「えっ、年金って減るの?」月収41万円・59歳のサラリーマン「年金月16万円」のはずが…65歳で愕然とする「年金減額」の悲劇

(※写真はイメージです/PIXTA)

「30社面接に行ってみたけど、すべて落とされてしまった……。定年退職を目前に内定がもらえないなんてこたえるな。結局、このまま再雇用制度を使って今の職場でやっていくのが一番、自分のスキルを活かせるんじゃ……?」ということで今の職場にとどまることになったオダショウタさん(50歳、既婚者)。だがその後「社内資料の完全デジタル化」という全くの新しい仕事が若手ではなく、自分たちシニア社員に降ってきて……。以下事例を詳しく見ていきましょう。

月収41万円・59歳のサラリーマン「年金月16万円」のはずが…65歳で愕然とする「年金減額」の悲劇

登場人物

ゆめこさん……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。全文太字部分

ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。

オダショウタ(以下、主)……今回の主人公。総合商社の事務職として勤める会社員。59歳既婚者。

主:俺の名前はオダ ショウタ。大学卒業後に中堅の総合商社の事務職として勤務、25歳で大学時代からの彼女と結婚した。27歳で双子の子どもが生まれてからは、「家族を食わしていかなきゃならない」という思いが芽生え、仕事に打ち込んできた。

勤め先は中堅といっても商社だから、他業界の同じ規模の会社よりは年収がよかったりする。おかげさまでこの年になるまでおしなべて平穏な暮らしを送れてきた。

現在は双子の子どもたちも独立し、月41万円の給与で妻と二人暮らしを送る、ニッポンの一般的なおじさんだ。そんな俺ももう59歳。おっさんというより若い子からしたらじいさんだな、年金も気になるお年頃だ。今日はちょうどねんきん定期便が届いてたな、チェックしなければ。どれどれ。

ワ:ねんきん定期便ってなーに?

ねんきん定期便は毎年、誕生月になると送られてくるものです。50歳以下の人は「これまでの加入実績に応じた年金額」が記されています。50歳以上の人は「老齢年金の種類と見込額」が記されています。年齢によって記載内容が異なるので注意しましょう。ねんきん定期便は老後を見据えた資産の準備計画にとても役立ちますよ。

ワ:59歳のショウタさんに届くねんきん定期便は年金の種類と見込額が載ってるから、自分の年金をくわしく知れて助かるね!

主:そうそう、このねんきん定期便を確認すれば自分がだいたい年金をいくらくらいもらえるかわかるんだ。

えーっと、どれどれ……俺の年金は月に16万~17万円くらいになるのか。妻の年金と合わせれば大体22万~23万円くらいになるから、これなら節約すれば十分年金だけでも暮らしていけるな! ほっ。

ワ:でも最近は年金だけで暮らすのは大変ってよく聞くけど、ショウタさん本当に大丈夫?

主:おいおい、見くびってもらっちゃ困るな。なあに、俺だって年金だけを当てにして何も準備してないってわけじゃないさ! これまでコツコツ貯金もしてきたし、退職金だってある。もし今後マイホームの建て替えや、医療費など大きな出費があったとしても、月の生活費のほとんどを年金でまかなえば十分やっていけるさ!

安心するのはまだ早いのではないでしょうか。ねんきん定期便と実際に受け取る年金額にギャップが生じる場合があるのをご存じでしょうか?

主:はて? ギャップ?? おいおい、どういうことだ!?

ねんきん定期便はあくまでも予想にすぎません。人によってはねんきん定期便に記載されている額よりも、実際の年金額が減ってしまうこともあるのです。

ワ:え~! そんな落とし穴があるの?

年金が減額される“5つ”の理由

年金が減額される理由は主に5つあります。

たとえば「保険料免除制度」を利用した場合です。国民年金保険料は月額17,000円ほどですが、収入が減ったり途絶えたりして保険料の納付が難しい場合には、この「保険料免除制度」が申請できます。

「免除制度」の他にも、「納付猶予制度」、「学生納付特例制度」があります。この申請が承認されれば保険料の一部から全額が免除になる制度です。

ワ:へ~もしもお仕事が無くなったりしてもそういう制度を使えばいいんだね!

