永作博美、湊かなえ作品の朗読に初挑戦 “静”の演技に苦戦「人生経験みたいなものまですべて使った」

“静”の演技に苦戦したことを明かした永作博美(C)ORICON NewS inc.

俳優の永作博美が25日、都内で行われた『Audible記者発表会』に参加し、作家の湊かなえ氏とトークセッションを行った。

Amazonのオーディオブックおよび音声コンテンツ制作&配信サービス「Audible」では、4月25日から湊氏の短編小説『サファイア』を配信中。朗読を永作が務めた。本作は2012年に刊行された短編小説集で、表題作のほか「真珠」「ルビー」「ダイヤモンド」「猫目石」「ムーンストーン」「ガーネット」と、宝石をモチーフとした全7篇のストーリーで構成されている。

湊氏は当初「本くらい自分で読めばいいのに…」とオーディオブックに消極的で、自身の作品を音声コンテンツ化するにあたり、「できれば作品の世界をこう深く表現してくださる方がいい。私の作品の映像化でご縁をいただいた方に呼んでもらえたら」という要望のもと、同作収録の『ムーンストーン』がテレビドラマ化された際に主演を務めた永作を指名した。

『ムーンストーン』での永作の演技については「本当に体当たりで挑まれていて感動した」と言い、「そんな永作さんにほかの作品を読んでもらえたら、自分が書いた話だけれど、また違う物語の側面が見えたり、深まっていくんじゃないかなと思って、読んでいただきたいなとお願いさせてもらいました」とオファーの経緯を伝えた。

経緯を初めて聞いたという永作は、「そういう経緯があったんですね」と驚きながら、「お話をいただいてうれしいなと思っておりましたが、湊さんからそう仰っていただけていたのは今初めて知ったので、きょうは来てよかった(笑)」と笑顔を見せた。

『ムーンストーン』に関しては「もちろん難しいなと思ってやらせていただきました」と振り返り、湊作品について「まさに体当たりというようなやり方でなければ表現できないなと、役者的には思う作品が多い。ただ、体当たりをしたところでそこに届くのかっていう疑問をずっと抱きながら演じる作品ばかり」と所感を語る。

そして今回の朗読については、「湊さんの作品は、言葉の繊細さとシンプルさをもってダイナミックな心情の展開をしなければいけない。そういったものは、人間である自分たちが体を使ってもなかなか表現するのが難しいのに、それを座ったまま本を読むという静の状態でできるものなのか…と」と不安もあったそう。しかし「今までやったことがないことでしたし、どこまでやれるんだろうかという点で興味を持ち、ぜひやってみたいと思いました」と快諾した。

収録時は「読むことで呼ばれたわけだから、“読む”という方向に意識を強く向けるべきなんだろうと思っていたんですが、それだけで収められるものではななかった」と言い、「もう私が役者としてできること、持っている知識、人生経験みたいなものまですべて使ってやらせていただいた」と力を込め、自身の同世代の女性役から男性、動物など多彩なキャラクターを演じ分けたことも明かす。そして演じる上では「作品を傷つけないよう、意図と違う風になってしまわないように、違和感を覚えずに聞き進められる」という点に重きを置いたと伝えた。

完成版を聞いた湊氏は「今までAudibleというものに対して勘違いをしていたんだなと思いました。テレビドラマ化、映画化、そしてAudible化と言えるくらい、確立した物語の表現方法になっている」と言い、「物語を思い返したり、本を読み返したりするときに、ナレーターの方の声や口調、会話の間がよみがえってくる」と音声コンテンツ化のメリットを分析し、「生活自体が豊かになるものだと思う」と称えた。

最後に永作も「物語というものは本来、自分の好きなように読み進められるのが気持ち良いんだと思うんですが、Audibleは勝手に聞き進んでいくという体験ができる。私はAudibleを初めて知ったときに、自分の子どもに絵本を読み聞かせていたことを思い出したんです」と言い、「子どもたちはそうやって、言葉を聞いて自分の頭の中で物語の世界を想像して旅していく。大人にもそういうコンテンツがあってもいいんだなって深く思いました」としみじみ語った。

© オリコンNewS株式会社