イームズ、第一種型式認証取得予定機「E600-100」は最大離陸重量24.9kgで最大積載重量5kgを実現

by 藤川理絵

写真:イームズロボティクスの展示ブース前に立つ曽谷社長

イームズロボティクス(EAMS ROBOTICS)は、初お披露目となる第一種型式認証取得予定の物流ドローン「E600-100」、ついに販売・出荷を開始した第二種型式認証取得の物流ドローン「E6150TC」と、サプライズで新たに開発中のVTOL機のモックアップも展示した。

また、Japan Drone 2024会期初日には、ドローン飛行の規制が緩和される国の特区として、福島県と長崎県の両県が指定されたことが発表された。福島県においては、福島ロボットテストフィールド周辺エリアの市街地において、ドローン配送の規制が緩和される見込みだ。南相馬市に拠点を構えるイームズは、これまでも福島県内で数々の実証を手がけており、本特区と第一種型式認証取得により、ドローン配送の社会実装に弾みをつける構えだ。

第一種型式認証取得予定の物流ドローン「E600-100」

イームズロボティクスの出展の目玉は、第一種型式認証取得予定の物流ドローン「E600-100」だ。昨年は参考展示にとどまっていたが、ついに製品版に限りなく近しい試作機という形で一般公開された。バッテリーやGPSなどを冗長化したシステムの二重化による安全対策を施したほか、最大の特徴は、躯体をフルカーボンのモノコック構造にすることで、「かなりの軽量化を図った」という点だ。これにより最大離陸重量24.9kg(25kg未満)の機体でありながら、最大積載重量5kgを実現したという。この数値は確定ではなくあくまでも予定だが、ほとんどこれに近いスペックでの取得に漕ぎ着けそうな印象を受けた。

予約販売も開始しており、「今年度はとにかくレベル4の実証を行いたい」という。すでに数多く問い合わせが入っているとのことで、「物流事業者以外」のさまざまな業種とのコラボレーションが見られるかもしれない。

第一種型式認証取得予定の物流ドローン「E600-100」写真:展示された「E600-100」
機体後方からの姿。アームは折り曲げて収納できる写真:「E600-100」の収納ボックスのふたが後ろに開いている様子

なおイームズは、「ラストワンマイル配送」をターゲットに機体認証を進めているという。このため「E600-100」の荷物スペースは、これまで5年にわたり協業してきた佐川急便のMサイズボックス(縦)260×(横)350×(高さ)190mmが、ちょうど収まる大きさにしたという。運べる重さは5kg程度。

「でも、5kgでは足りないと思っている」と曽谷社長。今後は、Lサイズが収まるペイロード10~20kgの物流ドローンを目指す。また荷物の取り出し方についても、現在の機体後方より取り出す形から、将来的には置き配できるよう改良を検討するそうだ。

さらには、中国の深圳(しんせん)で見られるような宅配ボックスにドローンが荷物を届けて、利用者がスマホで開錠して荷物を受け取るシステムや、1名のオペレーターが例えば10台のドローンを運用できるような1対多運航システム、ドローンの衝突回避システムなどを統合して、「物流システム全体として考えていく」ことに主眼を置いているという。

第一種型式認証取得予定の物流ドローン「E600-100」の前には、Xactiの高解像度ジンバルカメラ「CX-GB100」、日本航空電子の国産フライトコントローラー「JFB-110」も展示されていた写真:「CX-GB100」と「JFB-110」

第二種型式認証取得の物流ドローン「E6150TC」

第二種型式認証取得の物流ドローン「E6150TC」も、非常に注目を集めていた。それもそのはず、会期中最終日に発表された「Japan Drone & AAM Awards」では、来場者の投票で決まる「オーディエンス賞」に、本機体が見事選出された。

会期中の商談もかなりあったようだ。特に、既存顧客との取引はもちろんだが、レベル3.5制度の創設を受け、「実証から実装を目指している新規顧客」からの引き合いも多かったという。また、能登半島地震でのドローン活用事例を参考に、自治体における認知度、興味関心も向上してきた印象だとのこと。今年度、「E6150TC」については引き続き販促に注力する。

写真:展示された「E6150TC」(正面)
写真:展示された「E6150TC」(後面)
写真:「E6150TC」の解説パネル(4種類の特定飛行を実現 時代は「実証実験」から「実用化」へ!)

まさかのサプライズで新たに開発中のVTOL機

今回、リリースなどで事前周知なくサプライズ的に展示されていたのが、経済産業省の中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3基金事業)「行政ニーズ等に対応したドローンの開発・実証」の採択事業の一環として、新たに開発中のVTOL機だ。目下、風洞試験などを行いながら、最終的な仕様を検討しているところだという。

第一種型式認証の申請も予定しており、3年後の量産機製造・販売を目指す。2024年春先に行った曽谷社長へのインタビューでも、長距離飛行が可能なVTOL機と、ペイロード10kg以上の中型物流マルチコプターの開発について言及があったが、Japan Drone 2024では各種プロジェクトが着々と進んでいることをしっかりと印象付けた。

写真:展示された「EAMS VTOL」
写真:SBIR(物流システムの開発)、VTOL(SBIR事業で高めるVTOL開発「汎用性の高い長距離物流を目指して」)説明パネル

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