他にもこうした理由で年金が減額されることがあります。こちらをご覧ください。

①国民年金保険料に「未納期間」がある

②「年金の繰上げ受給」をしている

③「在職老齢年金」を受け取っている

また、ねんきん定期便をもらっていたときと、実際に受給が始まるタイミングでは日本経済の様相が変わっていることは十分に有り得ます。物価が上昇すれば、想定通りの年金額がもらえたとしても、実質的にお金の価値は目減りします。気をつけなければなりませんね。

主:こんなに年金が下がる理由があるのか……。こりゃねんきん定期便に書かれてる見込み額をばか正直に鵜呑みにしているとゆくゆくまずいことになるな。

助言を受けた俺は改めて定年後の生活について考え、60歳の定年退職後も働くことに決めた。同級生の友だちにもいろいろ聞いてみたが、現在の勤め先の[定年後再雇用制度」を使うパターンが多いらしい。

だが、結構大変だという声も耳にする。3歳年上の俺の元上司は、再雇用制度で役職から離れ平社員に戻った。役職手当がなくなり給料は下がるが、キャリアがあるからなんだかんだ仕事が増えてしまうらしい。さらに昨日までの部下が今日は上司になるため、お互いコミュニケーションに難しさを感じたり、久しぶりの現場仕事に手間取ったり、若手社員との意思疎通ができなかったり、何かと思い通りにいかないことが多いようだ。

かといって、60歳を迎えてからの再就職となれば清掃員や警備員、データ入力のような単純作業がほとんどだって聞く。この年で裁量の少ない仕事に向き合うのはつらい。今まで身に着けてきたスキルやキャリアを生かす仕事を探すとするか…。

(数ヵ月後)

「30社面接に行ってみたけど、すべて落とされてしまった……。定年退職を目前に内定がもらえないなんて、こたえるな。結局、このまま再雇用制度を使って今の職場でやっていくのが一番、自分のスキルを活かせるんじゃ……?」

ワ:もしかしてショウタさん、就職活動では初めて挫折を味わってるのかな。

59歳にして初めて就職活動で挫折したショウタさん

主:その通りだ。俺は中堅大学卒だが、普通にやってれば特に苦労もなく、内定がポンポンもらえる時代だった。特に俺は就活を始めて早々に第一志望から内定をもらったから、人生で面接に落ちた記憶がない!

まさかこの年になって初めて、内定がもらえず苦しむなんて思わなかったよ。本当に自分の存在価値が否定されたように感じるんだな……。なんだかこれまでの人生まで否定されてしまった気分だよ。はは、ははは...いやいや、卑屈になっちゃいかんな。

ワ:ショウタさんすっかりしょげちゃってるね。大丈夫かなぁ…?

主:ということで俺は今の職場にとどまることになった。そんななか……

「何? 社内資料の完全デジタル化?」

59歳文系サラリーマン、社内資料の完全デジタル化に巻き込まれる

社内の古い資料なども含めて、より調べやすくするために完全デジタルに移行するということになった。

最初は若い子たちが頑張っているようだったんだが暗礁に乗り上げて、俺も手伝うことになった。というのも、うちの会社は商社だから顧客データや商品などの資料が膨大なうえ、商品によっては番号で管理されているものが多いから、どの番号がどの商品かも把握している必要があった。

おまけにうちはパソコンをかなり早い時代から取り入れてたんだが、それがよりによってパンチカードの時代だったんだ。ワープロが一般化するまではパンチカードが注文書として長いこと使われていたから、当時の注文書を読める社員がほとんどいなかった。

若い世代はこんな穴の開いた紙きれなんて見るのも初めてって奴ばかりで頭を抱えるのも無理もない。

ワ:おおー、穴がたくさん空いてる紙が読めるなんてショウタさんすごいね!

