英国Saab社の完全電動無人水中探査機、Vicorの電源モジュールを採用

by ドローンジャーナル編集部

2024年6月25日、米国のVicor Corporation(以下、Vicor)は、英国Saab社の無人水中探査機(ROV)が、Vicorの電源モジュールを採用したことを発表した。

英国Saab社の無人水中探査機(ROV)の写真

Saab社は、完全電動ワーククラスROV(eWROV)を開発し、高い汎用性と操縦性を実現。従来のROVは油圧式だが、eWROVは完全電動システムのため油圧作動油が不要で、環境リスクを軽減している。

2022年、同社のROV「Seaeye」2台が南極海で3000mを超える深さまで潜り、1915年に沈没したアーネスト・シャクルトン卿の船「エンデュアランス号」を発見した。ROVは深海探査において、人を危険にさらすことなく沈没船の位置を特定し、調査、撮影することが可能だ。

これまではダイバーが大きなリスクを負って、石油やガスのパイプライン、高電圧電気ケーブル、風力タービンなどの海底インフラを検査してきた。Saabが深海探査の専門技術を民間の水中アプリケーションに導入したことで、ダイバーのリスクを取り除くことができる。

SeaeyeシリーズのROVは、より小回りの利くモジュール化したシステム設計で開発されており、観測や調査、水中メンテナンスなど、幅広いタスクをこなす能力を備える。

完全電動ワーククラスROV(eWROV)

eWROVは従来の油圧式ROVと肩を並べ、250馬力級の潜水機と同等の性能を持つ。また、使用する油圧システムと作動油の量を最小限にしているため、生態系に有害な汚染物質を誤って海洋に排出するリスクを減らしている。電気推進にすることで高圧システムが減るため、信頼性も大幅に向上し、保守点検の間隔も改善。稼働期間も長くなり、セルフモニタリングにより定期点検の回数を減少させる。

水中で作業する無人水中探査機の写真

極めて高い電力密度により高度な機能を実現。大型の油圧式ROVの性能を上回り、積載物のスペースも大幅に拡大した。

DC電源システムは海底の電圧レベルを一定に保ち、地上の電源システムが供給する全エネルギーの消費量を低減。その結果エネルギー需要が減り、CO2排出量を減らすことができる。

電子システムは限られたスペースの密閉された筐体に収納されており、従来の対流冷却が不可能であるため、パワーコンバータの仕様は、サイズ、重さ、放熱性能が極めて重要となる。この要件を満たすため、高電力密度で高効率であるVicorの電源モジュールを採用。スラスタ、マニピュレータ、搭載電子機器などのeWROVサブシステムへ効率的に配電する。またサブシステムを、オンボードコンピュータやセンサー、ビデオカメラ、照明、ナビゲーション機器に必要な24Vや48Vの電圧にカスタマイズすることもできる。

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