自治体が駆除に乗り出す特定外来生物「オオキンケイギク」 兵庫の高校生たちがクレヨンに「生まれ変わる感動を伝えたい」

オオキンケイギクの花びらから作ったクレヨンを手にする浅井勇輝さんら=三田市学園1、三田祥雲館高校

 初夏から夏にかけて黄色いコスモスに似た花を咲かせる特定外来生物「オオキンケイギク」。きれいな見た目とは裏腹に、旺盛な繁殖力が在来植物の脅威となり、自治体などが駆除に乗り出している。そんな中、兵庫県立三田祥雲館高校(三田市)の生徒たちが、「厄介者」をクレヨンに生まれ変わらせるプロジェクトを始めた。名付けて「アップサイクルクレヨン」だ。(黒田耕司)

 オオキンケイギクはキク科の多年草。1880年代に北米から日本に観賞用として持ち込まれ、道路ののり面に植えられるなど、景観づくりに生かされた経緯がある。 ### ■駆除に苦戦

 三田市でもニュータウン開発に伴って植えられ、市街を華やかにした。だが、その強い繁殖力でほかの植物を次々と駆逐するなど、危険性が浮き彫りに。2006年には環境省が特定外来種に指定し、県内各地でも駆除が始まったが、苦戦が続く。

 県立人と自然の博物館(同市)の橋本佳延主任研究員(48)は「草を刈っても、土中の根が伸びるため効果が弱い。駆除には根を弱らせる必要があるが、年3回以上の抜き取りを続けなければならない」と話す。人間とのいたちごっこの様相を呈し、「厄介者」のイメージがさらに強まっている。

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 5月25日、三田市内を流れる武庫川沿いで開かれた駆除体験会には、高校生の姿があった。三田祥雲館高校科学部生物班の生徒らが、オオキンケイギクの生態や駆除方法について理解を深めようと参加。初夏の日差しを浴びながら、オオキンケイギクを一生懸命引き抜いていた。

 生徒たちの目的は、駆除だけではない。生物班16人が取り組むプロジェクトの一環で、黄色い花びらをクレヨン作りに生かそうというのだ。 ### ■コーヒーかす

 生徒らは、捨てられる物を再加工して新たな価値を生み出す「アップサイクル」に取り組んでいる。ほかにも職員室で教員らが入れたコーヒーのかすや、同班が藍染めに使うタデアイの搾りかすなども使い、黄色や茶色、緑を取り出す。

 きっかけは昨年、当時の3年生が、授業の中で野菜の廃棄部分などを使ったクレヨン作りに取り組んだことだった。活動を途絶えさせずに発展させようと、生物班が引き継いだ。オオキンケイギクは鮮やかな色が出やすいといい、武庫川沿いだけでなく、同校周辺に群生していたものも駆除して材料とした。

 乾燥させた花をミキサーで粉末にし、ミツバチのミツロウや食用油を混ぜ、湯煎で溶かす。子どもが口に入れても安全な材料を選んだ。液体になったら、太さがぴったりなタピオカドリンク用のストローに流し込んで成形する。固まればクレヨンの完成だ。

 生徒たちは数十本を量産し、今月14日に開かれた同校文化祭でお披露目した。今秋には、美術部の生徒がクレヨンを使って絵を制作する計画も持ち上がっているという。

 科学部部長で生物班班長の3年浅井勇輝さん(17)は「世の中、捨てるのがもったいないものにあふれている。オオキンケイギクも人の都合で持ってこられただけなのに嫌われている。『こんなふうに生まれ変わるんだ』という感動を、クレヨンを通じて伝えたい」と意気込んでいる。

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