上司に頼まれた仕事で残業、終電を逃し「タクシー」で帰宅しました。会社にタクシー代を申請したら「自分で払って」と言われましたが、会社に負担してもらうことはできないのでしょうか…?

終電後のタクシー代は請求できる?

残業が深夜に及び、終電を逃してタクシーで帰宅した場合、会社はタクシー代を負担してくれるのでしょうか。

会社はタクシー代を支払う義務はない

「仕事が原因で終電がなくなったのだから、当然会社がタクシー代を出してくれる」と考える人もいるでしょう。しかし、このような場合に会社がタクシー代を負担する法的義務はありません。従業員が自分の意思で深夜まで残業し、終電を逃した場合はなおさらです。

タクシー代を会社が負担することもある

ただし、深夜帰宅のためのタクシー代等を支給する会社もあります。納期が厳しい業務や深夜仕事が多い業務の場合、会社が任意でタクシーの使用や近隣のホテルへの宿泊を認めていることもあるのです。

そうした会社では、タクシー代やホテル代の取り扱いについて、就業規則等に規定されていることが多いので、あらかじめ就業規則等を確認しておくとよいでしょう。

また、就業規則に定めがない場合でも、例外的にタクシー使用が認められることがあります。突発的に急ぎの業務が発生し、深夜まで残業せざるを得なくなったときなどが該当するでしょう。

終電を逃がさないために

タクシーには深夜料金があり、真夜中は割高になります。残業手当や深夜手当よりタクシー代の方が高額になりかねないことからも、深夜のタクシー利用はできるだけ避けたいところでしょう。

そのためには、終電を逃さないための取り組みが必要です。

そもそも深夜まで残業しない

首都圏の話になりますが、例えば、「新宿駅」から「三鷹駅」に帰宅する場合、新宿駅発の終電は0時35分です。また「秋葉原駅」から「船橋駅」に帰るとしたら、秋葉原を0時28分に出発する電車に乗らなければなりません。

会社の場所にもよりますが、着替えなど帰宅の準備や駅までの移動時間などを考慮して終電時刻から逆算すると、23時30分過ぎ頃までに仕事を切り上げたほうがよいでしょう。仮に18時から残業を開始した場合、5時間半の時間外労働をすることになります。

たとえ急ぎの仕事があるとしても、終業後に5時間以上も余分に働けばさすがに疲弊し、翌日に疲れを持ち越しかねません。そうならないよう、よほどの繁忙期でない限り、深夜までの残業は控えたほうがよいと思われます。

リミットの時刻を決める

早く帰路に就くためには「今日は何時まで」と、リミットの時間を決めて作業するのもよいでしょう。仕事に集中していると、つい時間を忘れることもありますから、没頭しやすい人はタイマーやアラームを利用してはどうでしょう。

長時間働くことが美徳とされたひと昔前と違い、現代では効率が重視されます。長時間労働をすれば、逆に「自己管理ができない」「能率が悪い」等とされ、賞与の査定や能力評価に悪影響が出る懸念すらあるのです。

翌日も集中して働くためにも、残業は早めに切り上げ、しっかりと休養を取る必要があります。

「納期が明日!」のときは

とはいえ納期がひっ迫し、どうしても翌日までに仕事を仕上げなければならないこともあるでしょう。そうした場合は、終電を逃した場合のタクシー代や宿泊代について、事前に上司に掛け合っておきましょう。上司の了承が取れていれば、終電を気にして焦ることなく、落ち着いて仕事ができそうです。

まとめ

残業が長引いた結果、終電を逃した場合でも、会社がタクシー代を出してくれるとは限りません。会社がタクシー代を負担する義務はなく、タクシー代を認めるかどうかは会社の裁量に任されています。

業務の都合でどうしても深夜残業をしなければならない場合は、事前にタクシー代について会社のルールを確認するか、上司に掛け合っておきましょう。

執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

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