【解説】 “老老対決”の勝敗は!?バイデンVSトランプ 4年ぶりのテレビ討論会 異例のメモ持ち込み禁止、マイク制限 注目の戦いの行方

11月のアメリカ大統領選挙に向け、バイデン大統領とトランプ前大統領の直接対決となる、テレビ討論会が、まもなく日本時間の28日午前10時(現地27日午後9時)から行われる。

民主・共和両党が正式に候補者を指名する前の「歴史上最も早いテレビ討論会」となる直接対決だが、様々な異例の制限が付いたことも話題だ。

さらにアメリカメディアを見れば、政策よりも「老老対決」の行方に注目が集まっている。両氏がどのようなパフォーマンスを見せるのか。決戦の時は刻一刻と近づいている。

前例なき90分間のテレビ討論会が決定

大統領選挙の最初の討論会は通例、民主・共和両党の党大会で大統領候補が正式指名された後の9月下旬頃に開催される。

しかし、今回は正式指名前となる6月27日に史上最速のテレビ討論会開催が確定した。主催するのはアメリカのCNNで、会場は本社のあるジョージア州アトランタのスタジオだ。

司会はCNNアンカーのジェイク・タッパー氏と、ダナ・バッシュ氏の2人が務める。時間は90分間で、CMのタイミングは2回。また、聴衆がスタジオには入らない“無観客試合”となった。この点は、熱狂的な支持者が、演説を盛り上げてきただけに、トランプ氏陣営としては不利な形になるとみられている。

異例の制限だらけ・・・トランプ氏対策か?

討論会を前に、すでに両候補はコインフリップで立ち位置を決定し、画面に向かって右側がバイデン氏、左側がトランプ氏と決定された。また事前の取り決めで、マイクの音声は発言機会以外はミュートになる。

2020年の討論会では、発言を止めないトランプ氏にいらだったバイデン氏が「Will You Shut Up Man(黙ってくれないか?)」と発言したことがハイライトになったが、トランプ氏のヤジなどを強く意識したルールとみられる。

討論の開始前には双方が2分間ほどの演説が許され、討論が始まると質問された候補者が2分間で返答する。その後1分間の反論や、それに対する返答が設けられている。司会者の判断で1分追加もできる。回答時間の残りが5秒になると赤いランプが点滅する仕組みも用意された。

討論会中に候補者は、陣営のスタッフなどと会話はできない。さらに、候補者にはペン、紙、水のボトルが1つ渡されるが、小道具や事前に書いたメモの持ち込みは許されない。

双方の候補者の「記憶力」に疑問が呈されている中で「メモの持ち込み禁止」はどのような結果に繋がるのか注目が集まっている。

バイデン氏有利のルール?トランプ氏はどう対応?

異例の制限がかなりついた形だが、多くがトランプ氏に不利な条件になっているとみられる。アメリカメディアも「このルールはバイデンを助けることがほぼ確実」と報じている。

さらに司会のCNNキャスターもトランプ氏には厳しい立場を示してきているため、トランプ氏も「私は1人ではなく3人と討論する」と発言するなどアウェーであることを明確にしている。

ただ、ここ数カ月の間、トランプ氏の陣営は81歳のバイデン氏を、歩くことも不自由で、発言もミス続きの「認知機能が衰えた老人」として批判を続けてきた。

トランプ氏自体にも名前の間違いや、演説中の不可思議なフリーズ疑惑などもあったものの、世論はバイデン氏の高齢を懸念する声の方が圧倒的に強い。

トランプ氏の陣営から「どのような形式であれ、バイデンを可能な限り多くの聴衆に見せることが不可欠」との声が挙がるように、2人を並び立たせれば、その差は一目瞭然になるという自信の表れかもしれない。

両陣営は用意周到に準備を進める

バイデン氏、トランプ氏の両陣営はこの討論会が今後の戦略を決める大きな転換点となると見て準備に余念がない。

バイデン氏は20日から大統領の別荘キャンプデービッドに側近を集めて篭り、集中的に討論の練習や、発言の準備を行っている。大統領が丸々1週間も討論会の準備にあてるのは異例なことだ。

一方のトランプ氏も今月に入ってから共和党の有力者や政策の専門家などと協力して、準備を進めている。トランプ氏も「バイデンを見くびることはない」と強調している。

2020年の第1回大統領候補者討論会は累計で約7300万人が視聴したとされ、今回も同程度の視聴者が予想される。両陣営ともにここが勝敗を左右する乾坤一擲の機会になると見ているのだ。

勝敗の行方は?

選挙制度の問題や各州の色分けがはっきりした中で、大統領選挙はいずれにせよ大接戦となる見通しだ。ただ、直近の世論調査でもトランプ氏の方がやや風が吹いているという向きも強い。

自身の刑事裁判には追われているものの、バイデン氏もロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの戦闘への対応で国内の反発は根強く、次男のハンター・バイデン氏も刑事裁判を抱えている。

アメリカメディアはバイデン陣営としては討論会でトランプ氏側に大きな揺さぶりをかけて、この流れを変えようとしていると分析する。

しかし実際には、この戦いはバイデン氏にとって大きな賭けになりそうだ。

アメリカメディアは、バイデン大統領が仮にトランプ氏の攻撃に言葉を詰まらせ、フリーズすれば、民主党内から大統領候補の差し替えを求める声が再燃するとの声も報じている。政治評論家からは「バイデンのパフォーマンスが悪ければゲームオーバー」と辛辣な批評も出ている。

また、「老人ホームのビンゴを巡る喧嘩」とも揶揄されるような、二人が悪夢のような罵声を浴びせ合って終われば、ただ国民に絶望を与えるだけとの見方もある。

逆に討論を優位に進めれば、大統領就任に向けた大きな足がかりなる可能性もある。注目の討論会がまもなく開始される。
(FNNワシントン支局 中西孝介)

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