伊吹文明氏と輿石東氏が直言!政治とカネ、揺らぐ岸田総理の政権運営、そして今後の政局

6月23日に閉会した国会では、政治とカネの問題が事実上唯一最大のテーマとなった。「BSフジLIVEプライムニュース」では伊吹文明元衆院議長と輿石東元参院副議長を迎え、国会の議論、内閣・自民党の実情、そして今後の見通しについて考えた。

政党間協議のためには人間関係の熟成を

竹俣紅キャスター:
通常国会後半の争点は政治資金規正法の改正だった。パーティー券購入者の記載は公開基準を「5万円超」に引き下げ、いわゆる連座制の導入に関しては収支報告書の確認書作成を議員に義務づけ、不記載や虚偽記載の場合は罰則として公民権停止に。政策活動費は項目ごとに使途・金額・年月を公開すること、10年後に領収書などを公開すること、使途を監査する第三者機関の設置などが決まった。透明性を高める議論と禁止を求める議論のバランスはどうだったか。

伊吹文明 元衆院議長:
政治に一番大切な政策の実現には権力が必要。個人としては国会議員の立場、政党としては過半数を取ること。だから結局は選挙。非常に強力な支持団体を持っている政党、専従の労組に推薦してもらっている政党、極めて強権的・統制的な党組織で選挙ができる政党などの場合以外は日常活動を積み重ねていくことが必要で、それなりのお金が要る。だから「入り」のお金の基準は少し厳しくなりすぎたと思う。しかし集めたお金が裏金になることは許してはいけない。透明性をもっと高める努力をすべきだった。

輿石東 元参院副議長:
その通りだと思う。民主主義には時間とお金がかかるのが前提。今回は出口の透明性がはっきりしない点に問題がある。

反町理キャスター:
野党側からの指摘はパーティー禁止、企業・団体献金禁止など。高いハードルを求めすぎて議論が止まり、透明性を高める議論にならなかったのでは。

伊吹文明 元衆院議長:
政治資金の話をしているようで、結局は各党間の権力闘争。支持母体がついている、あるいは新聞の販売収入などで政治活動を賄える党は、寄付などの「入り」を押さえればそこに頼る政党は苦しくなり、自分たちが相対的に有利になる。野党がそういう攻め方をするのは権力のやり取りから言えば当然。今回自民党には弱みがあり世論の反発があるから、こういう解決になった。

輿石東 元参院副議長:
権力闘争で野党がそこを攻めるのは当然。しかしこれが国権の最高機関、国の唯一の立法機関である国会で議論する問題か。早く終止符を打って、明日の日本をどうするという発想で議論してほしい。

竹俣紅キャスター:
6月6日に衆議院で政治資金規正法の改正案が自民・公明・維新などの賛成多数で可決されたが、その後自民党が今国会における旧文通費改革の法改正を見送ったとして、18日に維新は一転し岸田総理に対する問責決議案を参議院に提出。翌19日、参議院で改正政治資金規正法にも反対したが、自公などの賛成多数で可決・成立した。自民・維新両党の関係をどう見るか。

伊吹文明 元衆院議長:
旧文通費についての約束を明文化していないと岸田さんは言っており、約束があったと維新は言っている。自民も維新も立憲も含め、各党で党内の連絡、ガバナンスが十分とれていない印象がある。私と輿石先生との間にも色々あったが、この人なら信用できるという長い時間をかけた人間関係の熟成がなければ、政党間協議の当事者にはなれない。

輿石東 元参院副議長:
教育基本法改正のとき、伊吹先生から「教育は党派を超えて考えなければ」とのことで協力した。私は日教組出身だから批判されたが、公党間の約束はそのぐらい覚悟を決めて守っていくべきもの。政治はある意味妥協の産物。そうしてより良いものを作るところへ進んでいく。

自民党内から総裁批判噴出。岸田・麻生・茂木各氏の関係は

竹俣紅キャスター:
岸田総理は1月18日に自民党の派閥とカネを巡る問題を受けて自身の派閥・岸田派の解散を表明。2月29日に衆議院の政治倫理審査会の初日に出席。5月31日、政治資金規正法の改正をめぐり公明党の山口代表・維新の馬場代表と会談し、両党は自民党の再修正案に合意。6月21日には会見で電気・ガス料金補助再開を表明。岸田総理はこれらを独断専行的に行っていると言われるが。

伊吹文明 元衆院議長:
党としてのガバナンスがしっかりしていれば、総裁の指示・依頼を受けて執行部が動き、派閥があれば派閥を通じて各議員に伝達されるのが従来の自民党。独断専行なのか、独断専行をせざるを得ない状況なのか。岸田さんには、防衛費の増額や賃上げなど政策的にはしっかりやっているが清和会の問題(安倍派の政治資金問題)に足を引っ張られ非常に不本意だという気持ちがあるのでは。また、側近の中に意思疎通における潤滑油のような人がいないこともある。だが、常に世論に対してその場をどう切り抜けるかという決断で、これには感心しない。

