「修学旅行受け入れたら赤字に」京都のホテルや旅館、想定外の物価高に悲鳴

観光事業者らの歓迎を受ける修学旅行生たち。物価高は宿泊施設の経営にも重くのしかかっている(5月8日、京都市下京区・京都駅)

 修学旅行を受け入れている旅館やホテルに物価高が重くのしかかっている。修学旅行生1人当たりの単価は慣例で2~3年前に決まり、旅行会社を通じて契約が済んでいるため、直近の物価変動を宿泊料金に反映できない仕組みになっているためだ。京都市内の旅館の1人当たり宿泊料金は1施設平均で約2千円の赤字といい、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた経営に追い打ちをかけている。

 ■人件費・光熱費など大幅上昇

 日本修学旅行協会(東京)などによると、修学旅行は客室や新幹線などの交通機関を大規模に確保する必要があるため、各校が旅行会社を通じて2~3年前に契約している。だが、近年の物価高で人件費や光熱費、食材・飲料の仕入れ代などが大幅に上昇し、現在は契約時の価格と実態が合わなくなっているという。

 京都府旅館ホテル生活衛生同業組合の調査では、京都市内で修学旅行生を受け入れている旅館47軒の1人当たり宿泊料金(1泊2食付き)は9223円。同組合によると、収支を維持するには約2千円足りないという。市観光協会がまとめた昨年の市内主要ホテルの平均客室単価は1万8199円で、修学旅行と一般客とで大きな価格差が生じている。

 ■簡単に価格転嫁できない 

 「企業努力で経費を抑えているが、宿泊料金は上げられず、収益はどんどん厳しくなっている」。旅館など3軒を経営する佐野家(下京区)専務の佐野誠治さん(46)は実情を明かす。自治体ごとに定められた旅費の上限があるうえ、「宿泊価格を上げれば受注の確率は下がるので、簡単に価格転嫁はできない」と頭を抱える。

 少子化も逆風だ。旅館は1校で貸し切るケースが大半だが、児童生徒数の減少で全体の収益も減少傾向にある。さらに、新型コロナ禍の余波で少人数での部屋割りを希望する学校が増加し、「1施設当たりの受け入れ人数が減り、売り上げが減少している。少子化で今後どうなるのか…」(佐野さん)との不安の声も出ている。

 

 中京区の旅館こうろは昨年、収支不足を補てんするため、好調なインバウンド(訪日外国客)需要を踏まえて一般客の1泊素泊まり価格を1万円から1万2千円に上げた。

 ■「国や自治体に支援を求めていきたい」

 一方、ミャンマーやネパールなど4カ国の外国人従業員は円安で母国への送金が難しくなっているといい、昨年から給与を月額2万円増やすなど待遇面の改善も進めているという。

 旅館こうろの会長で、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の常任顧問も務める北原茂樹さん(74)は4月中旬、井上善博会長らとともに盛山正仁文科相に宿泊施設への補助などを求める要望書を提出した。北原さんは「インバウンドは単価が高く、経営を考えるとそこにも目を向けないといけないという思いはある」と述べる一方、「(京都で)長く続いている修学旅行をなくすことはあってはいけない。今後も国や自治体に支援を求めていきたい」と強調した。

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