県産サクランボの今季収穫量、1万トン以下か 「凶作水準」と関係者危機感、市場取扱量も大幅減

市場に並ぶ県産サクランボ。例年よりも出荷量は少ない=山形市・丸勘山形青果市場

 今季の県産サクランボの収穫量が、当初予想の1万2100トンを大幅に下回り、1万トンを割り込むとの見方が生産・流通関係者の間で広がっている。収穫期を迎えた今月に入って気温が上昇し、実がうるむ高温障害が発生したことなどが要因とみられる。今季は度重なる異常気象で想定以上に厳しく、農業団体は「凶作水準」との危機感を抱く。山形市内の市場取扱量も大幅に減る事態となっている。

 県は、開花期の高温・乾燥や収穫期の高温が影響し、最終的な収穫量は当初予想を下回る見通しを示している。

 「出荷量が激減して、みんな悲鳴を上げている」。丸勘山形青果市場(山形市)の井上周士社長は厳しい表情を見せる。市場には県内各地からサクランボが集まり、例年、1日当たりの取扱量はピーク時で25トンに上る。今季は今月15日の17トンが最高で、16日以降は減る一方だという。全体の取扱量は前年比で4~5割減少する見込みだ。

 深刻な凍霜害に見舞われた2021年(収穫量9160トン)は必要な量を確保できたが、今年はふるさと納税の返礼品を含め、4千~5千件の注文を断った。「こんなことは初めて。21年より状況は悪い」と井上社長は肩を落とす。首都圏などのバイヤーは顧客へのクレーム対応に追われているという。

 山形丸果中央青果(山形市)は今季の出荷量について、前年同期比で3割減とする。今後もまとまった量の入荷は見込めず、最終的な実績は21年を下回る見通しだ。入荷量確保に向けて生産者らへの営業を続けているが、想定の10分の1ほどしか確保できておらず、今週末で営業活動を打ち切る。品薄状態で単価は昨年の2~3倍に上昇しているが、同社の担当者は「想定した値段以上になると手を出しにくい、と仲卸業者も苦労している」と話す。

 JAグループ山形は今季の生産状況について「過去に例を見ない凶作水準で、天災に匹敵する」と強調する。営農継続の断念など本県農業に深刻な影響を及ぼす懸念があるとし、27日には県に対し、品質劣化対策の支援や県単独の無利子資金の創設などを求める緊急要請を行う。

ふるさと納税、返礼品の対応難しく

 サクランボの収穫量減は、各市町村のふるさと納税にも影響が及ぶ。山形市は24日現在、「佐藤錦」や「紅秀峰」などを返礼品に希望する約6万2000件のうち、約9900件に対応できない見込み。寄付者には、代替品で対応するか、来季に発送するかを選んでもらう。

 全国市町村別で生産量日本一の東根市でも必要量を確保できず、寄付者にはモモやシャインマスカット、ラ・フランスなどで対応する。市の担当者は「寄付者には大変申し訳ないが、生産者も努力している」。寒河江市は、「佐藤錦」を4割程度発送できない見通しだが、「紅秀峰」は現時点で予定通りに発送できるとする。天童市は「佐藤錦」を希望する寄付者の約3割に対し、断りを入れる方針。

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