主:「えーっとこの商品は、ああ懐かしいな! これうちで青汁を初めて取り扱ったときのもんだよ。当時の商品はまずくってそこから色々改良されたのがこっちのカードの商品だな」

俺は入社当時にパンチカードの読み方とその商品について頭に叩き込むよう先輩に言われていた。いちいちマニュアルを見て調べるんじゃ時間がかかるから、ひとつひとつ覚えとけと言われて、毎日通勤や昼飯の時まで暗記してたんだ。

今にして思えば非効率にもほどがあるだろって話だとは思うんだけど、まさか入社してすぐに身に着けたスキルが今頃になって役立つとは思わなかったよ。俺はやれるだけのことをやり、社内資料の完全デジタル化プロジェクトは軌道に乗った。

(数ヵ月後)

パンチカード事件を機にショウタさんの会社員人生に新たな展開が

主:古い商品の資料に興味を持った企画部から復刻商品を出すという話が持ち上がった! 昭和レトロブームってやつに着目したらしい。パッケージを発売当初のデザインにしたり、昔の味をそのまま再現したりした商品を限定発売するという企画だ。

当時を知っている世代には懐かしく、知らない世代には新鮮に感じるということで昨今盛り上がりを見せているそうだ。昭和に発売された往年の人気商品を改めて再評価する企画にしようと盛り上がって、なんと俺はそのメインメンバーに選ばれることになった。

若手の多い企画部からすればパンチカードを読む俺から、昭和の雰囲気をひしひしと感じたのだろう。久しぶりにへとへとになるまでかけずり回り、調整を重ねた。「おいおい、こんなに働くなんて聞いてないぞ…」企画会議を重ね念入りに準備をした結果、うちが昭和から販売しているクッキー缶の初期デザイン復刻企画は大成功!

ワ:ショウタさんやったね! クッキー缶ワイも食べたい!

主:社内で評価されるのももちろん嬉しいが、それ以上にお客さんからの反応に驚かされた。往年のお客さんからは「懐かしい、お金もちの友だちの家で食べるのが楽しみだった」「お客様用に買ってあるのを勝手に食べて親からこっぴどく怒られた思い出が」という声。若いお客さんからは「映える」「フィルムカメラのフィルターで撮るとエモい」などの声が続々届き、大反響だった。

ああ……そうだったな、俺、昔はこういうお客さんの声に励まされて残業も休日出勤も頑張れたんだった! 役職を離れ、社内での立場が変わるということに不安を感じていたけど、俺は本来こういう現場仕事の方が向いていたのかもしれない。管理職に就いてからは部下のマネージメントをしたり、指示出しをしたりが主だったがな。

一度、いろんな仕事を経験して、本当に自分に向いてるものが見えてくるっていうのもあるのかもしれないな。俺はこれからもお客さんの声にこたえるために頑張っていけそうだ!

ワ:ショウタさん、なんだか若返ったみたいだね~!

若い頃に身に着けたスキルが思わぬ形でショウタさんの背中を押してくれましたね。自分が本当にやりたい仕事に気づけたことでショウタさんの人生は大きく動き始めました。

ワ:これからも応援してるよ!

リスクを抑える!定年退職後にできるインフレ対策とは

物価が高騰すれば年金は目減りすると知りショックを受けたショウタさん。老後に景況の影響を受けないために早めに対策しておくことが大切です。

ここからは、定年退職後にできるインフレ対策について3つご紹介します。

一つ目はリスク分散を考えた投資です。退職後は収入が減り、現役時代の生活水準が維持できなくなるケースが往々にしてあります。退職後も安定的な収入が得られるよう、投資を行う際はリスク分散を考慮することが重要です。

ワ:でもワイ、投資ってなんだか怖いな…。

そう思う方も少なくないですよね。ただ、インフレが進むと物価が上昇するので、預金や低リスクの金融資産では多くのリターンが見込めません。お金の価値が下がっているにもかかわらず、物価が上がり続けたら生活は困窮する一方です。年齢を重ねれば重ねるほど働いて賃金を得るこ難易度は上がりますので賃金以外に収入が得られるようにするのはとても重要です。

ワ:ふむふむ、ワイ頑張ってみる! リスク分散した投資ってどうやればいいの?

