おいしいマイナー魚を“推し活”「瀬戸内さかな」ブランド強化へ 漁獲量減少で行政・漁師・料理人がタッグ【広島発】

「おいしい魚を捕っているのに生活が苦しいっておかしい」と訴える漁師。漁獲量が年々落ち込み、収入は減る一方だ。広島県は2024年度、漁師や料理人とともに瀬戸内の魚の強みをPRしブランド強化に取り組むと発表した。

まだまだ認知度が低い瀬戸内の魚

広島市中区の地下街で6月24日に行われた「瀬戸内さかな」の発表会。集まったのは漁師や料理人たち。広島市漁協の漁師・岡野真悟さんが「広島湾の魚はおいしいですが、漁獲が少ないがために出回りが少なく、どうしても認知度が低くなっています」と現状を伝えた。

潮流の強さ、浅瀬の多さ、季節によって水温が大きく変わることから、多種多様なおいしい魚が育つとされる瀬戸内海。

会場の展示パネルで「ひろしまの旬の推し魚」を春夏秋冬の一覧にして紹介した。となりのパネルには“魚の写真付きプロフィール”も。例えば、食卓にのぼる頻度が低い「オニオコゼ」や「カサゴ」は、今後の期待値を5段階の4で示すなど“推し度合い”がひと目で分かるように工夫されている。県はこのように瀬戸内の魚の強みをPRすることで、市場や飲食店と一体となってブランド力を強化しようとしている。

広島県水産課の木村剛司参事は「漁師のこだわりや職人気質を起点とした瀬戸内魚全体の価値を高めるとともに、県内水産業の持続可能性の向上につなげていきたい」と話す。

ブランド強化の先に「漁師の未来」

この日、会場で登壇した漁師が江田島市の鹿川漁協に所属する野村幸太さん(39)だ。
「魚が捕れなくなってきていて値段が安いというのが実際のところです。いかに漁師が自分たちの生活を守っていくか、というのが僕らの課題。今回の『瀬戸内さかな』の取り組みで課題を解決していけるのではないか。今後の漁師の在り方を変えていけるのではないか」と瀬戸内の魚のブランド強化に大きな期待感を抱いている。

実は野村さん、20代前半に水産会社で漁師として働いていたが、給料面などから生活に危機を感じサラリーマンに転職。しかし“漁師への憧れ”をあきらめきれず、数年前から再び漁師として船に乗るようになった。底引き網漁で冬から春にかけては「タイ」、6月~7月の時期は「ハモ」を捕るという。

しかし複雑な思いもある。野村さんは「ものすごくおいしい魚を捕っているのに生活が苦しいっておかしいよな、何か自分ができることがあるんじゃないかと今回のプロジェクトに参加しました。事務局から話を聞いて刺激を受け、これはすごく楽しいことになるのではと。これから未来に向けて広島の漁師がもっと盛り上がっていくんじゃないかなと思っています」と話した。

一方、イベントでは広島市内で飲食店を営む料理人が、旬のハモを使った料理を披露し魅力をアピール。県は7月からプレゼントキャンペーンなども行い、ブランド力向上のためにPRしていくということだ。
「瀬戸内さかな」の魅力を全国へ発信することによって、今の漁獲量でも漁師が働きに見合った収入を得られるよう期待したい。

(テレビ新広島)

© FNNプライムオンライン