ソフトバンクが「ヌルフォーミング技術」の実験に成功、“空飛ぶ基地局”HAPSと地上の周波数共用に向け

by 松本 和大

ソフトバンクは、成層圏から通信サービスを提供するプラットフォーム「HAPS」(High Altitude Platform Station)向けのシリンダーアンテナを用いて、HAPSと地上基地局との間で周波数共用を実現するヌルフォーミング技術の実証に成功した。実証実験は、4月に北海道の大樹町多目的航空公園で実施された。

実証実験で使用された高高度係留気球基地局(上空基地局)とシリンダーアンテナ

HAPSと地上基地局のそれぞれに専用の周波数を割り当てると、電波の干渉が発生せずに高品質な通信ネットワークを提供できる一方、有限な資源である複数の周波数帯の電波を利用することになる。

そこでソフトバンクは、HAPSと通信デバイスとの間でデータの送受信を担う「サービスリンク」向けのアンテナとして、シリンダーアンテナの活用を検討。特定の方向に対する電波の放射を大幅に抑制して電波の干渉を防ぐ、ヌルフォーミング技術の開発に取り組んでいる。

ヌルフォーミング技術によるHAPSと地上基地局間の周波数共用

今回の実験では、シリンダーアンテナを搭載した上空基地局の通信エリア内に地上基地局を設置。そのうえで、上空基地局の通信エリア内にある携帯端末Aと、地上基地局の通信エリア内にある携帯端末Bを、地理的に近い場所に配置した。

ヌルフォーミング技術を適用することで、携帯端末Aの通信速度を大幅に低下させることなく、携帯端末Bの通信速度が改善された。たとえば携帯端末Aは67Mbps、携帯端末Bは31Mbpsのスループットを記録した。

一方、ヌルフォーミング技術が適用されていない状態では、たとえば携帯端末Aが70Mbpsのスループットを記録した一方、電波干渉によって携帯端末Bのスループットが12Mbpsとなり、ヌルフォーミング技術の有効性が確認されている。

ヌルフォーミング技術あり
ヌルフォーミング技術なし

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