投資には、株式、債券、不動産投資、ほかにも投資信託など、さまざまな種類が存在します。どれか一つに投資するのではなく、株式と債権、株式と投資信託、株式と債権と投資信託など、ご自身のお好きなものを選ぶといいでしょう。

ただし、ご自身のリスク許容度と資産状況を考慮したうえで投資することが大切ですよ。

ワ:リスク許容度も資産状況も人それぞれだもんね。自分の懐に合わせて投資するのが重要なんだね!

2つ目は、賃金が得られる仕事の確保です。昨今は60歳の定年退職後も仕事をするシニアが増加しています。

ワ:年齢を重ねて働くって大変だよね。

そうですね。体調面で断念せざるを得ない場合も往々にしてあります。

ですが、インフレに備えるのであれば60歳で定年退職をしてから年金が受け取れる原則年齢の65歳になるまでの5年間は、働ける方は働いた方が安心です。社会とつながりをもつことで生活にメリハリが生まれ、かえってストレスを溜まりにくくなる方もいらっしゃいます。やりがいや、人の役に立つ喜びを感じられるなど、賃金を受け取る以外のメリットもあるので、前向きに検討してみてもいいのではないでしょうか。

老後の仕事は職場の再雇用制度を活用する方法もありますが、趣味やキャリアを活かして在宅の仕事を模索してみるのもひとつの手です。ハンドメイドが得意な方ならフリマアプリで売ったり、パソコンスキルがある方ならSNSを活用してみたり、色んな方法がありますよ。

ワ:好きなことや得意なことを活かした仕事って素敵だね!

三つ目は、固定費の削減です。固定費を見直すことで無駄な出費を抑え、月々数万円も貯蓄の積み立てができたということも珍しくありません。

ワ:確かに…ワイも無駄な固定費がたくさんある気がする。

たとえば、格安SIMに変更したり、電気会社やガス会社を見直したり、できることはいろいろあります。子どもと一緒に暮らしていたときと同じ家に、ご夫婦2人で住んでいる世帯なかには、思い切って引っ越しをする方もいらっしゃいます。

ワ:すごい! 大きな決断だね!

特に賃貸住宅で暮らしている方は身軽に動くことができるので、固定費の削減がしやすいのではないでしょうか。また、定番ではありますが家計簿をつけてみたり、自炊を増やして食費を抑えたり、省エネの家電に買い替えたりするのも簡単でチャレンジしやすいですよ。ご自身に合った方法をぜひ試してみてください。

①リスク分散した投資

②賃金が得られる仕事の確保

③固定費の削減

以上の3つを検討しましょう。

まとめ

というわけで、今回は「まさかこんなに減るなんて……年金受給額が減ってしまう理由と対処方法」というテーマでお送りしてまいりました。できることから対策して、豊かな老後を過ごせるようにしましょう。

<ゆめこさんの部屋>

ワ:ワイいまね、あしゃドラのあましゃんにハマってるの。あましゃんにでてくる北三陸のウニ美味しそうなの。ワイ食べたい!

それはかなわぬ夢ですね。ウニは塩分が多いから残念ながらワンちゃんは食べられません。

ワ:ガックシ…。じゃあじゃあ今度の土用の丑の日に、うなぎ食べてもい~い?

残念。うなぎも高カロリーにつき、ワンコは避けたほうが無難です。

ワ:ガックシ…。ちぇっ、ウシさんはうなぎ食べられていいな~。

ちょっとあんた、ウシはうなぎを食べないわよ。草食動物につき、牛は草を食べます。

ワ:えっ、じゃあじゃあ、牛さんは朝食にミルクは飲まないの?

牛は牛乳は作りますが、牛乳は飲みません。ウシさんにそんなこと言ったら「草生える」と一蹴されるわよ

ワ:なんと! そう思うと人間と暮らす座敷犬って食生活が豊かなんだね。ワイ、ワンコでよかった!

【余裕のはずが!?】月収41万円・50歳のサラリーマン「年金月16万円」のはずが…65歳で愕然とする「年金減額」の悲劇【老後の生活】

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