輿石東 元参院副議長:
ご指摘のように、独断専行せざるを得ない状況に逆に追い込まれ、ガバナンスも効いていなかった結果では。むしろ岸田さんは気の毒だと感じる。

竹俣紅キャスター:
伊吹さんと輿石さんは過去に党の幹事長職を経験された。2024年上半期における自民党の幹事長の動きをどう見たか。

輿石東 元参院副議長:
スムーズに連絡・調整できていないのでは。そして麻生派・茂木派から若い人が声をあげている。

反町理キャスター:
麻生さんが自身の派閥所属の斎藤洋明衆院議員のパーティーで「将来に禍根を残すような改革だけはやってはいけない」と発言、斎藤議員は「リーダーの責任も大いに議論されるべき」。茂木派の津島淳衆院議員は自民党の代議士会で「本来岸田総裁がこの場に来て挨拶すべき」と総裁批判。茂木派の東国幹衆院議員は「岸田さんは総裁選への出馬を思いとどまって、自民党の新しい扉を開く橋渡し役を」。

輿石東 元参院副議長:
3議員は派閥のトップの気持ちを忖度して発言したと見える。本当にいいことか。その前に、総理、麻生さん、茂木さんの3人で「心合わせ」ができなかったことにかなりの原因がある。

伊吹文明 元衆院議長:
私がご指導いただいた渡辺美智雄先生は「政策は政治の命。その実現には人間関係と、何よりも相互の信頼が必要。これを作るのは報告・連絡・相談。相談すれば反対される場合は少なくとも相談するふりだけはしておけ」と言われた。

反町理キャスター:
さすがミッチーですね。

伊吹文明 元衆院議長:
今回も予め相談し、相手が「相談を受けてたからしょうがない、一生懸命やってみるか」とならないとダメだった。また、岸田さんは派閥を解消するときに自分の責任について述べるべきだった。党総裁として責任を取ることになると、今度は与党第一党の総裁が総理大臣になるという議院内閣制の趣旨に反するから身動きがとれない、しかし自分が一番責任を取るべき立場だという口上だけは述べた方がよかった。

輿石東 元参院副議長:
行政府のトップで最高権力者の総理が簡単に政倫審に出たり派閥解消と言うのはあまり適切ではない。まとめ役の幹事長にそういうメッセージを出してくれと言うことができなかったのか。

なぜ「次の総理にふさわしい人」に野党議員が目立たないのか

竹俣紅キャスター:
2024年9月末には、自民党総裁と立憲民主党代表の任期が満了を迎える。まず自民党の総裁選はどのように行われるべきか。

伊吹文明 元衆院議長:
粛々と行われるべき。少なくとも国会開会中は、与党は総理大臣を指名して行政権を与えたのだから、問題があっても内閣を支えるのは当然の義務。国会が終わった途端にいろいろな発言が出てきている。だが、やはり自分の後援会や選挙地盤を固めることに注力した方がいい。岸田さんが適当じゃないと思うなら、総裁選で別の人をリーダーにすればいい。「岸田対反岸田」で総裁選を論じていると、もっと自民党はガバナンスのない政党だと思われて自分の足元が崩れていくのでは。

反町理キャスター:
世論調査をやると「次の総理にふさわしい人」の名前が出てくる。

伊吹文明 元衆院議長:
それはひとつの民意だが、こういうのは知名度調査みたいな色彩が強い。非常に残念なのは、泉さんが1.3%、馬場さんは0.0%、その他に野党の人の名前が出ていない。自民党中心の政権が続いた方がいいか、野党中心がいいかという質問には?

反町理キャスター:
FNN世論調査ではそれぞれ43.7%と43.9%、同じぐらいです。

伊吹文明 元衆院議長:
野党中心の政権というイメージがわいてこない。

竹俣紅キャスター:
9月末には立憲民主党でも任期満了に伴う代表選が行われる。泉代表の続投については。

輿石東 元参院副議長:
私から交代や続投した方がいいと言うべきではない。党で協議し決めること。ただ、党首の顔を変えれば中身が変わるのかという点はもう少し謙虚に考えなければ。自民党には相当不満があるが野党に切り替えることには不安があり、国民はイライラしている。私たちが政権を担当したときに掲げたことは間違っていなかったと思うが、財源の裏づけもないのにあまりに大風呂敷を広げ、国民に一時的に夢を見させた。悪夢とまではいかないと思うが、その経験をどう生かすか。

反町理キャスター:
番組に野田佳彦さんをお迎えすると、もう一回総理を目指せ、党代表になれというメールがたくさん来る。幹事長として支えた輿石さんから見て、野田さんの魅力とは。

輿石東 元参院副議長:
自分の考え、信念を貫くところ。当時の民主党は政権を失ったが、明日の日本をどうするかというものは持っていた。

反町理キャスター:
野田さん待望論は立憲の人材不足か、野田さん自身の人材としての評価が高いためか。

輿石東 元参院副議長:
両方でしょう。

「BSフジLIVEプライムニュース」6月25日放送

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