世界の国に聞いた『パビリオンの課題』タイプA~Cそれぞれ準備中「ネガティブな報道しすぎじゃない」とも

25日から行われていた大阪・関西万博の国際会議が、26日午後に終了しました。展示内容が具体的になってきた一方で、各国が抱える不安は解消できたのでしょうか?

来年の大阪・関西万博にパビリオンを出展する160の国と地域から約590人が参加する国際会議の2日目。会議も大詰めとなり、26日朝はパビリオンのタイプごとに分かれて説明会が行われました。

■協会が建設した施設の中にブース出展する「タイプC」

【博覧会協会の担当者】「タイプCに出展する国で、まだ展示の基本計画が完成していないところは、できるだけ早く完成させて、博覧会協会にもお知らせください」

「タイプC」とは、博覧会協会が建設した施設の中に複数の国がそれぞれのブースを出展するパビリオン。その中で各国が個性を表現するのは“展示”です。

東アフリカに位置する島国、モーリシャスも「タイプC」で出展します。モーリシャスは、世界中のセレブが訪れるビーチリゾートで知られ、その自慢の絶景をVR(仮想現実)を使って来場者に見てもらうということです。

会議を終えて…
【タイプCパビリオンを出展 モーリシャスの担当者】「モーリシャスには懸念が多かった。国際会議のセッションは興味深くて私たちにとって重要だったよ。たくさんの日本人にパビリオンに来てもらって、モーリシャスを発見してほしいよ」

■協会が施設を建設し内装や外装を各国が自由に設計できる「タイプB」

「タイプC」の次に大きいのが、博覧会協会が建設した施設で、内装や外装を自由に設計できる「タイプB」。

【タイプBパビリオンを出展 チリの担当者】「日本人がパビリオンを訪れたら、チリに行きたくなるはずです」

南米のチリは、先住民族から伝わる伝統的な織物を展示するほか、ワインなど食文化を楽しめるエリアも計画しています。

今回設定された個別の相談会では、チリのテーマカラーの「赤」を押し出した外観と内装に仕上げたいと交渉。

【タイプBパビリオンを出展 チリの担当者】「外観にもう一つ大きな赤いスクリーンをつけたいんですが、できますか?」
【内装業者】「安全性に問題がなければいいと思います」

博覧会協会は、「タイプB」と「タイプC」のパビリオンを7月にも参加国に引き渡す予定で、今後内装工事などが本格化していく見通しです。

■そして万博の華 各国の独自パビリオン「タイプA」

そして、万博の華は何といっても各国が独自で建設する「タイプA」のパビリオン。

インドネシアのパビリオン。木造の装飾が特徴的なパビリオンの外観は、インドネシアの歴史と伝統の象徴である「船」をモチーフにしています。熱帯林や海などの”自然”の重要性をミニチュアや映像を使って表現するということです。今のところ工事は順調に進んでいますが、新たな心配があるようで…

【インドネシアの担当者】「内装や展示デザインを提出する締め切りがあるんです。すごくたくさんの締め切りがあります」

すでに提出済みの、展示物の内容などについて26日、より詳しくなった資料の再提出が必要だと分かり、間に合うかどうか不安だということです。

一方、一部のパビリオンは建設の遅れが懸念されていましたが、最近になってようやく建設会社を見つけた国も増えてきました。

その一つが、地中海に面した小さな都市国家・モナコ。

【モナコの担当者】「工事はフルスピードで始めているので、並行して、運営面やプログラムについて聞きたいです」

地中海の草花を活かしたパビリオンには、環境保全への取り組みなどを紹介する筒型の建物が並ぶ予定です。

今回の会議では、運営に欠かせない「物流や通信設備などの情報を集めたい」と話していましたが…

【モナコの担当者】「通信面や物流、バンキングなどについて答えてもらえました。一部はまだあと数日、答えを待ちます。時間が私たちの最大の敵です」

木をふんだんに使ったらせん構造の、ポーランドパビリオン。コンサートホールでは、ポーランド出身の作曲家ショパンのピアノ曲が楽しめます。先週になってようやく建設業者と契約を結ぶことができ…

【ポーランドの担当者】「契約を結びましたので、一歩進み一安心しました」

しかし、会議前日に話していたのが…

【ポーランドの担当者】「人の命に関わることなので、できればもっと詳しく教えていただければと思います」

ことし3月、夢洲ではトイレの建設中にメタンガスの爆発事故が発生。その後、パビリオンが立ち並ぶエリアでもメタンガスが検出されました。博覧会協会は25日の会議で初めて、参加国に事故の詳細を説明しました。

【博覧会協会の説明 関係者提供】「エキスポアリーナ東のトイレの工事中に事故が起こりました」

火事や災害時のガイドラインを策定し、参加国に共有したということです。

【ポーランドの担当者】「(説明を受けて)とても安心しました。消防訓練受けないといけないのでやりたいと思います。(Q安心してパビリオン建設を進めていけそう?)そう信じています」

進捗に差はあるものの、少しずつ形が見えつつある海外パビリオン。博覧会協会は10月までに外観を完成するよう参加国に呼び掛けていますが、残された時間はあと約4カ月です。

【博覧会国際事務局 ケルケンツェス事務局長】「このIPMはとても重要です。開幕まで300日をきった中で、建設はいま、とても安全で開幕のために誰もが来やすくなるようにしている。各国をとにかく全力でサポートをしなければならない。各国と打ち合わせをしているが、来年4月までに間に合うと確信している」

■「今の時代ならではの万博ができるかどうか」がポイントだと安藤優子さん

各国のパビリオンの様子が見えてきました。

【ジャーナリスト 安藤優子さん】「それぞれ意匠を凝らしたタイプAパビリオンですが、それぞれの国が自分たちの個性を最大限発揮した建築物は本当に見るに値するものなんだろうと、この時点で本当に私は思いました。ただ、なんとなく空気感として、まだまだ盛り上がりに欠けているところもあるじゃないですか。工期の遅れも言われてきましたし、メタンガス問題もそうだと思います。それはやっぱり、かつて『万国博覧会を日本でやる。すごい。見に行かなくちゃ』という時代だった。今、たくさんの人たちが実際に海外に出かけたり、個人がVRでもって各国の状況を見ることができるような状況にもなっているわけですよ。そういう中で万国博覧会が持つ今までの歴史的な意味や盛り上がりと、今の時代はどう合っているのかというところが、私は疑問に思います。今の時代ならではの万博ができるかどうかということだと思います」

【関西テレビ 加藤報道デスク】「(国際会議の1日目を取材して)時間の捉え方が国によってさまざまです。お国柄がどうしてもあるんだなと感じざるを得なかったです。言われたのは『ちょっと日本はネガティブな取材しすぎじゃない?報道しすぎじゃない?』ということです。私たち報道機関としては、やはり安全に楽しめるようなものであってほしいと思うので、課題があればしっかり伝えないといけないと思っています」

万博は、各国の技術やメッセージが詰まった貴重な場所であることは間違いありません。あとは一つ一つ課題をクリアしていくことが求められます。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月26日放送)

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