要注意【転職のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事に忙殺されて、毎日家と会社の往復だけで終わってしまう。あるいは、1つの組織の中で長く働き続けている。こういった環境にいると、外から見ればおかしな自分の会社の習慣を「どの会社でも同じ常識」だと思い込み、その異常さに気づくことができないケースがあるといいます。本記事では、木村勝氏による著書『会社を辞めたいと思った時に読む セカンドキャリアの見つけ方』(ビジネス教育出版社)から一部抜粋し、そんな思い込みに対する注意喚起と、転職を考える際に必要な行動について解説します。

今、勤務している会社の常識は実は非常識かも?

会社に入社すると仕事に没頭して自分の会社以外の世界が見えなくなります。特に多忙な職場にいればいるほど社外の友人や外部の人とも会う機会も少なくなり、他に広い世界のあることを知らずに、自分のまわりの狭い範囲だけでものを考える習慣が身についてしまいます。

筆者も30代は職場の中堅どころとして工場の人事課で朝から夜遅くまで忙しく働いておりました。その当時は、夜23時過ぎから地上波で「プロ野球ニュース」という番組が放送されていたのですが、「プロ野球ニュース」が始まる時間前に家に帰っていると「今日は早いな」という感覚を持っていました。

30年近く前の話ですが、今考えるとやはり異常な感覚です。こうした生活から東京にある業種の団体事務局に出向することになり、基本的に定時で仕事が終わる生活になりました。

夕方18時の中央線に東京駅から乗ると帰宅のサラリーマンで超満員!、ホワイトカラーサラリーマンは馬車馬のように夜遅くまで働いているのが当たり前と思っていましたが、実は定時で仕事を終え家に帰る働き方のほうが〝大多数〟でかつ〝正常〟であることを実感した経験でした。

皆さんの中にも毎日仕事に忙殺され外界からの情報を実質シャットダウンされた生活を送っている方もいらっしゃるかもしれません。「会っているのは会社の人だけで、毎日忙しくて社外の友人にも会えない。土日は疲れ切って1日中寝ている」といった生活を送られている方は要注意です。当たり前と思っていることが、実は世間では非常識になっていることもよくあることです。

「会社の呪縛」から意識的に離脱する

組織の中で長らく働いていると別の意味で「組織の呪縛」にもとらわれます。出向時代の経験ですが、その業種団体には、加盟会員会社から私と同じような立場で派遣された出向者が複数おり、会社の枠を超えて産業横断的課題に取り組んでいました。団体では、複数の各種委員会が設置され、定期的に会員会社の役員が参加します。

自分の所属する会社の役員が自分の担当委員会に参加となると大変です。社内では、役員というとやはり〝雲上人〟です。社内にいたときには、話をする場合でも秘書を通じてアポイントを取り、説明する際には事前に課長、部長のブリーフィングというプロセスを経てようやく説明となります。

団体に出向しているときも気持ちは同じです。やはり対応に粗相がないように気を使いますし、緊張もします。ところがこれが他社の役員となるとまったく利害関係はありませんので、言葉は悪いですが、〝ただのおじさん〟です。緊張もしませんし、自分の評価・昇格にも何ら権限を有していませんので、気を遣う必要もありません。

こうした対応は他社の出向者も同様でした。〝雲上人〟である役員が来社される際には、入り口で受け入れ応対し、事前説明などもしていました。こうした姿を見て(実は自分もそのように対応しているのですが)少々こっけいな感じがしたのも事実です。

やはり、長年会社に勤めていると組織の序列に縛られて同じ人でも見え方が変わってくるのです。自宅の近所にも毎朝社用車が迎えにきているお宅があります。おそらくどこかの会社の役員の方だと思います。ご近所さんですので私は何も感じませんが、同じ会社の人間だったら、朝から気を遣うところでしょう。

サラリーマンは自然にこうした組織の論理・序列に従って会社生活を送っています。周囲から見ると「そんなパワハラ上司は異常。普通じゃないよ」「今どきそんな昭和な職場なんてないよ」と思うことがあっても本人は組織の呪縛にとらわれ、その異常さに気づくことができません。ある意味〝マインドコントロール〟されています。

こうした〝マインドコントロール〟から抜けるためには、やはり意識的に外の世界に触れることが重要です。兼業・副業を始めてみる、外部の勉強会に参加してみる等、できることはあります。「会社を辞めたい」という思いをきっかけに外界とのコンタクトを意識した行動もセカンドキャリアに向けた準備として極めて重要です。

木村 勝
行政書士
リスタートサポート木村勝事務所 代表

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