名脇役「ウズラの卵」のピンチを救え! 支援に乗り出した市役所 メーカーや直売所も新商品開発に奮起 愛知・豊橋市

愛知県が生産量日本一のウズラの卵。実は今、ピンチを迎えているのです。その産地を訪ねると、大量のウズラの卵が市役所に運び込まれていました。いったい、何に使うのでしょうか…?

在庫は昨年の1.7倍 ウズラの卵が余っている理由とは…?

茹でたての麺の上にかけられるのは、スパイスの香りが漂うアツアツのカレーだし。丼の底には“余ったカレーだしもおいしく食べてほしい”と、ごはんと真っ白なとろろが忍ばせてあります。今や、豊橋の定番のひとつとなった「豊橋カレーうどん」です。市内のうどん店「玉川」には、お昼時になると、地元の人だけでなく、観光客も多く訪れます。

豊橋カレーうどんを名乗るにはいくつかルールがあり、そのひとつが「豊橋産のウズラの卵を使うこと」。カレーだしの上に浮かぶ白と黄色のコントラストは、食欲をそそります。14年ほど前、鳥インフルエンザの影響に悩む業界を盛り上げようと、トッピングとして使い始めました。

そんなウズラの卵に、今、異変が起きています。

ウズラの卵の加工品を製造する天狗缶詰は、社会的な物価高と輸入品も含めたコスト増の影響で、今年4月、やむを得ず値上げに踏み切りました。

しかし、問題はそれだけではありません。

今年2月、福岡県の小学校で給食に出たウズラの卵を詰まらせ児童が亡くなってしまう、痛ましい出来事が。それ以降、給食での使用が減り、ウズラの卵が余っている状態です。在庫状況は今年に入って増え続け、昨年比で170%、1.7倍ほどになっているといいます。

厳しい衛生管理や餌代に大きな経費がかかるウズラの卵。雛を育てるのにも時間がかかり、生産調整が難しいため、農家も頭を悩ませています。

豊橋養鶉農業協同組合 幡野真也理事:

「事故にあわれた家族の方には一番心苦しい気持ち。生産者の立場からすると、物の流通が止まると生産状況にも影響する」

鳥インフルエンザや新型コロナも影響し、ピーク時の10分の1にまで減ってしまったウズラ農家にとって、現在のような“卵が余る”状態は死活問題です。

こうした状況に、豊橋市が支援に乗り出しました。

ピンチでも諦めない! 新商品開発で形状や味に一工夫

ウズラの卵が余ってしまい、農家や加工会社が困っている現状を打破しようと、支援に乗り出した豊橋市。

6月24日、市役所をたずねてみると、ウズラの卵が大量に運び込まれていました。その数、約5万個! 賞味期限が迫った卵の水煮を職員たちで食べようと企画したのです。職員のみなさんは、お弁当にトッピングするなどして楽しんでいました。

加工会社も、新たな食べ方を模索しています。天狗缶詰では、卵を細かく砕いて味付けしたクラッシュタイプのウズラの卵の開発を進めています。

天狗缶詰 営業本部 飯田昌宏課長:

「おいしくて安心安全で適正価格のものを開発し続けていきたいと思っております」

さらに、ウズラの卵の組合が運営する直売所では、新鮮なウズラの生卵だけでなく、柚ポン酢味に、ガーリックとバジルで“ガバジ”味、すき焼き味にカレー味など、お客さんの要望から13種類の味付け卵を開発しました。去年はハート型の水煮を開発! さまざまな人に食べてもらおうと工夫を凝らします。

お客さんの中には「1週間くらい前に来たんですけど、おいしかったのでまた来ちゃいました」と、100キロ以上離れた静岡県静岡市から来たという人もいました!

豊橋養鶉農業協同組合 松ケ迫準一さん:

「ピンチだから諦めるのではなくて、どうしようかって考えて、ここをきっかけにいろいろなことをやっていけたらなと思ってます」

おいしくて、栄養価も高く、見た目もかわいいウズラの卵。名産品を守るための試行錯誤は、これからも続いていくことになりそうです。

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