幅5.5m未満の『生活道路』 2年後に法定速度60キロ→30キロへ 車の時速30キロ超で致死率が上昇

地域住民が利用する幅が狭い道路、いわゆる”生活道路”の法定速度が、2年後に時速60キロから時速30キロに引き下げられる方針です。

なぜ変更するのか?そして、生活道路にはどんな危険が潜んでいるのか取材しました。

■事故の影響が大きい「生活道路」 法定速度を時速30キロに引き下げへ

「おはようございます~!」

午前8時すぎ、大阪市西区の西船場小学校の周辺では、登校する子どもたちに車や自転車…交通量が多くなっています。

こうした幅5.5メートル未満のいわゆる「生活道路」は、全国にある一般道のうちおよそ7割。

速度制限の標識がない場所の法定速度は60キロになっています。

すでに、通学路など生活道路の一部では、時速30キロに制限された「ゾーン30」というエリアもあり、こちらの道路ではポールを立てて道路の幅を狭くするなど、速度を出しにくくするための仕掛けをしています。

【大阪府西警察署 岸本景太交通課長】「狭くなったので視覚的にも、『おっ!』となって速度ゆるめる。子供が飛び出してきても、事故にならずに止まれる」

さらに人を優先する道路として「ゾーン30プラス」と呼ばれる道路も登場し、去年までに全国で128カ所まで広がったものの、専門家は「すべての生活道路に、このような対策をするのは難しい」といいます。

【筑波大学 石田東生名誉教授】「小さい道路の最大の特徴、課題でもあるが、いたるところにある。『ゾーン30プラス』でハンプ作ったり、一つ一つはお金かからないが、量が膨大にあるから、日本全国で考えるとすごくお金がかかる」

一方、警察庁によると去年発生した交通事故のうち、幅が5.5メートル未満の道路で、歩行者と自転車が死傷した数は、幅の広い道路に比べて1.8倍と、生活道路では事故の影響が大きくなっています。

そこで警察庁は5月、再来年の9月をめどに、生活道路の中でもセンターラインがない道路については、法定速度を時速30キロに引き下げる方針を固めました。

車と歩行者の衝突事故では、車が時速30キロ超えると歩行者の致死率が急激に上昇することなどを根拠としています。

■「車にひかれそうになった」 生活道路を使う車は半数以上が時速30キロ以上

生活道路を走行する車はどれくらいのスピードを出しているのでしょうか。

【記者リポート】「子供たちがよく使う道、スクールゾーン。この付近は、歩行者や自転車がよく通る住宅街、生活道路です」

大阪市西区にある生活道路。

法定速度は時速60キロですが地域の住民は…。

【地域住民】「結構ひやっとすることあります。工場とかがあって路駐しているので、道も余計に狭くなっている。(スピードを)出してる車、結構いますね」

【地域住民】「抜け道に使われる方が多い。信号とかないので、使いやすい」

【地域住民】「車にひかれそうになった。事故が起きそうになって、びっくりした」

取材すると車が何台も行き交い、歩行者のすぐ脇を通って行きます。

スピードを測ってみると…
【記者リポート】「車の速さは時速38キロ。道が狭いので、体感ではもう少し早く感じるほどですね」

30分の間に通った車は20台。うち半数以上が時速30キロを超えるスピードでした。

こうした道路は2年後には法定速度が時速30キロになる方針です。

一方、専門家は「道路の特性に応じたルール作りが必要だ」と話します。

【筑波大学 石田東生名誉教授】「ただ道路が細いから、幅が5.5メートル未満、センターラインがないというだけで、本当にドライバーは時速30キロを守ってくれるか。地域によって状況が違ったり、色んな人たちがいるので、そういう人たちと合意形成をどう取るか、ものすごく大事」

歩行者の安全を守るために乗り出した新たな対策。

警察庁は法改正に向け6月29日まで、一般から広く意見を募集するということです。

■法改正とともにドライバーの意識・常識の再教育が必要

生活道路の“法廷速度引き下げ”へということですが、課題もあります。

中央線や中央分離帯などのない、幅が5.5メートル未満の生活道路の制限速度を60キロから、30キロに引き下げることになりそうです。

ただし、すでに速度規制がある場合は、現行のままということで混乱しそうです。

交通事故を減らすためには、こういったハード面の整備とともに、ドライバーひとりひとりの意識も変えていかないといけません。

【ジャーナリスト安藤優子さん】「60キロってすごい速さだと思います。特に身近に感じる生活道路は幅が狭いわけですよね。だから自転車も走行すればオートバイも走行する。それから車も走る、そして歩行者がいて、いろんなその形で5.5メートル未満のところに混在しています。そこを車がもし60キロで走ったらば、とんでもないスピードだし、私は本当に危ないと思います。だからこういう引き下げは大賛成です。それ以前の問題として、ドライバーの常識として、例えば住宅街の道路を走る時に騒音の問題とか、それから安全性の問題や『角からもしかしたら子供が出てくるかもしれない』という想像力を働かせる。つまりリスクに対する予測、不測の事態に対する想像力はドライバーにとっては絶対必要なものです。だからこそ住宅道路とかそれからこういう生活道路で不要なスピードを出すこと自体が、あってはならないことだと私は常識として。ドライバー教育の中に、そういう常識的なものも組み込んでほしいと思います。つまり法定速度に従えばいいってもんじゃないよっていう」

そして専門家は、こんな影響も指摘しています。

筑波大学の石田名誉教授は、「宅配便や公共交通機関のスケジュールに影響が出る可能性も」あり、「地元住民の意見を聞いたルール作りも必要か」と話しました。

スピードが出せなくなるので、ダイヤの見直しが迫られるとか、物流にも影響が出るということも考えられるのではということです。

このように法定速度が変わる見込みですが、どう周知していくのかという課題もあります。

【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「まずそもそも60キロであったり40キロだったりが混在しいてるというところも問題で、ドライバー自身が意識を高く持つことも大事ですが、例えばヨーロッパEUでは、ナビゲーターですとかモニターにスピードが出て、『今オーバーしてますよ』と警告で知らせてくれるとか、スピードリミッターが働くとか、そういったものを車に搭載することが義務付けられていく方針です。日本もそのようなIT技術を使えば、そういった事故が防げる可能性もあると指摘されています」

それぞれの道の状態に合わせた、本当に実効性のある運用を求められるということになります。

(関西テレビ「newsランナー」2024年6月26日放送)

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