水と森を学ぶ 田辺市龍神村で本宮・三里小児童、和歌山

林業家の大江英樹さん(右から2人目)からは、林業の仕事や森を育てる大切さなどを教わった=和歌山県田辺市龍神村小又川で

 和歌山県田辺市龍神村で20、21日、森林の機能や暮らしとのつながりについて学ぶ「森林環境学習ツアー」が開かれた。同市本宮町の本宮、三里小学校から5年生計13人が参加。水の循環と森の役割をテーマに、林業の仕事や里山での暮らしに理解を深めた。

 森林環境学習ツアーは、市熊野ツーリズムビューローが市教育委員会からの委託を受けて、市内の小学校を対象に開いている。本年度は16校での実施を予定しており、龍神村のほか、ひき岩群(稲成町)や本宮地区、天神崎などでのツアーを計画している。

 龍神村でのツアーは、地域の自然や文化の魅力を分かりやすく伝えるガイド「インタープリター」を務める中川政寿さん(42)=龍神村小又川=が企画した。山に降った雨が谷水となり、川となって海に流れる「水の循環」に着目し、森林の多面的機能を伝えられる内容にしようとツアーを組み立てたという。

 20日は、中川さんらとともに、龍神村小又川の林業家、大江英樹さん(43)の山林を訪問した。大江さんは、間伐や枝打ちといった森の手入れの重要性を説明。林業の仕事について「100年、200年と、どんどん木が大きく育つのをお手伝いしている。おじいちゃんからお父さん、自分にと、次の代にバトンタッチしていく形で林業をしている」と話した。

 山は木材を供給するだけでなく、植物や虫、動物など多様な生物が生息していること、生物の成長に必要な栄養を含む水が海に流れていることにも触れ、「命が連続して関わっていることも知ってほしい」と呼びかけた。

 その後、水の循環に関連し、山から流れる自然の谷水を利用している龍神村宮代の棚田や畑を訪問した。

 地元の浦光良さん(63)が、近くを流れる谷水や、その水を使っている田畑を案内した。浦さんは、仲間とともに宮代の棚田や畑を守る活動をしていること、収穫体験ができる場として活用していることも紹介。「山と農地は一体。どちらも守らないと、里山は成り立たない」と語った。

 子どもたちは、浦さんが育てているジャガイモの収穫を体験し、カレーを作って夕食に食べた。

 本宮小の茶木健三郎君(11)は「ジャガイモを掘ったことがなかったので、自分の手でたくさん収穫できて楽しかった」、三里小の小松定士君(10)は「木の手入れをしないと、うまく育たないというのが印象に残った。林業の仕事をやってみたいと思った」と話した。

 この後、龍神温泉で入浴し、宮代オートキャンプ場で宿泊した。21日は、ブナやミズナラといった原生林がある護摩壇山や、道の駅「ごまさんスカイタワー」を訪問。近くにある龍神岳も登り、日高川の源流の谷を見た。子どもたちはツアーを通じて「私にとっての森とは」「林業とは何か」「森がなかったら生活はどうなるか」などについても考えを深めた。

畑からジャガイモを引き抜いて収穫する子どもたち(和歌山県田辺市龍神村宮代で)

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