知的障害のある息子を預ける両親の「不信感」 グループホーム運営「恵」の不正問題はなぜ起きたのか?

メ~テレ(名古屋テレビ)

利用者の食材費を水増しするなどの問題が発覚し、事業所が指定取り消しの処分を受けた障害者向けグループホーム運営会社「恵」について、利用者の家族が複雑な心境を語りました。

「体重が入所したときは70kgちょっと。今は63~64kgくらい。7~8kgは痩せてしまった」(息子が「恵」の施設に入所する60代の父親) 「本人はずっと『食事が少ない』と言っていました。だけど不満を言ってしまうと、行き場がなくなると思って『我慢しなさい』と…」(息子が「恵」の施設に入所する50代の母親) こちらの夫婦の息子には知的障害などがあり「恵」が運営する愛知県内のグループホームで3年前から生活しています。 恵は利用者から食材費を不正に多く徴収し、差額を収益にしていたとして去年、国から改善勧告が出されました。 総額は県内26の施設だけでも、約2億1800万円に上ります。 Q.返金はあったか 「返金は去年末に振り込まれていた」(父親) Q.それについて説明は 「何もないです。少ない食費で何を食べさせていたのか、教えてほしいです」(父親)

「障害者福祉を真剣に考えている会社には全く思えない」

またグループホームに入る際、「恵」から「公費が出るため、料金がかからない」と説明されたことから訪問看護も契約し、緊急時の対応を任せていたといいますが―― 「グループホームの中で体調が悪くなっても診てもらえるから、夜間手当もつけているので『夜間でも大丈夫です』という感じだったが、結果的には診てくれなかった。夜8時に熱が出ても全然対応されなかった」(母親) 恵は勤務実態のない職員が働いているよう装って、障害福祉サービスの報酬を不正に請求していたことも分かっています。 「障害者福祉を真剣に考えている会社には全く思えない」(父親) 「もうお金のことしか考えていないのかなって」(母親)

専門家「すごく悪質性が高い」

恵の不正行為について、福祉問題の専門家は「極めて悪質」だと指摘します。 「例えば1000円の食材料費を徴収して、実際にかかった金額は300円の食材料費。それを食べる方々は食事に対する評価がなかなかできない方々なので、その人たちをだます意思があれば、いくらでもだませてしまう。そういうところがすごく悪質性が高い」(グループホームを運営 日本福祉大学 福祉経営学部 綿祐二 教授) グループホームなど、41の事業所を運営する社会福祉法人で理事長を務める綿教授。 小規模の施設は外部からのチェック機能が働きにくいことや、障害者のグループホームが全国的に不足し、利用者側が「弱い立場」に置かれていることが不正の背景にあると分析します。 「家族も含めて入所者も不正があっても、なかなか言えないということが根底にはあるのかなと。いわゆる重度化、高齢化や医療的ケアなどに対応できるグループホームが少ない。圧倒的に少ないことが今回の背景にあると思っています」(綿教授)

経営陣は信用できないが、施設は残してほしい複雑な思い

息子が「恵」のグループホームで生活している夫婦。 Q.他のグループホームへの移動は 父親:「考えたが探しても、空きがないんですよ」 母親:「うちの子はどっちかというと、個室を好んでいるので、みんなでワイワイやるのは苦手で」 今の経営陣は信用できないと交代を求めていますが、施設自体は残してほしいと、複雑な思いをのぞかせます。 「親の方が先に死んでしまうじゃないですか。そうしたときに、暮らせる場所はグループホームしかない。本当に障害者のためを思う経営者を探してほしいです。施設はそのまま残って行き場を失うのは困るので、そこだけですね」(父親)

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