均衡は崩れ…

 秋田県の県紙「秋田魁新(さきがけ)報」電子版のページを開くと、最上段に注目記事の項目一覧がある。その中には「新着」「特集・連載」などと並んで「クマ」の文字が。もちろんクマ関連の記事のまとめコーナーだ。
 本文の閲覧は会員限定だが、見出しを読むだけでも「クマ被害者に見舞金を検討」「小中生に鈴を貸与」など、目撃情報以外の記事も並び緊迫感が伝わってくる。青森県の「東奥日報」ウェブ版にもクマ関連項目があり、同じく一日に何度か更新される日がある。
 連日クマが近所をうろつき、家の中にまで入ってくるとは、想像を絶する恐怖。環境省のまとめでは、2023年度は全国で219人が被害に遭い、6人が命を落とした。今年度も4月だけですでに657件の出没情報が寄せられ、人身被害が連日のように発生している。
 秋田魁新報電子版では今年の元日付記事をビジュアル化した特集も公開される。この10年間の地方創生の取り組みを検証する連載の導入部で、見出しは「人は減り、そしてクマが増え」。県内の人口減少地域とクマの出没地点が重なることを示し、クマ問題は地域の衰退と無関係ではないと訴える。
 山と共に生きてきた里の力が弱まり、動物と人間の暮らしの均衡がついに崩れたとの仮説。各地の被害も同様の背景を抱えているならば、駆除や捕獲の数を増やすだけで対処できるのだろうか。クマをシカやサル、イノシシに置き換えると、本県にも通じる話だ。

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